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IPO投資は「ゴールデンチケット」のはずが…実は7割超が負けている!?いまIPO市場で起きている“異変”の正体

NEW 2026/8/2 11:00

 個人投資家の中には、IPO銘柄への投資は「抽選に当たりさえすればもうけたも同然」と考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、近年のIPO市場を分析するとそうではないようです。今回、上場企業の調査・分析を得意とするアナリスト藤根靖晃氏が、IPO市場の現状を多角的なデータ分析からひも解き、投資における特徴や法則性を探ります。

目次
  1. IPOの人気が低下している理由
  2. IPO企業数はグロース市場が顕著に減っている
  3. 初値での投資は全体的には妙味が薄い
  4. 初値の上昇率が高い銘柄は、中期的には不振
  5. 初値が公開価格割れした銘柄の「その後」は?
  6. 相対的に投資妙味が高いIPOとは?

画像:k_river - stock.adobe.com

IPOの人気が低下している理由

 新規公開株(IPO)市場に関して、多角的にデータを見ていくことで、何らかの特徴や法則性の発見を試みます。

  個別株投資の基本は、その企業の事業内容を理解し、競争環境と競争優位性から業績見通しを分析し、適正な株価水準を検討することです。

 しかし、近年IPO企業においては、開示される情報量が増えたとはいえ、その情報は会社側から一方的に発信されたものに限定されます。そのため、多くの投資家にとって、上場時までに十分に検討できる時間的余裕はありません。

 本稿(前編)では、IPO市場のアウトラインを確認しつつ、特に「初値」に焦点を当てます。次回(後編)は、主にグロース市場を中心に、株価指標など多様な切り口から勝ち組・負け組の要素を探ります。

 この数年、投資家のIPO銘柄に対する関心が薄らいでいるように感じています。これは、AI・半導体関連銘柄を中心とした大型株相場が盛り上がる中で、東証グロース市場の著しい停滞が続いていることが主因でしょう。

 2022年4月の市場再編より算出が開始された、東証の各市場指数(2022年4月1日を1,000として算出)は、プライム市場指数が2,069.02(2.07倍)、スタンダード市場指数が1,628.62(1.63倍)と、それぞれ上昇しています(2026年7月24日時点)。

 にもかかわらず、グロース市場指数は887.58(マイナス11.2%)と、一時的にプラスの時期もあったものの、マイナス圏にとどまっているのが現状です。

IPO企業数はグロース市場が顕著に減っている

 近年のIPOについて、東証上場企業数の推移をみていきます。

東証IPO企業数 表
出所:日本取引所グループWebなどから作成

 プライム、スタンダード、グロースの東証3市場への新規上場企業数の合計は、2024年が81社、2025年が59社と減少しています。プライム、スタンダードの新規上場に特に変化はありませんが、グロース上場企業数が63社から41社へと大きく減少しました。

 背景には、グロース市場の上場維持に必要な基準の厳格化があります。「上場10年後に時価総額40億円以上」としている現在の基準を、2030年には「上場5年後に100億円以上」に引き上げる方針です。

 東証が正式に基準引き上げを発表したのは、2025年9月26日ですが、その前年から議論は公になっていました。実際には、2025年の早い段階からグロース市場へのIPOを控える動きが強まっていたと考えられます。

 なお、2026年7月15日までのデータによると、今年のIPO企業数は18社です。同期間(年初から7月15日まで)の比較では2024年39社、2025年26社であり、減少傾向が続いています。

初値での投資は全体的には妙味が薄い

 IPO銘柄については、新規募集・売出しへの申し込みによって、抽選により獲得できるケースがあります(当選する確率はあまり高くありません)。

 公開価格(公募価格)に対する初値の上昇率は、投資家の注目度のバロメーターです。まずは単純に公開価格と初値を比較していきましょう。

 2026年は、初値が公開価格を上回る社数が減少しており、その結果として平均上昇率も過去2年と比較して低くなっています。これは市場動向による影響も大きいと考えられます。

 2024年のグロース市場は下落傾向、2025年は年初から8月までは上昇傾向(9月から年末にかけて下落)、2026年は年初から5月までは上昇トレンド(その後急落)でした。

 このため、具体的な特徴を導き出すのは難しい状況です。ただし、不振の2026年でも公募・売出し株が当選すれば、プラスのパフォーマンスが期待できます。

初値上昇率の年次比較 表
出所:日本取引所グループWebなどから作成
注:上昇率は各銘柄の上昇率を単純平均したもの

 では、現値(7月17日終値)に対する初値からのパフォーマンスはどうでしょうか。

現値(7/17終値)に対する初値からの上昇率の年次比較 表
出所:日本取引所グループWebなどから作成
注:上昇率は各銘柄の上昇率を単純平均したもの

※現値と比較しているため、計測期間が2024年と2025年は長く、2026年は短くなっており、年次で比較することの妥当性には疑問が残るかもしれません。

 現値(7月17日終値)が初値を上回っているのは、いずれの年次でも3割未満にとどまっていることから、初値での投資は妙味が薄いといえるでしょう。

初値の上昇率が高い銘柄は、中期的には不振

 さて、上で「公開価格に対する初値の上昇率は人気のバロメーター」と述べましたが、ここからは初値の上昇率が高い銘柄の「その後」をみていきましょう。

初値上昇率 上位30社 表
出所:日本取引所グループWebなどから作成

 上図は、公開価格から初値までの上昇率が高かった上位30銘柄をピックアップしたものです。驚くことに、現値が初値を上回っている企業は1社もありません。それどころか、全体の3分の2の企業が、初値を3割以上も下回っています。

 ただし、初値から上場来高値への上昇率は比較的高水準です。つまり、初値上昇率の高い銘柄群は、上場人気で株価が一時的に高騰する銘柄が多いといえます。

 もっとも、その後は実績が人気に追いつかず、株価は失速する傾向にあります。つまり、IPO時の「人気」は、「実力」とは一致しないことが多いといえるでしょう。

初値が公開価格割れした銘柄の「その後」は?

 では反対に、初値が公開価格を割り込んだ銘柄群はどうでしょうか。

 2024年から2026年7月15日までに上場した企業158社の内、初値が公開価格割れとなったのは33社です。前述の初値上昇率で上位の企業はほとんどがグロース市場でしたが、こちらはプライム市場、スタンダード市場の企業が半数近くを占めています。

 市場別の特徴は後述しますが、プライム市場では4社に1社(12分の3社)、スタンダード市場では5社に2社(30分の12社)が公開価格割れとなっている状況です。

 公開価格割れとなった企業のその後の株価パフォーマンスは、芳しくない企業が多い傾向にあります。実際、33社の内20社(60.6%)が、現値において初値を下回っている状況です。

初値下落率 全33社 表
出所:日本取引所グループWebなどから作成

相対的に投資妙味が高いIPOとは?

 最後に、市場別パフォーマンス動向を簡単にまとめます。

 まずプライム市場のIPOは、半数の企業が現値において初値を上回っています。単純平均パフォーマンスにおいて、キオクシアホールディングス(285A)を除外して計算してみても高いパフォーマンスを示していることから、相対的に投資妙味が高いと考えていいでしょう。

 次にスタンダード市場は、初値に対して現値はプラスですが、プライム市場には大きく劣後しています。初値から上場高値のパフォーマンスも他の市場より劣っており、相対的に魅力が低いと言わざるを得ません。

 最後にグロース市場は、初値に対して現値はマイナスであるものの、初値から上場来高値は+98.0%と高いパフォーマンスを示しています。中長期の投資対象として評価しにくいものの、投機的な投資家層にとっては魅力的な面があるといえそうです。

市場別傾向(増減率は単純平均) 表
出所:日本取引所グループWebなどから作成
注:上場廃止企業は、豆蔵デジタル、レジル、オルツ

 ここまでの内容をまとめると次のとおりです。

  • IPO社数は2025年から顕著な減少トレンドにあり、その大部分がグロース市場である。
  • 2024年以降にIPOを行った7割超の銘柄は、現在株価が初値を下回っている。(7月17日時点)
  • 上場人気の高い銘柄(初値の公開価格に対する上昇率が高い銘柄)は、中期的に不振となる傾向がある。
  • 初値が公開価格を下回った銘柄はその後もさえないものが多いが、一部に驚異的なパフォーマンスを出すものがある。
  • プライム市場は安定的、グロース市場は投機的、スタンダード市場は相対的に妙味が薄い。
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