死後半年後に見つかった、父の「知らない口座」。デジタル化に潜む相続の落とし穴

今回のお悩み:IDもパスワードも分からない!死後に出てきたネット証券口座

 64歳で急に亡くなった父親の、葬儀と役所の手続きを一通り終えました。預金通帳が4冊ほど出てきたのみで、「うちはシンプルな財産しかなかったのだろう」と考えていたのですが、死後半年後、遺品のスマホに一通の通知が届き、事態は一変。

 インターネット証券からの通知で、過去のメールなどをさかのぼると、けっこう頻繁に取引を行っていたらしい状況が分かりました。母も「ネット証券を使っていたなんて知らなかった」と驚くばかり。

 IDはもちろん、パスワードも分かりません。もしかしたら、他にもインターネット系の銀行や証券会社の口座があるかもしれません。こういう場合、どうすればいいのでしょうか?

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スマホはプライバシーと個人情報の塊!遺族も確認をためらいがち

 パソコンやスマートフォンに保存されたデータ、そしてインターネットサービスのアカウントなど、亡くなった人がデジタル形式で保管していた財産をまとめて「デジタル遺産」といいます。

 大きく分けると、写真や文書データなど機器の中に保存された、手元で見られるデジタル遺産と、ネット証券やネット銀行の口座、SNSアカウントなど、デジタル壁を突破しなければ見ることができないオンライン上の遺産の2種類があります。

 前者は機器そのものを開けば見つかりますが、確認するのがためらわれる…という心理も働きます。生前は誰しも、スマートフォンの中身を全て家族に見られたいとは思わないからです。

 しかし、いざ葬儀となると、遺影に使える一枚をご家族が探すことになります。「遺影にできるような、良い写真データが見つからない」というのは、デジタル遺品を巡る相談の中でも特によく聞かれる悩みの一つです。

 プライバシーを守りたい気持ちと、いざというときには家族に見つけてほしいという気持ち…この二つは、実は親にとっても子にとっても共通するジレンマなのです。

 さらに厄介なのは後者のオンライン上にある遺産です。かつて証券取引といえば紙の取引報告書や通帳が発行され、引き出しの中を見れば資産の存在に気付くことができました。

 しかし今はネット証券・ネット銀行が広く普及し、取引報告書もメールやウェブ上のマイページで完結する「電子交付」が主流になっています。資産の存在を示す「紙の痕跡」は、年々少なくなっているのです。

 ちなみに、金融庁によると、10年以上取引のない「休眠預金」は年々増加しており、2025年度は1,871億円にのぼります。これは銀行預金だけの数字で、他の金融口座を含めるともっと多くの「気付かれないお金」が眠っていると思われます。

 デジタル遺産に気付かないまま時間がたつと、主に次の三つの問題が生じます。

[1]相続税の申告漏れ

 相続税の申告・納付には、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月という期限があります。口座の存在に気付くのが遅れれば、この期限に間に合わなくなるおそれがあります。

[2]手続きの遅れ

 口座に気付いた後も、戸籍謄本や印鑑登録証明書(多くの金融機関は発行後6カ月以内)、法定相続情報一覧図の写しなど、複数の書類をそろえて申請する必要があります。不備がなければ1カ月もかからずに完了しますが、書類の準備そのものに時間がかかることも珍しくありません。

[3]サブスクリプションの解約漏れ

 ネット証券に限らず、有料サービスの自動引き落としが本人の死後も続き、家族が気付かないまま請求され続けるケースもあります。

 つまり、ネット証券の相続で本当に難しいのは「手続き」そのものより、「気付くまで」の時間なのです。

 今回はこの「オンライン上にある遺産」について、故人と遺族がどう対処しておけばよいのかを解説していきます。