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中央銀行の戦略的買い方針で、20%超も下落した金(ゴールド)はいずれ反発か

2026/6/23 7:30

 足元の金の国際価格は、今年の1月から3月にかけて付けた史上最高値水準からおよそ20%安い水準にあります。こうした様子を見て、しばしば「もう金相場の上昇トレンドは終わったのではないか」といった声を耳にします。本レポートでは、年一度行われている「中央銀行調査」を基に、今後の長期上昇トレンドの行方を考えます。

目次
  1. 「金(ゴールド)は戦略的資産」と認識
  2. 全需要の20%前後が中央銀行の保有増加分
  3. 「米ドル離れ・金(ゴールド)寄り」加速
  4. 「土台」に支えられ長期上昇は継続か
  5. [参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

「金(ゴールド)は戦略的資産」と認識

 世界的な金(ゴールド)の調査を手掛ける「ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council以下、WGC)」は、YouGov(ユーガブ:英国に拠点を置く、世界規模の調査機関。米大統領選や国を挙げた選挙などの際に世論調査を手掛けることもある)と協力し、2026年2月5日から5月19日にかけて「中央銀行調査」を行いました。

 9年連続の実施となった今年の有効回答は76件(昨年は73件)で、連絡を取った中央銀行のうち51%から回答が得られました(制裁の対象となっている国には連絡をしていない)。全ての質問は任意回答であるため、各質問の回答数は異なる場合があります。

 回答した中央銀行の名前は伏せられていますが(一意のURLでアンケートが行われ、回答は匿名化されている)、全体の結果のほか、国際通貨基金(IMF)の定義に基づく先進国および新興市場・開発途上国(EMDE)ごとに分類された結果が公表されています。

 もともと、中央銀行は「銀行の銀行」と呼ばれている、通貨を発行したり、物価と雇用を安定させるために金融政策を検討・決定したり、外貨準備高を保有したりする公的な機関です。例えば、日本では日本銀行が、米国では連邦準備制度理事会(FRB)が、それに当たります。

 こうした中央銀行が、対外的に何かあった場合への備えとして積み上げている外貨準備高(金(ゴールド)を含む)を、どのようなトピックに基づいて管理をしているのかを尋ねた問いへの回答結果が、図1です。

図1:外貨準備高管理の意思決定に関連するトピックは何ですか?(複数回答可) 

図1:外貨準備高管理の意思決定に関連するトピックは何ですか?(複数回答可) 
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 アンケートの結果から、近年、中央銀行は全体として、外貨準備高を管理する際、地政学的リスクを意識する傾向を強めていることがうかがえます。金利水準やインフレ懸念なども、引き続き大きなトピックであることに変わりはありませんが、近年は同リスクも、それらと同じくらい、大きなトピックになっています。

 また、ほとんどの中央銀行は外貨準備高の一部を金(ゴールド)で保有しており、その管理の仕方は他の資産と分けています。その理由を尋ねた問いへの回答結果が、図2です。中央銀行が金(ゴールド)を、どのような資産だと認識しているのかを知る、重要なヒントです。

図2:なぜ金(ゴールド)を他の準備資産と分けて管理するのですか?(複数回答可)

図2:なぜ金(ゴールド)を他の準備資産と分けて管理するのですか?(複数回答可)
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 ここで言う「歴史的資産」とは、Historical legacy asset、つまり、昔から持っている資産、伝統的な資産、長年保有してきた資産、長年持つべき資産、という意味です。一方、「戦略的資産」とは、Strategic asset、つまり、積極的かつ戦略的に保有する、地政学的リスクや制裁リスクへの備え、という意味です。

 当該質問は複数選択可であるため、同一の中央銀行が金(ゴールド)を、歴史的資産であり、戦略的資産である、と認識しているケースもあります。

 近年、中央銀行は全体として、金(ゴールド)を「戦略的資産」だと認識する傾向を強めています。「歴史的資産」という認識も根強いですが、それ以上に「戦略的資産」であると認識する中央銀行が増えていることが分かります。

 中央銀行の間で「金(ゴールド)は戦略的資産」、という認識が広がりつつあることは、外貨準備高管理の意思決定に関連するトピックにおいて「地政学的リスク」を選択する中央銀行が増加していることと符合します。

全需要の20%前後が中央銀行の保有増加分

 近年、中央銀行の間で、金(ゴールド)は「歴史的資産」だけではなく、「戦略的資産」という認識が広がっていると、述べました。

 歴史的資産は、言い換えれば「メインの資産の補助として(当たり前のように)持っているもの」ですが、戦略的資産は先述のとおり、何かあった場合に備え、積極的に保有する意味が強い資産です。

 その意味で、中央銀行の間で、金(ゴールド)は、積極的な意図を持って保有する資産、という認識が広がっているといえます。こうした流れを反映してか、図3のとおり、中央銀行全体として、外貨準備高に占める金(ゴールド)の割合が上昇しています。

図3:中央銀行全体の外貨準備高の構成(2019~2025年の第3四半期)

図3:中央銀行全体の外貨準備高の構成(2019~2025年の第三四半期)
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 2025年は金(ゴールド)の国際価格が大きく上昇した年であったため、大きく割合が上昇しましたが、それ以前の2019年から2024年においても、徐々に割合が上昇していたことを考えれば(戦略的資産と認識する中央銀行の増加が続いてきた可能性あり)、同割合の大幅上昇が金(ゴールド)の価格上昇だけが原因ではないと考えられます。

 また、価格上昇自体が、「戦略的資産」を求める動きを加速させ、割合上昇の一因となった可能性もあります。

 米ドルの構成比が大きく低下する中で、金(ゴールド)の構成比が大きく上昇した様子は、さながら、中央銀行全体の「米ドル離れ・金(ゴールド)寄り」であるといえます。こうした流れは図4の通り、2010年から始まっています。図4は、中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移を示しています。

図4:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移 単位:トン

図4:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移 単位:トン
出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の資料を基に筆者作成

 特に買い越し量が多くなった2022年以降、中央銀行による買い越し量は金(ゴールド)の全需要のおよそ20%に達しています。長期視点で市場に大きな資金を流入・流出させる投資家の例えである「クジラ」という言葉が当てはまります。

 金(ゴールド)市場におけるクジラは、後に述べる金(ゴールド)相場を長期視点で支える大変に重要な存在です。

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