某哲也(ぼう・てつや)さんプロフィール

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バリュー投資家、著者。2011年の東日本大震災をきっかけに株式投資と出会い、約1年半の勉強期間を経て2012年秋頃から本格的に投資を開始。29歳で会社を退職し、専業主夫として育児を担いながら資産形成を続ける。ブログでは毎日1銘柄を取り上げ、バリュー株を分析。2023年初めに資産1億円へ到達し、その後もバリュー株への分散投資で資産を増やし、現在は約5億円の資産を築いている。
X:某哲也
ブログ:某哲也の高配当レバリュー投資日誌
書籍:『学校では教えてくれない、人生の「期待値」の考え方 「5歳」から始める金融・投資の勉強法 ──パパ証券で学ぶ、中長期目線の高配当収益バリュー投資』

マージャン好きの少年が知った、数字で勝つ面白さ

トウシル:突然ですが「某哲也」というお名前にはインパクトがあります。何か元ネタはあるんですか?

某さん:ジャン士の阿佐田哲也さんから取ったんです。中学生の頃に阿佐田さんを題材にした『哲也』というマンガの連載が始まり、その中で阿佐田さんの異名が「坊や哲」。僕は小学生の頃からマージャンが好きだったので、友達から「坊や哲」と呼ばれるようになったんです。

 ただ、僕は本物の「坊や哲」ほどすごくないので、「そのへんにいる哲也」という意味で「某哲也」というハンドルネームにしました(笑)。

トウシル:小学生からマージャンという時点で、かなり濃い少年時代ですね(笑)。勝負事は好きだったんですか?

某さん:好きでしたね。マージャンだけじゃなくて、将棋やトランプ、ボードゲームとか、とにかく頭を使う勝負事が好きでした。

 小さな頃から、真剣勝負をする上で絶対に負けたくなかったんです。勝負をしている間は、ずっと「どうしたら勝てるか」を考え続ける子どもでした。

トウシル:勝ちにこだわる性格は、大人になっても変わらなかったんでしょうか?

某さん:そうですね。もともと確率や「期待値」から勝ち負けを考えるのが好きだったんだと思います。

トウシル:「期待値」とはなんですか?

某さん:分かりやすく言うと、「その試行を何度も繰り返したときに、平均してどのくらいの数値が得られるか」という予測値のことです。

トウシル:平均値とは違うのですね?

某さん:はい。例えばサイコロを何千回も振った場合、出た目の合計を振った回数で割ると、どんどん「3.5」に近づいていきます。これが「期待値」です。ただ、サイコロの目には「3.5」はありませんよね?

 つまりは、期待値を算出することで、「ギャンブルで勝てるか?」「この投資は割に合うか?」といった、結果が不確実なことの「損得の目安」を客観的に判断することができるようになるんです。

  平均値 期待値
対象 実際に起きたデータ 未来の試行
概要 事実の要約 確率に基づく予測
値の変化 試行ごとにバラつく 理論上の値のため変わらない
視点 過去を振り返る 未来を予測する

トウシル:平均値だとそれに「楽観的な期待」というバイアスがかかってしまいがちですが、期待値だと「採算が合うか」という理論的な数字で判断できるんですね。

某さん:はい。社会人になって24、25歳ぐらいの時に、マージャン仲間の中にパチプロがいたんですよ。その人からパチンコの仕組みを教えてもらったら、パチンコとは「完全に期待値で動いている世界だ」と分かりました。

「こういう仕組みだったのか」と納得して、そこからパチンコで稼ぐようになったんです。

トウシル:マージャン仲間との出会いから、まさかのパチンコで収入アップ! ちなみに、どのくらい稼いでいたんですか?

某さん:会社員をしながら、年間300万円ぐらい稼いでいました。3年ちょっとで1,000万円ぐらいたまりましたよ。

 ただ、普通にパチンコ屋へ行って打って勝てたわけではありません。勝てる台を探すために下見の日を設けて、半径10キロぐらいの店を半日かけて回ることもありました。1店舗10分ぐらいずつ見て回り、その日は下見だけで帰るんです。

 実際に打つ時は、期待値がある台を長時間打ち続けます。期待値がプラスだと分かっていれば、その日に10万円負けても僕は気にしません。長く続ければ収束していくと考えていたからです。

トウシル:いや、そんな風に考えられる人は少ないですよ! 10万円負けたら、普通は心が折れます。

某さん:そうなんですよ。会社の先輩や同僚に「長い目で見ればプラスになる」と話しても、「そんなわけない」と全然理解してもらえませんでした。信じて一緒にパチンコを打っていた人も、たまたま大負けすると「お前の言っていることは違う」と怒られたこともあります。

 そこで初めて「期待値をちゃんと理解して行動できることが、自分の長所なんだ」と気付きました。この時の自信は、今の投資にもつながっています。

東電株で知った「期待感」と「期待値」の違い

トウシル:株式投資との最初の出会いはいつ頃でしょうか。

某さん:2011年の東日本大震災後です。東京電力(現・東京電力ホールディングス:9501)の株価がものすごく下がったことがニュースになっていて、そこで株に興味を持ちました。

 東京電力は産業にも生活にも絶対に必要な会社だから、このままつぶれるはずはないと思いました。そんな会社の株価が10分の1になっているなら、いつか10倍に戻るんじゃないかと考えたんです。

 軍資金は、パチンコで稼いだ1,000万円が手元に残っていたので、それを全額入れました。1,000万円が10倍になれば1億円ですから「それなら会社を辞められる」ぐらいの簡単な気持ちでしたね。

トウシル:1,000万円をいきなり全額ですか! かなり大胆なスタートですね。

某さん:しかし、実際に買ってみると想定外のことがありました。株価が1日に数%も動くんですよ。1,000万円なら1%で10万円ですし、3~4%動けば、当時の自分の月給より大きな金額が1日で上下してしまうんです。しかも電力系銘柄は、最悪、国有化される可能性もあると知り、「会社がなくならない=株主も安全」ではないと気付いたんです。

 自分が思い描いていたストーリーと違うまま勝負を続けるべきではないと思ったので、2週間ぐらいで全部引き上げました。プラスかマイナスかは明確には覚えていませんが、ほぼトントンだった記憶があります。

トウシル:パチンコでは期待値があると判断したら10万円負けても続けるのに、東電株は2週間であっさり引きあげています。ここは判断基準が違ったんでしょうか。

某さん:全然違いました。パチンコだったら「期待値」を計算できるので、負けても気にしません。しかし、株は始めたばかりで、自分の「期待」そのものが正しいかどうか分からなかったんです。実際、国有化のリスクも知らなかったわけですから。

 期待値を判断できないのに勝負を続ける理由はないので、一回ちゃんと勉強してから再挑戦しようと考えました。

トウシル:そこからすぐ別の銘柄へ行くのではなく、一度止まったんですね。

某さん:そうですね。一度投資から離れ、2012年の秋まで1年半ぐらい勉強していました。

 当時は投資家ブログが盛んだったので、かぶ1000さんやみきまるさんをはじめ、「勝っている投資家」のブログを毎日読んでいたんです。その中で一番納得できたのが、バリュー投資という考え方でした。

トウシル:いろいろな投資法がある中で、なぜバリュー投資だったんでしょう?

某さん:僕はいちかばちかのギャンブルって好きじゃないんですよ。勝てる勝負が好きなだけなんです。バリュー株なら、配当利回りが株価の下支えになりますし、業績や資産が積み上がれば下値も切り上がっていきます。

 株価が下がっても業績が悪くなっていなければ、買い増すことも考えられるんです。自分の中で「こうなれば勝てる」というパターンが一番見えやすかったのが、バリュー投資でした。