金利上昇で企業の「財務力」が問われる

 日本では長い間、企業がお金を借りるコストが極めて低い状態が続いてきました。低金利であれば、多少借入金が多くても利払い負担はそれほど大きな問題になりません。設備投資や、買収や合併(M&A)を借金で賄うことも、企業にとって合理的な選択肢でした。

 ところが、長期金利が上昇すると状況は変わります。日本で長期金利の代表的な指標とされている新発10年国債の利回りが、9月1日に一時3.0%に達し、1996年以来、約30年ぶりの高水準となりました。

 既存の借入金の金利が一斉に上がるわけではありませんが、新たな資金調達や借り換えでは、以前より高い金利を求められるケースが増えてきます。金利の高い状態が続けば、財務体質の違いが企業の利益や投資余力にも表れやすくなります。

 こうした局面では、自己資本が厚く、借入金に過度に頼らない企業が相対的に動きやすくなります。手元資金に余裕があれば、景気や金融市場が不安定になったときでも設備投資や研究開発を続けられます。競合企業が投資を抑える場面でも資金を投入できれば、それが数年後の競争力の差につながることもあります。

 もっとも、借金が少なければ、それだけで投資対象になるわけではありません。現金を多く持っていても、利益を伸ばせなかったり、資金を有効に使えなかったりすれば、株価の評価は高まりません。財務の安全性に加えて、本業の収益力や成長投資の中身も見る必要があります。

「株価プラス」だけではない「出遅れ株」に注目

 今回の銘柄選びでは、自己資本比率だけで機械的に線を引いてはいません。有利子負債の状況や株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)、自己資本利益率(ROE)などを確認し、今後の業績につながる事業材料があるかも見ています。

 もう一つの条件が「出遅れ」です。東証株価指数(TOPIX)は2025年末から2026年9月4日までに約20.4%上昇しました。日本株全体が大きく上昇しているだけに、株価がプラスになっているだけでは出遅れとは言えません。今回はTOPIXの上昇率を下回り、52週高値からもある程度調整している企業を中心に選びました。

 PERやPBRについても、成長期待をすでに大きく織り込んでいる銘柄は避けています。業績が良くても株価が先に大きく上昇していれば、今回狙う銘柄とは少し違います。業績や財務の内容に比べ、株価の評価がまだ追いついていない企業を探すのがポイントです。

データセンターを支える「インフラの裏方」

 今回選んだ5社(クラフティア(1959)、トクヤマ(4043)、大和工業(5444)、新晃工業(6458)、日東工業(6651))のうち、クラフティア、新晃工業、日東工業の3社は、意外にもデータセンター投資と接点があります。クラフティアは電気設備工事、新晃工業は空調、日東工業は配電設備と、表舞台には出にくい分野からデータセンターを支える企業です。

 もちろん、3社ともデータセンターだけで業績が決まる会社ではありません。既存事業で利益を上げながら、新たな設備投資需要も取り込めるところに注目しています。そこに半導体材料への投資を進めるトクヤマと、厚い自己資本を持つ大和工業を加えました。

 株価が出遅れている企業には、それぞれ理由があります。市況悪化への警戒や業績の先行き不安、期待先行で買われた反動など、単に投資家から見落とされているとは限りません。大切なのは、株価が調整している間にも、財務基盤や競争力が崩れていないかを確認することです。

 長期金利3%が意識される時代になると、企業を見る物差しも少し変わってきます。成長率や利益率だけでなく、貸借対照表の中身にも目を向けながら、株価が出遅れている企業を探してみましょう。