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「課税の先送り」という点に要注意!相続時精算課税制度を正しく使う。2024年改正ポイントと落とし穴(その2)

2026/8/1 11:00

 2024年に改正となった相続時精算課税制度。この改正内容を有効活用することで、贈与の年間非課税枠を2倍にすることもできます。一方で相続時精算課税制度そのものの注意点も見逃すことができません。

目次
  1. 父と母で使い分ければ、年220万円を非課税で贈与できる
  2. 相続時精算課税の非課税枠は相続財産への足し戻しの対象外
  3. 暦年贈与と精算課税、どちらを選ぶべきか
  4. 見落としてはいけない注意点

父と母で使い分ければ、年220万円を非課税で贈与できる

 相続時精算課税制度を適用するかどうかは「贈与する人ごと」に選べます。ここを上手に生かすと、面白い対策ができます。

 例えばこんな方法です。父からの贈与は、従来どおり暦年贈与で年110万円。母からの贈与は、相続時精算課税制度を選択して年110万円。

 こうすれば、子は父と母から合わせて、年220万円を贈与税ゼロで受け取れることになります。これを10年続ければ、2,200万円もの財産を非課税で次の世代へ移せる計算です。

 子どもが二人いれば、単純計算で年440万円。家族ぐるみで取り組めば、移せる財産はさらに大きくなります。

相続時精算課税の非課税枠は相続財産への足し戻しの対象外

 さらに大切なのが、この二つの110万円には性質の違いがあることです。母から相続時精算課税で渡した110万円は、相続財産に足し戻されません。

 一方、父の暦年贈与の110万円は、贈与から一定期間内に父の相続が起きると足し戻される「生前贈与加算」の対象になります。しかもこの加算期間は、2024年以降は3年→7年へと段階的に延長されます。亡くなる直前の駆け込み贈与では、暦年贈与の効果が薄れてしまうのです。

 そこで、父の暦年贈与は「できるだけ早めに、長く続ける」、母の精算課税は「確実に相続財産から外せる枠として毎年使う」というように役割分担させます。両親それぞれの枠をフルに使うことで、非課税で移せる財産の総額とスピードを大きく高められる、というわけです。

 どちらが先に相続を迎えるか分からない以上、それぞれの制度の性質を理解し、早いうちから計画的に贈与を始めておくことが、結果的に大きな差につながります。

暦年贈与と精算課税、どちらを選ぶべきか

 では、暦年贈与と相続時精算課税、結局どちらを選べばよいのでしょうか?

 回答は、ひと言でいえば、「人による」というのが正直なところです。

 暦年贈与が向いているのは、時間をかけて、子や孫、その配偶者など、多くの人に少しずつ財産を渡していきたいケースです。特に相続人でない孫への贈与は、原則として生前贈与加算の対象にならないため、暦年贈与が有利になりやすいといえます。手続きの手間が少ないのも利点です。

 一方、相続時精算課税が向いているのは、まとまった財産を早く子や孫に渡したいケースや、収益を生むアパート、将来性のある自社株など、値上がりが期待できる財産を早めに移しておきたいケースです。

 相続時精算課税により贈与した財産は、相続財産への足し戻し時には、贈与時の価額を使うことになっています。そこで、値上がり前の低い評価額で固定できれば、その分だけ相続税の負担を抑えられることになります。

 そして今回の改正で加わった110万円の基礎控除により、「まとまった額は2,500万円の特別控除を利用して早めに渡しつつ、以後は毎年110万円の基礎控除を利用して贈与する」といった、相続時精算課税の二つの控除を組み合わせた使い方もしやすくなりました。

見落としてはいけない注意点

 ここまで読むと良いことばかりに見えますが、当然、落とし穴もあります。実行前に必ず押さえておきたい注意点を挙げておきましょう。

 一つ目は、一度選ぶと後戻りできないことです。相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与については、二度と暦年贈与に戻せません。母からの贈与にこの制度を選んだら、母からの贈与はもう暦年課税には戻せないのです。届け出る前に、本当にこの制度でよいのか、よく考える必要があります。

 二つ目は、贈与財産が「贈与時の評価額」で固定されることです。値上がりが見込める財産なら有利に働きますが、その逆もあります。ここは特に注意してください。

 例えば2,500万円で贈与した上場株式が、相続時には500万円まで値下がりしていたとしても、相続税は贈与時の2,500万円で計算しなければなりません(相続時精算課税の基礎控除(令和7年以降の贈与は年間110万円)を差し引ける場合は差し引き後の残額で計算)。

「将来値上がりする財産を贈与しましょう」というアドバイスをよく見かけますが、将来値上がりするかどうかなど、誰にも分かりません。値下がりすれば、かえって損をするのです。

 相続税には納付期限があるため、値下がりした財産を泣く泣く安値で売却せざるを得ないこともあります。最悪の場合、他の財産を売っても相続税の納税資金が足りない、という事態にもなりかねません。

 価格が変動する財産を贈与するなら、その価値が相続時にゼロになっても納税資金を確保できるか、という最悪のケースまで想定したシミュレーションが欠かせません。

 三つ目は、小規模宅地等の特例が使えなくなることです。この制度で贈与した宅地には、相続時に土地の評価を最大8割減らせる「小規模宅地等の特例」が適用できません。

 自宅の土地などをこの制度で贈与してしまうと、かえって税負担が重くなることがあります。

 メリットの一方で注意点も多い相続時精算課税制度。後になって「しまった!」とならないように、税理士からの適切なアドバイスを基に実行するか判断していただくことを強くお勧めします。

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