90年前から徹底した企業調査に基づく長期・アクティブ運用を実行

 Tロウ・プライス・グループ(TROW NASDAQ)(株価111.24ドル、時価総額237億ドル:8月28日終値)(以降、Tロウ・プライス)は、ボトムアップの企業分析を核に、マクロ・業界構造・テーマ分析まで多層的に行う総合リサーチ型のアクティブ運用会社です。

 アクティブ運用とは、運用者が市場分析に基づき銘柄選択や売買タイミングを判断し、市場平均を上回るリターンを狙う能動的な運用手法を指します。

 同社は1937年、投資家トーマス・ロウ・プライス・ジュニアによって設立されました。彼は「長期投資」「成長企業への集中」「徹底した企業調査」という当時としては革新的な運用哲学を掲げ、これが現在まで続く同社の基盤となりました。

 1950〜60年代に成長株投資で高い評価を獲得し、米国オープンエンド型投資信託市場で存在感を拡大。1980年代以降は国際株式・債券へ領域を広げ、グローバル運用会社へと進化しました。

 2000年代には確定拠出年金向けターゲット・デート・ファンド(退職予定年に合わせて株式から債券へ自動で資産配分を調整し、長期運用を「ほぼ放置」で最適化する年金専用ファンド)の草分けとして市場をけん引し、アクティブ運用の名門としての地位を確立しています。

 Tロウ・プライスと同じ「独立系アクティブ運用」を行う上場企業には、フランクリン・テンプルトン(BEN NYSE)があります。どちらの会社も調査力を基盤としたアクティブ運用を展開し、株式、債券、オルタナティブを扱う総合運用会社として競合しています。

 ただし、Tロウ・プライスが長期投資・企業調査主導を徹底し、株式、債券、ターゲット・デート・ファンドで安定した成績を重視する戦略を取るのに対し、フランクリンはグローバル債券運用を中心に据えた上で、買収による事業拡大を積極的に進め、オルタナティブや上場投資信託(ETF)領域まで幅広いラインアップを構築しているという違いがあります。

 これらの2社と同様にアクティブ運用中心ながら、株式ではなく不動産、インフラ、再エネ、プライベートクレジットなどのオルタナティブ資産中心の運用を行っている企業として、ブルックフィールド・コーポレーション(BN NYSE)が挙げられます。

 他方、パッシブ運用(市場平均に連動する指数に合わせて投資し、低コストで安定したリターンを狙う運用手法)を行う大手上場企業としてブラックロック(BLK NYSE)が挙げられます。

 ブラックロックとTロウ・プライスは同じ「資産運用会社」でも、事業構造、運用哲学、収益モデルが根本的に異なります。ブラックロックは世界最大の運用会社で、市場平均を低コストで再現する商品を大量に提供しており、運用残高の巨大さが競争力となります。

 一方Tロウ・プライスは調査主導のアクティブ運用が核で、企業分析を基盤に長期で超過収益を狙います。ブラックロックは規模と低コスト、Tロウ・プライスは運用の質と長期志向というように、両者は同じ業界でも競争軸がまったく異なる存在です。

2023年以降利益増加トレンドも株価は横ばい

 Tロウ・プライスの当期純利益は、2016〜2020年は堅調に増加し、株式市場の追い風を受けて2021年には約30億ドルで過去最高を記録しました。

 しかし2022年は、世界的な株式市場の急落により運用残高(AUM)が大幅に縮小。アクティブ運用からの資金流出も重なって利益は約15億ドルへ半減しました。2023年以降は市場回復と資金流出の縮小により利益が改善し、2024〜2025年は約20億ドル前後の安定した水準を維持しています。

<Tロウ・プライス・グループの当期純利益推移(2015年12月期以降)>

<Tロウ・プライス・グループの当期純利益推移(2015年12月期以降)>
※2026年は予想値
出所:Tロウ・プライス・グループ資料などより作成

 同社の株価は当期純利益の変化に連動していましたが、2022年以降は当期純利益増加局面でも横ばいとなっています。これは、アクティブ運用からパッシブ運用への資金移動が続く構造的な逆風に影響されたものです。企業が情報開示を強化し、特定の運用者だけが深い情報を持つ状況が減り、アクティブ運用に伴う高いコストを正当化しにくくなったことが逆風となっています。

 こうした中でTロウ・プライスが利益拡大を実現できているのは、勝てる領域への集中と運用モデルの高度化を行っているためです。具体的には、米国成長株、小型株、新興国など情報非対称性が残る市場に経営資源を再配分。同時に、企業を10年以上追跡する深い調査とデータサイエンス・クオンツ技術を組み合わせることで分析力を向上させ、収益拡大を実現しています。

 また、前述の確定拠出年金向けターゲット・デート・ファンドなどソリューション型運用も行うことで安定フローの確保にもつなげています。

<Tロウ・プライス・グループの株価推移(2015年12月期以降)>

<Tロウ・プライス・グループの株価推移(2015年12月期以降)>
※2026年は直近値
出所:Tロウ・プライス・グループ資料などより作成