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積み立てシミュレーションのわな。「平均」に惑わされないための「ブレ」の捉え方

2026/7/18 11:00

 積み立てシミュレーションが描くきれいな複利のカーブは、将来の資産の可能性を描き出します。しかしその一本線には、「毎年同じリターンが得られたら」という大きな前提が隠れています。現実のリターンは、年によって上下にブレます。今回は、その「ブレ」を織り込み、より現実的な積み立て資産の可能性を見ていきます。

目次
  1. 滑らかな曲線は「毎年同じ」の空想
  2. シミュレーション結果は一本の線から「帯」に変わる
  3. 「20年持てば負けなし」は本当か?
  4. 同じリターンでもブレが大きいとどうなる?
  5. 積み立てならではのわな―「順番」が効く
  6. シミュレーションそのもののわな
  7. まとめ:線ではなく幅で捉える

 

前回、前々回と、積立投資の王道であるドルコスト平均法を、バリュー平均法や一括投資と比べながら解説しました。

 今回は、将来の積立投資の結果を試算するときに、多くの人が一度は目にする、滑らかな右上がりの曲線について考えていきます。

滑らかな曲線は「毎年同じ」の空想

「年率リターン5%」の積み立てシミュレーションで描かれる資産推移の曲線は、いわば「毎年ちょうど5%ずつ増え続けた世界」を想定したものです。しかし、それは現実的ではありません。ある年は+20%、次の年はマイナス10%といったように、平均すれば5%でも、その道のりは決して滑らかではないのです。

図1:シミュレーション上の滑らかな複利曲線と実際の資産額のブレのイメージ

図1:シミュレーション上の滑らかな複利曲線と実際の資産額のブレのイメージ
※図は期待リターンが年率5%、毎月3万円を積み立てた場合の資産推移のシミュレーションと、資産価格の変動を考慮した場合のイメージを図示 ※試算において手数料、税金などは考慮せず ※上記の条件に基づく試算であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない
※筆者作成

 この問題は、シミュレーションの結果である一本線が、あたかも確定した未来のように見えてしまうことです。こうしたシミュレーションを行うのに必要な入力項目は「積立金額」「想定リターン」「積立期間」の三つであり、証券価格のリターンの源泉でもある「ブレ」は考慮されていません。では、このブレの影響を消さずに将来を描くと、どう見えるのでしょうか。

シミュレーション結果は一本の線から「帯」に変わる

 そこで今回は、モンテカルロ法という手法を用いて、ブレを考慮した積み立ての結果を試算していきます。

 具体的には、毎月のリターンを期待値とブレ(ボラティリティ)に基づいて乱数で発生させる操作を1万回繰り返します。これにより一本の線ではなく、図2のとおり、1万通りのあり得た未来が得られ、運用状況が良かった場合から芳しくなかった場合までを想定した、幅のある帯になります。

図2:資産価格のブレを考慮した場合の積み立てシミュレーション

図2:資産価格のブレを考慮した場合の積立シミュレーション
※図1の条件(年率リターン5%、毎月3万円積み立て)に加えて、年率リスク15%を想定し、リターンのバラつきを考慮した資産額の推移をモンテカルロ法により試算 ※月次の積み立てを確率的な月次リターンのもとで1万通りの資産額の経路を発生させ、資産額の分布を図示 ※試算において手数料、税金などは考慮せず ※上記の条件に基づく試算であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※筆者作成

 注目いただきたいのは、赤色の実線で示す従来の「毎年5%」の一本線は、帯の中央ではなく、やや上を通っていることです。数字で見ても、30年後のシミュレーション上の平均は2,450万円であるのに対して、その一方で、中央値は約2,058万円でした。

 図1で見た、資産価格のブレを考慮しない試算では、結果は約2,497万円であり、図2の平均と近しい数値です。つまり、よく見かけるあの一本線は、ブレを考慮した場合の平均近くを描いていることになります。

 そして資産額のブレは上に大きく開きます。これは、ごく一部の幸運なケースが平均をつり上げるためであり、結果として平均は、ちょうど真ん中の成績である中央値より高くなります。「中には一本線を上回るケースもある」の裏側で、実は多数派がたどり着くのは一本線より下の結果なのです。

「20年持てば負けなし」は本当か?

 その他に積み立てでよく語られる通説があります。「長く持つほど元本割れしにくい」や「20年以上持てば、過去はほとんど負けなしだった」というものです。これはシミュレーションでどう見えるでしょうか。図2の帯に、元本割れした割合を重ねてみます。

図3:資産額と元本割れ確率の推移の試算

図3:資産額と元本割れ確率の推移の試算
※図2と同じ仮定、条件を基に試算 ※元本割れ確率は発生させた資産額パスのうち投資元本を下回った経路の割合を算出 ※将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※筆者作成

 図3の青色の実線(右軸)のとおり、元本割れの割合は、積み立て年数が延びるほど確かに下がっていきます。10年で約24%、20年で約15%、30年で約10%と、長く続けるほど負けにくくなる、という通説の方向とは、たしかに整合します。

 ただし、二つ注意が要ります。一つは、ゼロにはならないこと。30年でも1割ほどは元本割れする可能性が残ります。もう一つは、より本質的な区別です。通説の「過去は負けなし」は、現実に起きた一本の歴史の結果論です。

 一方、図3が示すのは、あり得た1万通りの分布での確率です。つまり、前者は「たまたまその道だった」のに対して、後者は「どれだけの割合で負け得るか」という、似て見えて全く別物なのです。

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