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年収770万円が分かれ道?「高額療養費制度」の仕組みと落とし穴

2026/8/9 7:30

 8月に入り、「高額療養費制度の自己負担が増えた」というニュースが話題です。しかし、制度の仕組みや利用方法は複雑で、特に年収770万円が医療費負担の分かれ道となっていることをご存じでしょうか? そこで今回は、この制度を最近利用した筆者が、手続きのコツや注意すべきポイントを分かりやすく解説します。

目次
  1. マイナ保険証で「申請不要」
  2. 基準は「4〜6月の給料の平均」
  3. 年収770万円超えで「医療費が倍近く」に
  4. あれば助かる「一部負担還元金」
  5. 高所得者は27年から大幅負担増

マイナ保険証で「申請不要」

 私は運動中のアクシデントで膝をけがしてしまい、5月に手術を受けました。14日間の入院経験を基に、高額療養費制度(高額医療費制度)について初心者向けに解説します。

 会社員でマイナ保険証を持っている方であれば共通する部分が多いでしょうが、自営業者や個人事業主で国民健康保険に加入されている方、マイナ保険証をお持ちでない方、70歳以上の方は異なる部分もあるのでご注意ください。

 けがをして、手術代を考える時にまず気になるのが「高額療養費制度はどうやって申請すればよいのか?」ということです。

 面倒な手続きを想定していましたが、マイナ保険証を持っていれば手続きは不要でした。しかも、窓口で支払いするときの金額が、自己負担限度額までになるので、払い戻しの受け取りを待つ必要もありません。高額な医療費の立て替えも覚悟していたため、非常に助かりました。

 ただし、マイナ保険証を利用しない場合や、健康保険の種類によっては「限度額適用認定証(病院窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えるための証明書)」による事前申請や事後の申請手続きが必要です。また、窓口での負担を自己負担限度額までにするためには、オンライン資格確認システムを導入している医療機関で限度額情報の提供への同意が必要です。

基準は「4〜6月の給料の平均」

 高額療養費制度は、所得額ごとに定められた「上限額」を超える部分の医療費の負担が不要になる制度です。それぞれの所得次第で、自己負担の額が大きく変わります。

 そのベースとなる「所得」とは、保険料の基準として使われる「標準報酬月額」です。4〜6月の3カ月間の給料合計を3で割った平均額(その年の9月に決定)です。

 標準報酬月額は、ねんきんネットの「年金記録を確認する」の項目から、確認できます。上限額の計算のもとになる「治療を受けた月」の標準報酬月額を確認すると良いでしょう。もしくは、会社員であれば、給与明細に記載されている厚生年金保険料からも逆算可能です(※日本年金機構のサイトの「厚生年金保険料額表」を参照)。

年収770万円超えで「医療費が倍近く」に

 この標準報酬月額で医療費の上限額が変わります。標準報酬月額が50万円であれば8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%で上限額が計算できます。

所得別の自己負担限度額

被保険者の所得区分(標準報酬月額) 自己負担限度額
83万円以上(年収約1,160万円以上) 27万300円+(総医療費-90万1,000円)×1%
53万~79万円(年収約770万~1,160万円) 17万9,100円+(総医療費-59万7,000円)×1%
28万~50万円(年収約370万~770万円) 8万5,800円+(総医療費-28万6,000円)×1%
26万円以下(年収約370万円まで) 6万1,500円
住民税非課税世帯 3万6,900円
出所:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
注:直近12カ月間で3回以上上限額に達している場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられる「多数回該当」という仕組みもある。

 私の手術・入院の総医療費は140万9,220円でしたので、3割負担だった場合の支払額は約42万円です。

    しかし、高額療養費制度を利用すれば、年収が約370万~770万円であれば上限額の9.7万円に抑えられます。所得の増加に伴い、負担額が増加するため、年収が約770万~1,160万円であれば上限額は18.7万円(2026年8月の高額療養費制度の見直し後の基準で計算)となります。

医療費が約141万円の場合の限度額

被保険者の所得区分(標準報酬月額) 自己負担限度額
83万円以上(年収約1,160万円以上) 約27.5万円
53万~79万円(年収約770~1,160万円) 約18.7万円
28万~50万円(年収約370~770万円) 約9.7万円
26万円以下(年収約370万円まで) 約6.2万円
住民税非課税世帯 約3.7万円
出所:厚生労働省の資料を参考に筆者作成

 退院時に窓口で支払う金額(マイナ保険証を利用などにより窓口での支払いが自己負担限度額になった場合)はこの上限額に食事代や差額ベッド代などを加えた額となります。私の場合、14日間の入院で食事代は2万円弱でした。

 一つ、注意したいのは「医療費の上限額は月単位で計算される」という点です。月をまたぐと限度額が2回分発生してしまうため、入院期間が短い場合は、月初から月末に収まるように調整することで負担を抑えられる場合があります。

あれば助かる「一部負担還元金」

 高額療養費制度によって医療費は一定程度まで抑えられますが、加入している保険組合によっては、「一部負担還元金」という名目で追加の給付を受けることができます。

 一部負担還元金は、定められた金額を超えた部分の医療費をカバーするものです。組合によって異なりますが、最終的な自己負担額が2万~5万円程度で済むケースが多いようです。

 また、大きな病気やけがをすると通院、療養や入院で残りの有給休暇の日数を使い切ってしまうことがあります。それ以上休めば無給の「欠勤」扱いとなりますが、後ほど「傷病手当金」を申請すれば、1日当たり標準報酬日額(標準報酬月額を30で割った額)の約3分の2が支給されます。

 ただし、傷病手当金は、3日連続の入院や病気療養で休んだ後の4日目から支給が開始します。3日間未満の欠勤では支給されないため、入院で有給休暇を使い切ってしまい、退院後の通院や短期間の療養のためにやむを得ず欠勤しても手当を受け取ることができません。

 それほど有給日数に余裕がない場合、入院中は欠勤にして、有給をなるべく温存する方が良いでしょう。

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