SNSで仲良くなった「顔の見えない友人」の正体

 一人暮らしをしていたマサオさん(仮名・60代)は、定年退職後にハマったSNSを通じて、とある男性と知り合いました。

 その男性のアカウントはいつもタメになる情報を発信しており、また、SNS上で垣間見える彼の私生活は、かなり羽振りがよさそうでした。

 マサオさんは、そのアカウントの発信を日常的に目にするうち、徐々に「自分もこんな風になりたい」「この人と仲良くなりたい」と考えるようなったそうです。

 そうして相手の発信にリアクションを送るうちに、相手からも返信がくるようになり、交流が生まれました。

 そのアカウントの主はリュウイチ(仮名・50代)と名乗り、外資系の運用会社でマネジャーをしているとのこと。

「やはり一流のビジネスマンだったか。自分の目は正しかった」とご満悦のマサオさんは、リュウイチさんの発信をこれまで以上に追いかけるようになります。

 マサオさんがリュウイチさんとSNSで交流を始めて約半月後、リュウイチさんからダイレクトメッセージが届きました。内容は「ほかの人にはまだ伝えていない、とっておきの投資商品がある」というもの。

 一人暮らしのマサオさんは、これまでぜいたくとは無縁の生活で、数年前に受け取った退職金にも手を付けていません。自宅は両親から相続した持ち家であり、金銭的にはなんの不安もありませんでした。

 しかし、リュウイチさんから「元本は安全」「毎月一定の収益を受け取れる」と説明を受けたマサオさんは、「年金暮らしの自分でも、裕福な暮らしができるかもしれない」「エリートのリュウイチさんが言うなら」と考えるように。その結果、マサオさんはまず、500万円をリュウイチさんに預けたそうです。

 振り込んでから数カ月間は、当初説明を受けていた以上の入金があったといいます。これにより、マサオさんはすっかりリュウイチさんを信用。リュウイチさんに勧められるがまま、追加で1,500万円を振り込みました。

 さらに、「現金だけでなく、不動産を持っておけば安心だ」と勧められ、地方にある建物の共有持分を約1,000万円で購入したそうです。

 ところがその後、「事業が赤字になった」「資金繰りが厳しい」などの理由で、配当が滞るようになりました。不安が募ったマサオさんがリュウイチさんに連絡するも、一切返信がありません。またSNSについてもまったく更新されていませんでした。

詐欺罪が成立。しかし…

 焦りと不安がピークに達したマサオさんは、離れて暮らす長女に相談。明らかに不審な経緯を聞いた長女がすぐに契約書や登記を確認したところ、不動産は市場価値が乏しく、マサオさんが取得したのは建物全体ではなく、ごく一部の共有持分でした。単独で利用することも難しく、買い手も見つかりません。

 その後、リュウイチさんは詐欺事件として捜査の対象となりました。しかし、刑事事件になったからといって、マサオさんが支払った金銭が自動的に返還されるわけではありません。さらに、マサオさん名義となった不動産持分も残り、登記を整理するためには、相手方への返還請求や訴訟など、別の民事手続を検討しなければならなくなりました。