7月6日から開催される上海プラチナウィークに先立ち、広州先物取引所(GFEX)に昨年上場されたプラチナとパラジウムの先物に対するこれまでの市場の反応を報告したい。結論から言うと、上海黄金交易所(SGE)からGFEXへと中国国内の流動性と価格形成がシフトしている傾向が窺われ、今後海外からもGFEXへの参加が認められれば、中国がグローバルな価格決定により大きな役割を果たすようになると考えられる。

 GFEXのプラチナとパラジウム先物は2025年11月に上場され、最初のコントラクトは2026年6月に満期となった。貴金属全般の価格が上昇したことを受けてGFEXの取引量も2025年末から2026年初めにかけて増え、建玉は最高で52トン、1日当たりの出来高は最高で228トンに達した。

 GFEXによると、初期の取引は個人投資家が大部分で、SGEに対してプレミアムがついていたが、これはSGEでは取引ができない個人投資家がGFEXに殺到したためとみられる。

 今年2月以降はタカ派的なFRB新議長の指名やイラン戦争の影響を受けて貴金属価格の強気相場が弱まり、第2四半期の建玉は平均19トン(図1)、一日の平均出来高は5.8トン(図3)に落ち着いた。ちなみにLBMAとNYMEXの一日の平均出来高はそれぞれ31.1トンと62.2トンだ。

図1.GFEXプラチナ先物の建玉

図1.GFEXプラチナ先物の建玉
出典:GFEX、WPICリサーチ

図2.GFEXの在庫は150koz(4.7トン)を上回る

図2.GFEXの在庫は150 koz(4.7トン)を上回る
出典:GFEX、WPICリサーチ

 GFEXの取引が「Qualified Foreign Investor(QFI)」制度の対象として承認されるまでは、国内価格と国際ベンチマークの間の裁定取引は国内の一部の機関投資家に限られる。

 しかし、中国は世界最大のPGM消費国であることからも、QFI制度に承認されれば、海外の投資家が取引所間の裁定取引のためにGFEXの出来高を増やす可能性があり、そうなれば価格形成に大きな影響を及ぼすだろう。裁定取引を生み出す価格差は市場参加者が増えるにつれて縮小するはずだ。

 そうなるまでは、今はGFEXに対する国内の反応を評価するにとどまる。年初からのSGEの出来高はこの10年間で最も低い水準に落ちた(図5)が、中国が輸入するプラチナはネットベースで従来の平均並みだった(図6)。GFEXのコントラクトは現物受渡もできるが、主な用途はメタルの調達ではなく価格ヘッジと見られる一方で、SGEは現物受渡の一方通行取引のみだ。

 つまり、GFEXの価格がSGEに対してディスカウントで取引され始めたため(図7)、国内の市場参加者はGFEXでヘッジを行い、直輸入やRTGなどを通じた二次市場(どちらもVATからの不利益が消滅した)から現物を調達しているもようだ。

 中国の輸入が増えている事実は、GFEXの取引所在庫が今年6月までに4.7トン近くまで増えていることからも明らかだ。

中国でプラチナ先物が上場され、世界最大の単一PGM市場の流動性と取引量が増加、GFEXの価格は概ねSGEに対してディスカウント

投資資産としてのプラチナを支える背景:

-WPICのリサーチによるとプラチナ市場は2023年から供給不足が続く。2026年の不足は縮小する予測だが、逼迫している現況は改善されないだろう。
-プラチナの鉱山生産は確実に減産、リサイクルはそれほどではないが供給全体はそれでも伸び悩み。
-市場の継続的な供給不足でリースレートが上昇し、ロンドン先物市場はバックワーデーションに。
-プラチナは水素経済の鍵を握るなど、世界のエネルギー転換にとってプラチナは重要な鉱物。
-プラチナ価格は歴史的に見ても過小評価されており、ゴールドよりも大幅に低い。

図3:2026年第2四半期のGFEX出来高は、初期の個人投資家の熱狂ぶりが、価格が下がり始めた2月以降には落ち着き、一日平均6トン

図3:2026年第2四半期のGFEX出来高は、初期の個人投資家の熱狂ぶりが、価格が下がり始めた2月以降には落ち着き、一日平均6トン
出典:GFEX、WPICリサーチ

図4:QFI制度に承認されれば、取引所間の価格差を利用した裁定取引が容易になるためGFEXの出来高は増える可能性

図4:QFI制度に承認されれば、取引所間の価格差を利用した裁定取引が容易になるためGFEXの出来高は増える可能性
出典:ブルームバーグ、GFEX、WPICリサーチ *CMEは期近物

図5:SGEの年初からの累積出来高は過去10年間で最低水準

図5:SGEの年初からの累積出来高は過去10年間で最低水準
出典:GFEX、ブルームバーグ、WPICリサーチ

図6:4月の香港を含む中国のプラチナの純輸入量は過去10年の平均並み

図6:4月の香港を含む中国のプラチナの純輸入量は過去10年の平均並み
出典:GFEX、WPICリサーチ

図7:GFEXの価格はSGEに対してディスカウントの傾向

図7:GFEXの価格はSGEに対してディスカウントの傾向
出典:GFEX、ブルームバーグ、WPICリサーチ

図8:2026年第2四半期のパラジウムの先物とオプションは、建玉平均9トンでプラチナ同様に国内の流動性を支える。

図8:2026年第2四半期のパラジウムの先物とオプションは、建玉平均9トンでプラチナ同様に国内の流動性を支える。
出典:GFEX、WPICリサーチ

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