「率」では勝って、「額」では負けるという逆転現象

 先ほどの各手法で積立投資をした場合のシミュレーション結果を見ていきましょう。

図4:図3のシミュレーションの結果比較

図4:図3のシミュレーションの結果比較
※図は積立投資の一例であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない
出所:筆者作成

 一見すると、リターン(率)でバリュー平均法がドルコスト平均法を上回っており、手法として優れているように見えます。しかし、最終的な資産の評価額を比較すると、勝敗は逆転します。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

 その理由は、バリュー平均法の仕組みにあります。この手法は相場が上昇すると、目標とする資産額に合わせるために買い控えや売却を行います。その結果、確かに平均取得単価は下がりますが、そもそもの運用に回す投資元本が少なくなってしまい、手元で待機資金が遊んでしまうのです。

 つまり、バリュー平均法がリターン(率)で勝てるのは、運用に回す資金が抑えられていることが関係しています。結果として、より多くの資金を市場に投じ続けたドルコスト平均法の方が、最終的な資産額を大きく成長させることができたのです。

 バリュー平均法が持つ見かけ上の優位性は、この「待機資金が遊んでしまう」という構造的な課題を棚上げして初めて成り立ちます。いわば「率で勝って、額で負ける」という逆転現象が起こり得るというのが、この手法で留意したい点です。

それでも「続けられる」のはどちらか

 改めてバリュー平均法を整理すると、「安いときに多く、高いときに少なく」を、より強弱をつけて行うことでリターン向上を図る一方、「毎回投資額が変動」「資金投入の心理的ハードル」「ほったらかし・自動化の放棄」「待機資金発生の可能性」といった課題がありました。

 つまりバリュー平均法は理論的には優れているように見えて、長期投資を継続するには一筋縄ではいかない手法といえます。

図5:ドルコスト平均法とバリュー平均法の特徴

図5:ドルコスト平均法とバリュー平均法の特徴
出所:筆者作成

 もちろん、バリュー平均法が劣っているわけではありません。「投資の作業そのものにやりがいを感じる」「相場の変動を積極的に利用して、より高いリターンを追求したい」という意欲的な投資家にとっては、自らの規律を試す面白い手法になり得ます。

 ただし、それはあくまで投資家としての「こだわり」を追求するスタイルであり、多くの人にとっての「標準的な運用」とは異なることを理解しておく必要があります。そして、このことから改めて見えてくるドルコスト平均法の重大な価値は、「誰でも・自動で・淡々と」続けられるという点に集約されます。

 地味な結論ではありますが、長期投資において資産額最大化の源泉は、さえた投資手法ではなく、「途中でやめないこと」にあります。派手な手法を追い求めるよりも、続けられる仕組みを自ら選び、それを守り抜くこと。それこそが、多くの投資家がたどり着いた共通の答えであり、「ドルコスト平均法」が今もなお選ばれるゆえんなのかもしれません。