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金利上昇を止めたい米政府、度重なる市場介入も「効果薄」のワケ…長期金利の低下を妨げる「二つの根本原因」

2026/8/28 7:30

 ベッセント米財務長官の介入が招く市場の混迷と、レイ・ダリオ氏が警告する「死のスパイラル」。不安が渦巻く相場で、個人投資家はいかに資産を守るべきか? 直近の市場見通しと、今取るべき具体的な防衛策を解説します。

目次
  1. ベッセント米財務長官の「藪蛇」
  2. ベッセント氏のアクションと意図…その効果は?
  3. 不安に追い打ちをかけた人物
  4. 日本が「最大の失敗事例」とされる理由
  5. 「死のスパイラル」と個人投資家の防衛策
  6. 市場の見通しと対応

サマリー

●ベッセント米財務長官の長期金利抑制策は、かえって市場の警戒を呼び起こす「藪蛇(やぶへび)」か?
●市場の不安に追い打ちをかけるレイ・ダリオ氏の「死のスパイラル」とは?
●「死のスパイラル」に際しての投資家としての防衛策は?実際のリスクと相場対応は?

ベッセント米財務長官の「藪蛇」

 市場の不安は今、メモリー・半導体株の自律調整からAI株相場全般に、そして、債券、通貨へと広がっています。特に最近、ベッセント米財務長官が矢継ぎ早に行っている為替・債券市場への介入が、かえって「藪から蛇」の様相を呈している状況です。

 市場参加者たちは、ベッセント氏が取るアクション一つ一つの点を線へと連ねて、その意図、効果に疑念を抱くようになっています。そして、神経質な市場は、その疑念自体におののき、右往左往する場面が増えてきました。

 では、ベッセント氏が落とした点と点はどのようにして線となるのでしょうか。また、その不安を呼ぶリスクの実現度はどう評価すべきでしょうか。そして、そのリスクが当面の市場をどのように動かし、投資家はどう対処すべきでしょうか。一つずつ見ていきましょう。

ベッセント氏のアクションと意図…その効果は?

 まずは、彼の一連のアクションを順に追ってみましょう。

1. 日米協調の円買い介入

 160円台前半でドル高・円安を抑止しようとする日本当局の為替介入に対し、ベッセント氏は支援を表明し、協調介入に踏み切りました。その際、日本の介入資金として、スワップラインの利用を承諾しています。そして、米当局の実際の為替介入は、ユーロ売り円買いで実行されました。

 日本に対するスワップラインの提供は、日本側が介入用のドル確保のために保有する米国債を大量売却させないためと目されました。また、ドル円ではなく、ユーロ円で介入したのは、米国自身がドル安誘導しているとの心証を市場に与えないためと考えられます。

2. 長期国債バイバック(買い戻し)の増額

 続いて、ベッセント氏は流動性が枯渇しやすい10〜30年国債の買戻し規模を、最大20億ドルから40億ドルへ拡大すると表明しました。これは債券市場への直接介入です。

 ただし、政府による国債買い戻しは、中央銀行による国債購入とは意味合いが違います。中央銀行の国債購入は、新たな通貨を発行して購入代金として市中に供給すれば、量的金融緩和(QE)となります。これに対して、政府の場合、長期国債の購入資金を調達する必要があり、常道としては、短期国債で行うと考えられました。

 つまり、短期国債発行(売り)と長期国債購入のセットで行うため、市中の資金量には中立的、金利は長期ゾーンがいったん下がるにしても短期ゾーンが上がりやすくなるでしょう。

3. 財政健全化計画の発信

 それを見越した市場では、長期国債の金利がバイバック倍増の公表後に下げた分を次第に揺り返していきました。このため、ベッセント氏は、新たな財政健全化計画を策定すると表明し、市場の不安を和らげようと試みています。

4. 政府のFRB当座預金(TGA)の活用

 さらに、ベッセント氏は、長期国債の買い戻し原資として短期国債を追加発行(短期金利を上昇させる要因)するのではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)に置いた約9,500億ドルの政府預金を取り崩して充てる方針と、一部メディアで報じられています。この場合は、FRBに預金された資金が市中に供給されることになります。

 もっとも、これらの市場介入の効果は「一時的」と考えられます。なぜなら、債券金利を高める「巨額の財政赤字(国債発行)」と、「AI分野の巨額の資金需要(社債発行)とのバッティング」という根本問題に変わりはないからです。

 買い戻しの増額や、TGA預金の取り崩しは、短期金利の上昇を抑えつつ、市場に資金供給する即効性があることは認めます。しかし、預金にも限りがあり、最終的には国債の再発行によって補填(ほてん)しなければならないでしょう。

 根本問題に解決のメドが立たない限りは、投資家が求める上乗せ金利(タームプレミアム)は下がりません。このため、一連の市場介入はテクニカルなものであり、時間を稼ぐ応急処置に過ぎないと判断されます。

不安に追い打ちをかけた人物

 市場が、ベッセント氏の長期金利抑制措置の効果に疑念を抱き、財政赤字(政府債務)の先行きを不安視する中、追い打ちをかけたのはレイ・ダリオ氏です。

 彼は、世界トップ級のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であり、歴史的な債務危機の研究で知られます。

 そんな彼が、「債務危機に至る典型的な失敗事例」として挙げているのが日本です。そして、米国も、欧州も、適切な対応がとられなければ、今後3±2年のうちに、債務危機が起こり得ると警鐘を鳴らしています。

 また彼は、政府が債務不安に際して、「債務のマネタイズ」と、それに伴う「死のスパイラル」という流れにはまるリスクを挙げていました。

 それは、「返済のための新規国債の大量発行」→「国債の供給過剰による金利上昇」→「中央銀行による国債の買い支え(マネタイズ)」→「通貨価値下落とインフレ」→「さらなる国債売り(金利上昇)とインフレ」という順で進行します。

 債務問題への根本的な解決策としてダリオ氏が挙げるのは、増税、歳出削減、デフォルト(債務整理)など、国民にも政治家にも痛みを伴うものばかりです。当然、日本をはじめ各国の政治家はそれらを選択せず、マネタイズによるインフレを採用しがちと指摘します。

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