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IPO投資の落とし穴…上場直後に「後乗りしてはいけない銘柄」の共通点

2026/8/29 10:00

 前回に続き、IPO企業の株価騰落要因を探ります。今回の考察対象は、IPO数こそ減少傾向にあるものの、新規上場数の3分の2以上を占める「東証グロース市場」です。具体的には、2024~2026年(7/15まで)にグロース市場に上場した企業116社から、上場廃止となった3社を除外した113社を検討対象とします。

目次
  1. 株価騰落の現状と分析の視点
  2. 「売上高規模」によって株価の騰落率が異なる
  3. 機関投資家の動静と時価総額の分岐点
  4. 「グロース市場しか選べない」企業の苦悩
  5. IPO企業の「選別」が進んだ結果…投資家にもたらされるメリット

株価騰落の現状と分析の視点

 さて、今回も上場初値と現値(7月15日時点)の比較から見ていきましょう。

 まず、現値が初値を上回っている企業数は、113社中わずか22社(19.5%)でした。

 この「上昇22社」と、初値を下回った(または同じ)「下落91社」との違いについて考察します。

 なお、前回と同様、市場の全体的な傾向を探ることを目的としており、個々の企業の事業内容・ビジネスモデル・成長可能性などのファンダメンタルズは考慮していません。

公開価格と初値~初値が公開価格を大幅に上回った企業は厳しい~

 前回のレポートでも指摘しましたが、期待先行で人気化し、初値が公開価格を大幅に上回った企業の苦戦が目立ちます。上昇22社の初値平均上昇率は+22.1%であるのに対し、下落91社の平均は+42.2%と大きく上回っていました。

 なお、初値上昇率が100%超(2倍超)となった企業は15社ありましたが、その15社全てで現値が初値を下回っている状況です。

 現値が初値を上回っている22社の中で、初値上昇率が最も高かったのは、Synspective(290A)の53.3%でした。上昇率40%台が5社、30%台が5社、20%台が1社、10%台が2社、一桁%台が4社、マイナスが4社という分布でした。初値上昇率が低ければ良いということもありませんが、高過ぎるのは明らかに危険信号と言えそうです。

PERおよび業績見通しはあまり参考にならない

 113社の初値から現値の騰落率は、単純平均でマイナス10.0%の下落となっていました。その中で、初値の実績株価収益率(PER)(新規公開株[IPO]直前通期業績ベース)が20倍を下回っている低PER企業22社の平均騰落率は+15.4%の上昇でした。

 しかし、予想PER(新年度会社業績見通し)では、PER20倍未満の企業36社の平均はマイナス19.3%と、全体平均を下回っています。

 これは、業績見通しが上場前(=初値前)に示されるため、初値の株価形成において織り込まれる、あるいは過剰に株価に反映されてしまっている可能性が考えられるでしょう。

 さらに顕著な例が「業績変化率」です。

 利益予想値が実績値比100%(2倍)の増加、あるいは赤字から黒字転化が見込まれる企業32社の平均騰落率(初値⇒現値)は、なんとマイナス34.8%でした。一見して成長性が高そうな企業ほど実力以上に人気化する可能性があり、落とし穴が大きいと言えそうです。

「売上高規模」によって株価の騰落率が異なる

 ここまで見てきた通り、PER水準や業績変化率は、初値に過度に織り込まれる傾向があるようです。では、売上高規模に対してはどうでしょうか。

 売上高(実績)を「100億円以上」「50億円以上100億円未満」「20億円以上50億円未満」「20億円未満」と四つのカテゴリーに分けて平均騰落率(初値⇒現値)を求めたところ、図のような結果となりました。

売上高(実績)レンジ別平均騰落率
単位:社、%
出所:日本取引所グループおよび各社資料から作成

 売上高規模別に見てみると、最上位の売上100億円以上のグループが騰落率マイナスとなったのはやや意外ではありましたが、売上高規模が騰落率に大きく影響する傾向が見て取れます。感覚的には「売上高規模50億円」前後に分岐点がありそうです。

 50億円未満はマイナス23.5%と振るいませんが、その中でも20億円未満はマイナス29.9%と一段と厳しい状況が見て取れます。なお、売上高10億円未満(21社)の平均騰落率はマイナス44.8%と、かなり深刻です。

機関投資家の動静と時価総額の分岐点

 規模別ではもう一つ、時価総額レンジ別も見てみました。具体的には、初値時点の時価総額レンジを5段階に区分して平均騰落率を算出しています。すると、より特徴的な傾向が示されました。

 まず、時価総額200億円以上500億円未満のレンジでは、対象17社中7社が上昇し、平均騰落率+76.3%という極めて高いパフォーマンスを示しています。

 反対に、200億円未満では平均騰落率はマイナス30.4%となっており、特に50億円未満の騰落率はマイナス42.2%と厳しい状況です。また、時価総額50億円未満の企業24社のうち、上昇したのはわずか1社でした。

 こうした規模の優劣が表れる背景には、機関投資家の影響があると推察します。

 具体的には、一定の規模がないと株式流動性を確保しづらく、まとまった金額を投資することが難しいからです。

 今後、個人投資家の資金流入によってファンドの運用資産残高が増加すると見込まれることから、規模の小さな企業への投資を敬遠する傾向は、より一層強まるものと考えられます。

初値時価総額レンジ別平均騰落率
単位:社、%
出所:日本取引所グループおよび各社資料から作成

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