AI相場は一時のブームではない―「新たな産業革命」の入口

 この利益成長見通しをけん引するのが、AIの進化とその産業実装といわれています。筆者は「AI相場は一時のブームではなく、新たな産業革命の入口」と考えています。

 プレセデンス・リサーチ(Precedence Research:カナダ系調査会社)の長期予測によると、世界AI市場規模は2025年の約7,580億ドルから2035年には約4兆2,160億ドル(約680兆円)へ拡大し、今後10年で約5.6倍の成長が見込まれています。

 これは一過性の需要ではなく、AIが社会のあらゆる分野に実装されていくことで、生産性を向上させて新たな付加価値を生み続けるトレンドを見込んだ予測です。

図表3:世界のAI市場規模は高い成長を続ける見通し

図表3:世界のAI市場規模は高い成長を続ける見通し
出所:プレセデンス・リサーチによる長期予測を基に著者作成

 実際、AIの進化はすでに次のステージへ移行しつつあります。生成AIが文章や画像を生み出す大規模言語モデル(LLM)の段階から、半導体やAIデータセンターなどのインフラ整備が進み、AIエージェントが事務、金融、医療・創薬などの知的業務・分析を担う時代へ入り始めました。

 さらに、工場・物流のフィジカルAI、自動運転車や家庭(家事作業)へ広がる自律判断型エッジAI、そしてヒューマノイド(人型ロボット)といった現実世界モデル(RWM)に進歩していくと予想されています。

 米国では、AIが単なるソフトウエアではなく、生成AIは数年で汎用AI(AGI)に進歩し、やがて人工超知能(ASI)に進化してあらゆる産業の「頭脳」として基盤技術となっていくと予想されているようです。

 こうしたトレンドと経済効果は、1990年代後半のインターネット革命や18~19世紀の産業革命を上回るペースであるといわれています。

 短期では、地政学的リスクや物価、金融政策など、さまざまなショックで株価が調整する局面は訪れるでしょう。しかし筆者は、「需給的な株価波乱はノイズ、長期の利益成長がトレンド」だと考えています。

 市場の主役は「AI関連株」から「AIを活用して生産性を向上させて利益を成長させる企業」へと広がり、米国のみならず世界経済の生産性向上を支えるインフラになっていくでしょう。

 現在のAI相場は短命なブームとは思いませんが、相場は一直線には上昇していかないのも事実。中間反落を挟みながら、新しい産業革命とも呼べる構造変化を織り込む長い相場の途上と捉えたいと思います。

10年前から米国株に積立投資していれば時価資産は約3倍に

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座の「つみたて投資枠」は毎月10万円(年間120万円)です。この制度を活用して長期・積み立て・分散投資を続けた場合、どのような資産形成が期待できるのかを、S&P500(円ベース)の長期実績で検証したのが図表4です。

図表4:S&P500(円)に10年前から毎月10万円ずつ積立投資してきた実績を検証

図表4:S&P500(円)に10年前から毎月10万円ずつ積立投資してきた実績を検証
出所:市場データより定時定額投資の実績を基に検証。
*上記は市場実績に基づく参考情報であり、将来の投資成果を保証するものではありません。

 2016年1月から毎月10万円を機械的に積み立てたと仮定すると、10年間の累計投資額(元本)は1,270万円となります。一方、2026年7月末時点の投資資産の時価評価額は約3,663万円となり、投資元本の約3倍まで膨らんできた計算です。

 この結果は過去10年間における米国株式市場実績(円ベースのS&P500=為替ヘッジなしのインデックスファンドへの積立投資をイメージ)に基づくシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではありません。

 それでも、「時間は投資家の味方」であり、長期積立投資が米国経済と企業利益の成長を取り込む有力な方法であることを示す、示唆に富んだ結果といえるでしょう。

 上記で解説した、資産形成実績を支えたポイントは三つあります。

 一つ目は「ドルコスト平均法」です。毎月一定額を投資することで、株価が高い局面では少なく、安い局面では多くの口数を購入できました。2020年のコロナショックや2022年の急速な利上げ局面など、大きな下落時にも積み立てを継続したことで平均購入単価が抑えられ、その後の株価回復の恩恵を大きく受けることができました。

「安値を当てるより、積み立てをやめない」。相場のタイミングを予想せず、バスから降りずに時間を味方につけられることが、ドルコスト平均法の強みといえるでしょう。

 二つ目は複利運用の効果です。資産が増えるほど、その増えた資産自体がさらにリターンを生み出すため、時間の経過とともに資産の増加ペースは加速します。

 三つ目は、恒常的な円安トレンド(ドル高=為替差益による円換算外貨建て時価資産の押し上げ)です。図表4でも、積み立て開始から数年間は緩やかだった資産残高が、後半になるにつれて大きく伸びていることが確認できます。これは「利益が利益を生む」という複利の力(雪だるま効果)にほかなりません。

 NISAは、こうした長期・積み立て・複利運用を非課税で実践できる制度です。短期的な株価変動に一喜一憂せず、米国を軸とする世界経済と企業利益の成長を信じて積み立てを続けることが、資産形成の王道であることを示しています。

 資産形成は「売買タイミングを当てるゲームではなく、時間をかけて育てる習慣」です。市場が一時のノイズで揺れても、長期の視野で投資を続ける(Stay Invested)。本稿でご紹介した「米国で百万ドル長者が増えてきた理由」も、結局はこうした資産形成のプリンシパル(成長証券への長期分散投資)を巡る広い認識があると思います。