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レバレッジ、トレンドフォロー、カバードコール。その好成績の正体と「仕組み」の死角

2026/8/1 11:00

 好成績をうたう戦略型のファンドには、輝かしいバックテスト、高い分配利回り、効率的な倍率などがあり、表の数字は魅力的です。しかし、それらが「仕組み」で作られているとき、潜在的なリスクは、平均リターンやうたい文句ではなく、リターン分布の形状に現れます。今回はこうした商品を適切に活用するための考え方を整理します。

目次
  1. レバレッジ:「2倍」はまっすぐ2倍にはならない
  2. トレンドフォロー:強い相場に乗るが、横ばいで削られる
  3. カバードコール:分配に代わりに上値を売り、下値は残す
  4. 戦略が重なると、死角も重複する
  5. 新規設定が増えるときは、少し冷静に
  6. 結論:表の数字ではなく、中身で選ぶ

ここで取り上げるのは、レバレッジ、トレンドフォロー、カバードコールです。まとめて「『仕組み』でリターンをつくる戦略」と呼ぶことにします。共通するのは、デリバティブなどを活用することで、素朴に資産を持つのとは違う形に値動きを作り替えているという点です。

 これらの成績は表の数字だけでは判断しづらく、それぞれの特徴が、価格経路への依存、リターンのゆがみ、そして分布の裾(極端な結果)に現れます。今回はそれらの表の顔と死角を確かめていきましょう。

※なお、これからお見せする図は、いずれも仕組みを説明するための概念図や試算結果の一例です。特定の商品や将来の予測ではないことをあらかじめご承知おきください。

レバレッジ:「2倍」はまっすぐ2倍にはならない

 レバレッジの表の顔は「値動きが目標倍率(2倍など)で、少ない元手で大きく狙える」効率性です。しかし多くのレバレッジ型は、あくまでも日々の値動きを目標倍率に連動させる仕組みで動いており、ここに死角があります。

 日次でポジションがリセットされるため、例えば目標倍率が2倍であっても、長期リターンが指数の2倍に収束するわけではありません。特に上下を繰り返す横ばい相場では、複利により価値がじりじりと削られます。前回解説した「リターンのブレが大きいと資産の成長スピードを鈍らせる」というのが、レバレッジの分だけ増幅されて効きます。

図1:レバレッジの経路依存
※上図は将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※詳細な条件は末尾に記載

 図1のとおり、強いトレンドが続く相場では、レバレッジ型は倍率以上に伸びることがあります。一方で横ばい相場では減衰し、現物に負けることもあります。また見過ごされがちですが、レバレッジ維持のためにかかる借入コストや経費率も、運用成績に地味に効いてきます。

トレンドフォロー:強い相場に乗るが、横ばいで削られる

 トレンドフォローは上昇・下落にかかわらず、はっきりした方向が出た資産に乗る戦略です。これは長年の実証研究に裏づけられた正当な戦略で、頭ごなしに否定すべきものではありません。過去の大きな相場変動で成果を上げた実績もあり、良い意味での偏りを持ちやすい特徴もあります。

 この戦略における死角は、はっきりとした価格の方向感がないレンジ相場にあります。上がり始めたと見て買った途端に反落し、下がり始めたと見て手じまう。このような往復ビンタを食らうと、現物はほとんど動いていないのに、コストと小さな損失が積み上がることになります。

カバードコール:分配に代わりに上値を売り、下値は残す

 カバードコール戦略の表の顔は、なんといっても「高い分配利回り」です。保有資産にコールオプションを売り、その代金(プレミアム)を分配の原資にします。株を持ちながら追加の収入が得られる、うまい仕組みに見えます。

図2:カバードコールのペイオフ
※特定商品ではなくオプションの損益構造を例示 ※ここではプレミアム4%(年率)とし、株価上昇分は5%に限定(対現在値) ※上図は将来の投資成果を示唆・保証するものではない

 しかし図2のとおり、その代償として値上がり益を一部諦めます。相場が大きく上げても一定以上は受け取れない一方で、損失が限定されるわけではありません。上値は限られ、下値は残る、この非対称性を認識しておく必要があります。

 さらに注意したいのが、時に高い分配金の一部は、実質的に自分が拠出した元本の払い戻しであることがあります。分配利回りの高さをそのまま「自分のもうけ」と捉えると実像を見誤るため、あくまでも分配とトータルリターンは別物と考えておきましょう。

戦略が重なると、死角も重複する

 こうした戦略は、単体でなく組み合わされることがあります。例えばレバレッジとトレンドフォローの組み合わせは、方向感のある相場では威力を増す一方、トレンド転換時やボックス圏の相場ではもろ刃の剣となります。レバレッジが上下動のたびに減衰し、そこにトレンドフォローの往復ビンタが重なるということが起こり得るのです。

 そこで、両者が抱える同じ弱点がどのように影響するかを確認します。ただし先にお断りしておくと、以下で使うトレンド判定は「20日移動平均を上回れば買い、下回れば現金」という素朴なルールです。実際のファンド運用では、複数の期間を組み合わせるなどの工夫がなされます。

 ただし影響が小さくなっても無くなりはしません。方向感の無い相場で判定が空振りするのは、この戦略の構造上の性質だからです。

図3:累積リターン推移(横ばい相場)
※現物は後述の3,000通りの試算のうち、2年後の現物リターンが最も0%に近い1本を抜粋 ※上図は将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※詳細な条件は末尾に記載

 図3では、現物が0%近辺で着地した一方、レバ×トレンドフォローは約30%のマイナスになりました。しかしこれは一つの経路に過ぎず、「都合のよい一本を選んだのでは?」と疑問を持つかもしれません。そこで今度は、横ばい局面を3,000通り試算し、結果を見てみます。

図4:横ばい相場の分布(3,000通り)
※縦軸はリターンの起こりやすさ(山が高いほど発生頻度が高い)、横軸はリターン(右側ほどハイリターン) ※上図は将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※詳細な条件は末尾に記載

 図4のとおり、現物が0%を中心に分布が立っているのに対し、レバやトレンドフォロー、そして両者を重ねた戦略は、分布そのものが左へ寄ります。つまり、先ほどの一本がたまたま不運だったわけではなく、横ばい局面では構造上不利になりやすいことを示しています。

 もう一つ公平のために大事な点をお伝えすると、こうした戦略は常に悪いわけではありません。同じレバ×トレンドフォローを、トレンド相場でも試算して並べてみます。

図5:局面依存(レバ×トレンドフォロー)
※上図は将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※詳細な条件は末尾に記載

  図5のとおり、トレンド相場では同じ戦略が大きく勝ちます。問題は戦略そのものの善しあしではなく、相場環境で顔がまるで変わること、そして横ばい局面では死角が重なり合うことです。値動きの異なる資産を組み合わせてリスクを打ち消す分散とは別物です。つまり、戦略を重ねるほど良い効果だけが足されていく、ということではありません。

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