2026年は東京海上HDや花王などが新設、2024年以降に新設企業の増加鮮明

 東京海上ホールディングス(8766)、豊田合成(7282)、花王(4452)――知名度の高い企業が2026年に株主優待を導入・新設した。各社の適時開示資料から株主優待と「導入」または「新設」というキーワードを条件に集計(※再導入も含む)すると、2026年は9月8日までに約110社にのぼる。廃止を決めた企業は40社程度、差し引き約70社増えた計算だ。

 同様の条件で集計すると2024年以降の株主優待の増加が鮮明だ。2024年は新設・導入が120社弱、廃止はおよそ70社、2025年は約180社が新たに導入し、廃止は60社強と110社超、差し引きで実施企業が増えた。2026年も9月8日時点で新設・導入が廃止を上回っている。

※株主優待の新設・廃止は適時開示資料から独自集計のため各種情報と相違する場合がある。

優待・新設・廃止の数
※適時開示資料から発表日ベース、再導入も「新設・導入」に換算して集計

 最近のトレンドとして、電子マネーのチャージなどが可能なデジタルギフトやQUOカードなど、現金などの代わりに決済で使用できる商品券類を優待にする企業が多い。他の優待に比べてコストを抑制しやすいためだ。自社商品やサービスの提供など企業の知名度向上につなげる例もある。

 一方、廃止は株式公開買い付け(TOB)や経営陣による買収(MBO)などによる上場廃止に伴い、優待を取りやめるケースが多い。

廃止増加の流れが一転、NISAによる投資家増と評価見直す海外勢

 時計の針を巻き戻してみると、2020年以前には株主優待の廃止を選択する企業が増えていた。背景の一つは「株主の公平性を重視する風潮」だ。個人投資家にとっては日常生活で利用できるメリットがあるものの、機関投資家や海外投資家は恩恵を享受しにくい。公平な利益還元を念頭に優待を廃止する一方、配当を引き上げる企業が多くなっていた。

 一方、近年は環境変化が企業側の変化を促した可能性がある。一つの要因は2024年から始まった新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)による個人投資家の継続的な増加だ。

 個人投資家でSNSなどでも精力的に情報発信する「たけぞう」こと上利武嗣氏は「個人投資家のニーズの高さを企業がくみ取り、企業も株主構成で個人投資家層を拡大したいという思いから変化した」と指摘する。

 上利氏が全国で講演する際、上場企業のIR担当者による事業紹介が設けられる機会が多いという。その中で「株主優待を導入していない企業に対して『なぜ導入しないのか』という質問がほぼ必ず出る」と話す。株主優待を切り口に株式投資を始めている個人投資家が増え、株主優待がない場合は特に新規参入した個人投資家の投資対象にならないケースもあるとみる。

 海外投資家の間で株主優待に対する見方の変化を指摘する声もある。ある市場関係者は「5年ほど前から株主優待の導入による需給効果や値持ちの良さ、流動性の向上など海外投資家の中でも株主優待のメリットの指摘が出始めた」と話す。海外投資家との対話を重ねる中で、じわりと株主優待を前向きに捉える見方が増えてきたという。

 上場企業にとっては個人投資家が新たな「安定株主」になるとの期待も強まっている。資本効率の向上のために政策保有株の縮減を進める企業が多く、持ち合い先に代わる受け皿になる可能性があるためだ。ファン株主の増加や長期保有を狙い、株主優待に長期保有の優遇措置を導入する企業も増えている。

2025年に株主優待を新設・導入した企業では個人株主が増加傾向

 実際に株主優待の新設で個人株主は増えるのだろうか。2025年に株主優待の新設・導入を発表した企業のうち2026年に決算期末を迎えて個人株主数が確認できる103社の個人投資家比率の平均を比較した。

 2024年期末時点で個人投資家の比率は平均47.45%であったのに対し、2026年の期末は51.12%となった。集計対象の73%にあたる75社で個人株主数が増加しており、一定の効果が示された。

優待、個人株主比較
※QUICKデータより集計、2025年に株主優待を新設・導入した企業のうち2026年期末時点の個人株主数や比率を取得可能な103社を平均

 市場では、株主優待としてQUOカードや、現金などの代わりに決済で使用できる商品券類の導入を進める企業に対して警戒感もある。ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチの小林大純アナリストはこうした優待について「長期で継続するかは未知数」とみる。自社が手掛ける商品ではなく導入が手軽である半面、「取りやめ」もしやすいからだ。

 小林氏は「個人投資家が企業やその会社の経営への理解を深めつつ、企業と投資家の双方にWin-Winの優待が広がるべきではないか」と語る。個人投資家の関心を集めつつ企業と個人投資家がともに歩む優待の増加を期待していきたい。