「配当貴族指数」とは…S&P500とパフォーマンスを比較

 イラン戦争と原油高、利上げ観測と長期金利の上昇、米中間選挙を巡る不透明感など、株式市場を覆う不確実性は一層強まっています。

 ビジネスや投資の世界で使われる「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字です。今後も、こうしたリスクが顕在化するたびに市場需給が悪化して、一時的にせよ株価が下落する局面が想定されます。

 図表1は、米国の「配当貴族指数」(S&P 500 Dividend Aristocrats Index=25年以上連続増配してきた企業群で構成される株価指数)とS&P500種指数について、年初来の総収益指数(Total Return Index)の推移を比較したものです。

図表1:米国市場で底堅さを見せる「配当貴族指数」の年初来リターン

図表1:米国市場で底堅さをみせる「配当貴族指数」の年初来リターン
出所:市場実績と各種情報に基づき作成(2026年8月31日時点)

 本データの注目点は、下記3点です。

  1. 両指数とも年初来で+12~13%と底堅い
  2. イラン紛争後は配当貴族指数の下値抵抗力が目立つ
  3. 両指数を組み合わせることで値動きの分散が期待できた

 株式市場は、エヌビディアが8月26日に発表した「市場予想を上回る好決算と強気なガイダンス(業績見通し)」と、ジャクソンホール会合(28日)での「ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長のややタカ派的な講演」を、ひとまず消化しました。

 ただ、9月は中間選挙(11月3日)に向けたトランプ政権の対イラン・対中強硬姿勢も警戒され、「中間選挙前の秋波乱(アノマリー)」が株価の上値を抑える可能性には留意が必要です。

長期総収益でS&P500を上回ってきた「配当貴族指数」

 配当貴族指数は、S&P500構成銘柄のうち「25年以上にわたり毎年増配を続けてきた企業群(69銘柄)」で構成される株価指数です。単に配当を支払い続けた企業の集まりではありません。景気後退や金融危機、金利上昇、コロナ危機などの逆風下でも株主還元を優先し、配当を増やし続けてきた経営陣の強いコミットメントを体現する企業群です。

 連続増配を維持するには、安定したキャッシュフロー、価格決定力、規律ある資本配分に加え、長期にわたり利益を生み出す経営力が欠かせません。そうした企業は投資家の信頼を積み重ね、相場が需給波乱に見舞われても「株価の耐久力と反発力(Resiliency)」を発揮してきました。

 実際、図表2が示すように、2000年初来の配当貴族指数のトータルリターン(配当込み総収益)は、S&P500(市場平均)のそれを大きく上回ってきました。相対的に強い株価の耐久力と、配当再投資による複利効果が長期トレンドを支えてきたといえるでしょう。

図表2:長期の総収益で「配当貴族指数」はS&P500を上回ってきた

図表2:長期の総収益で「配当貴族指数」はS&P500を上回ってきた
(出所)2000年初を100とする総収益指数(Total Return Index/週次)より作成(2026年8月28日時点)

 不確実性が高まる局面でも連続増配という「結果」を示し続けた企業群は、長期資産形成における「株主還元力の強さ」を雄弁に物語っています。

 配当貴族指数の主力銘柄には、プロクター・アンド・ギャンブル(PG:70年連続増配)、コカ・コーラ(KO:64年)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ:64年)、ペプシコ(PEP:54年)、ウォルマート(WMT:53年)、アッヴィ(ABBV:53年)など、「配当王」(Dividend Kings)と呼ばれる50年超の連続増配記録を持つ大型優良株が数多く含まれます。

 米国の配当貴族銘柄への分散投資には、引き続き注目です。

東証の上場銘柄でも「配当貴族株」が増えてきた

 米国市場の動きに呼応するように、東証でも25年以上の連続増配を記録する「日本版・配当貴族」と呼べる企業数が増えてきました。

 図表3では、今期(2027年3月期)の会社計画や市場予想を含めて25年以上の連続増配に到達している11銘柄について、事業概要、時価総額、年初来騰落率を一覧にしました。

図表3:銘柄数が増える日本版「配当貴族銘柄」に注目

図表3:銘柄数が増える日本版「配当貴族銘柄」に注目
出所:市場実績と各種情報より作成(2026年8月28日時点)

 過去、幾度もの厳しい経済・事業環境でも1株当たり配当金を毎年(毎期)増やしてきた実績には、安定収益を追求し、株主還元を重視してきた各社の経営努力が表れています。

 このうち、時価総額(株価×発行済み株式数)が1兆円を上回る大型配当貴族株をライトブルー(空色)で示しました。花王(4452:37年連続増配)、三菱HCキャピタル(8593:28年連続増配)、ユニ・チャーム(8113:25年連続増配)、KDDI(9433:25年連続増配)の4銘柄です。