2025年以降のプラチナとゴールドはほぼ完全な相関関係にあるが、プラチナの短期的な投資の流れはファンダメンタルズではなく、このゴールドとの関係性に左右されることになるだろう。
2026年のプラチナ市場は年初来のETFの売却と取引所在庫の減少が併せて約23.3トンにも達し、供給過剰になる可能性もあるが、それでもゴールドとの同調傾向には変化がない。FRBが年内の利上げを見送った場合、価格はさらに上昇する可能性が高い。
プラチナとゴールドの相関係数は2025年初めから0.95となっている(図1)。2025年の時点ではプラチナは3年連続の供給不足予想で(図2)、この供給不足の継続と現物の逼迫が最初のきっかけとなって、2015年来破られることがなかった1,000ドル/オンス近辺の価格圏を突き抜けた(図4)。
しかし、プラチナとゴールドやその他のメタルとの相関関係が、2010年から2014年の間に比べて2025年以降に高くなった理由は、ファンダメンタルズだけでは説明がつかない(図1)。
広い範囲で多くのメタル価格の相関関係が高まった背景には世界が一元的なグローバル化を離れて多極化に向かったことが挙げられよう。貿易政策やテクノロジー、コモディティーなどは地域毎の主義主張を推進するためのツールになりつつあり、供給構造が偏っていて付加価値も高いPGMは多くの国々の重要鉱物に指定されている。
図1.プラチナと他の貴金属との相関関係は2025年以降強まっている
それと同時に、各国の債務と財政赤字の拡大を背景に、投資家はインフレと米ドル安のヘッジとなる現物資産へ向かう。ゴールドは間違いなくディベースメントトレードを牽引しているが、金銀比価とプラチナ・ゴールドディスカウントが過去最大になった2025年からは、シルバーとプラチナはベータ値の高い代替手段として機能している。
2025年以降のゴールド価格の変動に対するプラチナのベータ値は1.3倍、シルバーは1.8倍(図5)だ。プラチナの高いベータ値は近年の供給不足、2027年から2030年にかけて需要の4%に相当する10.5トンが不足するという見通しも反映していると考えられる。
年初からの投資資金の流出で(図3)、2026年のプラチナ市場は供給過剰になる可能性(図2)もあるが、大きく減った地上在庫を再構築するには足りない。
しかし、プラチナのファンダメンタルズは、FRBが利上げに消極的なため今年下半期の貴金属価格と投資需要を支えるマクロ経済の陰に隠れてしまっている。
米国の第2四半期のGDP成長率が1.5%に下がり、7月の雇用統計で雇用者数も2万3千人減少、7月のCPIが前月比で0.1%減って3.4%になったことを受けて、8月1日から8月19日にかけて、9月の利上げ予測は64%から32%に下がった。この変化で投資需要が回復すれば、今年通年のプラチナ市場が再び供給不足になる可能性は残っている。
投資資金の流出によってプラチナ市場は供給過剰に陥る可能性はあるものの、今年残りの期間に利上げする可能性に対する市場の予測は下がり、貴金属全般の価格と投資需要を支えるはず
投資資産としてのプラチナを支える背景:
-WPICのリサーチによるとプラチナ市場は2023年から供給不足が続き、地上在庫は大きく減っている。
-プラチナ価格の上昇でリサイクル供給は増えているが、供給全体は伸び悩んでいる。
-プラチナは世界のエネルギー転換に重要な水素経済だけでなく、半導体生産やAI関連のデータセンター建設などでも不可欠な資源。
-プラチナ価格は歴史的に見ても過小評価されており、ゴールドよりも大幅に低い。
図2:プラチナ市場は年初来のETFと取引所在庫の動きで供給過剰になる可能性もあるが、予測は供給不足
図3:プラチナETFの残高とNYMEXの在庫は年初来約23.3トン減少*
図4:プラチナ価格は2025年に10年来の上限だった1,000ドル/オンスのラインを突破
図5:プラチナとシルバーは、価格の揺れ幅と上昇率が大きく、ゴールドに対するベータ値が高い
図6:米インフレ率は夏の間ほぼ変わりなく、ゴールドの下げ基調は終わって回復へ。
図7:8月初めに高まったFRBの利上げ観測が今後和らげば、貴金属価格にはプラス
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