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60歳で定年を迎えたあとは、低賃金で再雇用…お金の不安を盾にした「ベテラン社員への搾取」が終わるかもしれない

2026/7/24 16:00

「定年」という社会のルールに従う時代は終わりました。人材不足と同一労働同一賃金の進行により、会社と社員の力関係は逆転しつつあります。さらに、iDeCoやNISAで経済的自立を果たせば、リタイアは会社が決めるものではなく、自ら選択するものになります。人生の主導権を個人に取り戻す「リタイア・シフト」についてお話しします。

目次
  1. 引退年齢は会社が決めるものではないはずーリタイア・シフトの時代へ
  2. お金の不安を盾にした「低賃金の継続雇用」という時代は終わる
  3. 公的年金は賃金と働きがいで決める時代
  4. もちろん早期リタイアもあり。個人投資家が選ぶ「FIRE」という道
  5. iDeCo、NISA、退職金のセットで「いつでも辞められる自由」を手に入れよう
  6. リタイア・シフト~人生100年時代の引退戦略~

引退年齢は会社が決めるものではないはずーリタイア・シフトの時代へ

 会社員の多くには「定年」という定めがあります。これにより一定の年齢に達すると、会社を自動的に辞めざるを得なくなります。

 日本では60歳を定年とする会社がまだ多数派ですが、この場合、「65歳」の雇用確保措置を講じる必要があります。 

 リタイアを決定づける要因として「公的年金の受給開始年齢」も無視できません。国が企業に対して65歳まで継続雇用を義務づけているのも、標準の受給開始年齢が65歳であるからです。

 しかし「国の年金」とか「会社の定め」に従って引退年齢を決めるということは主体的な決定とはいえません。こういうものだ、と社会のルールを受け入れていることになるからです。これはあまり愉快なことではありません。

 例えば、同期入社であっても、二浪していた友人はあなたより2年早く定年となります。

 自分の能力や労働意欲と関係なく、「年齢」で引退時期を決定させられる世の中は、考えてみればおかしなルールです。

 今まで当たり前のものとされていましたが、これから変化していくかもしれません。おそらく近い未来には、「本人がいつまで働きたいと考えるか」が引退年齢を決める最大の条件となってくるはずです。

お金の不安を盾にした「低賃金の継続雇用」という時代は終わる

 今まで、60歳以降の雇用は「60歳から65歳までは低賃金」という不満がありました。しかし、年金が満額でもらえる65歳までは「生活のために働くしかない」というのはストレスです。

 まず、リタイアに係るこの不満はまもなく解消されることになります。というのは、人材不足の時代に60代前半の社員を低賃金で単純労働させ、新卒人材の獲得に必死になるほど間が抜けていることはないからです。研修をせずともすでに能力があり、十分に戦力となるのが60歳代です。シニア人材を有効活用するのは自然の流れです。

「正社員と同様の仕事を、しかし低賃金で」という理屈は通用しません。同一労働同一賃金の縛りは厳しくなってきており、能力に見合った対価を支払う時代になっているからです。働かせるならちゃんとお金も出せ、という流れができあがっています。

 すでに気がついている会社は、60代の人材活用に動いています。最近では、約3社に1社は65歳定年(あるいはそれ以上)になっています。65歳定年ということは、基本的に59歳までと60歳以降で給与や賞与に大差がないということです。そして、こうした会社の多くは65歳以降70歳まで継続雇用制度を設けています。

 会社側は「できるだけ長く働いてほしい」というスタンスに一気に変わり始めています。70歳まで好条件で働ける環境は、もう目の前に来ているでしょう。

公的年金は賃金と働きがいで決める時代

「70歳まで働ける=70歳まで年金が出ないので働くしかない」というのは、イヤなリタイア・シフトです。

 リタイア年齢を決定づけていたもう一つの要因である公的年金制度については、2025年5月に動きがあり、6月には改正が成立しました。65歳受給開始年齢の引き上げについての議論は停滞しています。給付水準の調整を行うことで、実質的には67歳へ引き上げているようなものだと私は見ていますが、65歳からもらえることは変わりありません。

 それであれば、「年金がもらえないから65歳以降も働くしかない」と後ろ向きに考える必要はありません。むしろ逆で、「65歳以降は年金をもらえるから辞めても困らない。だからこそ、仕事の内容や報酬の条件で働き続けるかを決める」という選択ができるようになります。

 これは会社と社員の間で立場が逆転することを意味します。

 これまで立場が強かった会社側が、これからはあなたに「65歳以降もまだ居続けてほしい。ちゃんと給料も出すから」と、頭を下げてくる時代になるかもしれません。ちょっと痛快ですね。

もちろん早期リタイアもあり。個人投資家が選ぶ「FIRE」という道

 資産形成が順調に進めば、65歳の年金受給開始時期すら気にせずリタイアのタイミングを自己決定できるようになります。

 FIREを目指して資産形成することの本質は「リタイア・アーリー(RE)=早期退職」よりも「ファイナンシャル・インディペンデンス(FI)=経済的自立」にあります。お金の不安さえなくなれば、「定年」とか「継続雇用」の年齢を条件とせず「自分が辞めたいとき」を辞め時にすることができるわけです。

 40歳代の早期リタイアが実現しなくても、60歳リタイアなら社会的にはかなり早いリタイアといえます。例えば、

「65歳あるいは60歳で辞めても困らないので低条件ならもう辞めよう」
「60歳代前半の賃金が低いのはつまらないが、働きがいがあるので気にせず働いてもいい」
「60歳代後半は、働きがいだけを意識して仕事を選ぼう」

 というような選択肢が広がってきます。これは普通の会社員が得られなかった人生のラストシーンの選択の自由といえます。

iDeCo、NISA、退職金のセットで「いつでも辞められる自由」を手に入れよう

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を活用している現役世代の人たちは「リタイアの自由」を手に入れていく世代となります。

 団塊世代からバブル入社組くらいまでの世代では、「ただ、目の前のお金の問題だけ片付けてきた世代」でしたから、リタイアの時期も言われるがままに決定してきました。

 団塊ジュニア以降の世代、特にミレニアル世代やZ世代でNISAやiDeCoを活用している人は、相当の経済的余裕を持ってリタイア年齢を迎えることができます。

 リタイアの主導権はこれからの時代、「会社」から「個人」にシフトしていくのです。そのとき、主導権を完全にその手に握るために必要なのは、経済的な余裕を先行して確保することです。

 iDeCoにせよNISAにせよ、しっかり制度を活用し、投資のリターンも確保していきましょう。着実に資産の積み上げを果たした人は、「リタイアを自分で決められる」という幸せなフィナーレを飾ることができます。

 今、行っている投資は、自分の人生を自分でコントロールすることが「目的」です。個人投資家となった会社員は、「リタイア・シフト」時代を気持ちよく迎えてほしいと思います。

リタイア・シフト~人生100年時代の引退戦略~

 東洋経済新報社より7月8日に「リタイア・シフト~人生100年時代の引退戦略~」という本を出版しました。

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