PGM業界の関係者が集まるロンドン・プラチナ・ウイークが先週開催された。今回の主なテーマは外部要因による不確実性が高まる中でも持ち堪えている価格、リサイクル供給の伸び、データセンター関連のPGM需要の増加、そして市場開拓に向けたさらなる協力体制の必要性など盛りだくさんだった。我々WPICを含む複数の業界団体および企業が最新の需給予測を発表し、それらを総合すると、2026年のプラチナ市場は、平均需要の4%に相当する量が供給不足になる見込みだ。

 プラチナウイークの期間中、ジョンソン・マッセイ(JM)、SFA(オックスフォード)、BASF、そして我々WPICが2025年と2026年の最新需給予測をそれぞれ発表した(図1)。(WPICの数値はメタルズフォーカスがWPICのために独自に作成したもの。)

 2026年の供給は各社ともリサイクル供給の伸びが鉱山生産の減少をカバーできて安定の見通し(図2)。鉱山供給の減産予測はほぼ全社横並びだが、リサイクル供給に関しては、前年比成長率が+1.7%から+13.7%の範囲でばらついた。PGMの大手リサイクル業者であるJMとBASFの成長率予測が異なっている点が興味深い。

 我々は4月16日付の『プラチナ展望』で、高いPGM価格がリサイクル供給を後押ししてはいるものの、運転資金の調達条件の悪化、廃触媒など資材の品位低下などの逆風で、供給の伸びが抑えられている可能性について指摘した。

 さらにイラン戦争が長期化すれば経済成長が鈍化して新車の購入が減り、廃車率も下がるだろう。ちなみに、2022年からのリサイクル供給の成長率は常に予測を下回ってきた(図3)。

図1:ロンドンプラチナウイークの期間中に発表された各社のプラチナ需給予測のまとめ

図1:ロンドンプラチナウィークの期間中に発表された各社のプラチナ需給予測のまとめ 
出典:メタルズフォーカス、BASF、ジョンソン・マッセイ、SFA(オックスフォード)、WPIC*取引所在庫の変化は除外**投資需要は全て除外
†総需要の平均は自動車需要、宝飾品需要、工業需要、投資需要の平均を合算したものではなく、各社それぞれの総需要の平均

  需要に目を向けると、2026年のプラチナ需要は主に投資需要の減少のため、前年比で平均7%下がる予測だ(図5)。既に4月2日付の『プラチナ展望』で指摘した通り、中東はPGM市場の直接的な市場ではないもののイラン戦争はプラチナ投資需要にはマイナスだ。

 ホルムズ海峡の通航制限でインフレ予測、金利上昇予測となり、金利を生まない貴金属は不利を被る。プラチナETF保有高は2月末以来、10.3トン(10%)減った。2026年のその他のプラチナ需要も、宝飾品需要(前年比-8%)、自動車需要(-4%)、工業需要(-1%)と全てマイナス予測だ、宝飾品需要の減少は、2026年5月のプラチナ価格の月平均価格が前年の5月と比べて97%も上昇したことが背景にある。

 イラン戦争の長期化による一定の需要リスクがある中でも、上記各社の2026年のプラチナ市場は年間平均8.9トンの供給不足になる予測。この不足幅は2025年より少ないが、地上在庫による穴埋めは必須だ。

 我々は、4年連続の供給不足で地上在庫は65%減る(図7)と推定している。この地上在庫の枯渇に加えて、重要鉱物をめぐる国家間の競争による地政学リスク、現物資産を求める投資家の動きなどがプラチナ投資の魅力を高める背景になるだろう。

2026年のプラチナ市場の供給不足は平均8.9トン
投資資金の流出とイラン戦争による不確実な環境にあっても、プラチナの鉱山生産に限度があることから、プラチナ市場は引き続き逼迫が続くだろう。

投資資産としてのプラチナを支える背景:

-WPICのリサーチによるとプラチナ市場は2023年から供給不足が続く。2026年の不足は縮小する予測だが、逼迫している現況は改善されないだろう。
-プラチナの鉱山生産は確実に減産、リサイクルはそれほどではないが供給全体はそれでも伸び悩み。
-プラチナのエンドユーザーは多方面に及ぶため、需要は長期にわたってあり、外的な出来事(イラン戦争)や構造的な変化(ドライブトレインの電動化)がもたらす需要リスクを緩和できる。
-リースレートの上昇とロンドン先物市場のバックワーデーションがタイトな市場を反映している。
-プラチナの価格はゴールドより大幅に低いまま。

図2:2026年のプラチナ総供給は平均して安定する予測

図2:2026年のプラチナ総供給は平均して安定する予測 
出典:メタルズフォーカス、ジョンソン・マッセイ、SFA(オックスフォード)、BASF、WPICリサーチ

図3:最近のプラチナリサイクル供給は予想を下回ってきた

図3:最近のプラチナリサイクル供給は予想を下回ってきた
出典:メタルズフォーカス、WPICリサーチ

図4:2026年のプラチナ総需要は平均で前年比7%減

図4:2026年のプラチナ総需要は平均で前年比7%減
出典:メタルズフォーカス、ジョンソン・マッセイ、SFA(オックスフォード)、BASF、WPICリサーチ

図5:プラチナ投資需要の減少が2026年のプラチナ需要減少の最大要因

図5:プラチナ投資需要の減少が2026年のプラチナ需要減少の最大要因
出典:メタルズフォーカス、ジョンソン・マッセイ、SFA(オックスフォード)、BASF、WPICリサーチ

図6:2026年2月28日のイラン戦争開始以来、プラチナETF保有高は10%減少

図6:2026年2月28日のイラン戦争開始以来、プラチナ ETF 保有高は10%減少
出典:ブルームバーグ、WPIC予測

図7:プラチナ市場の4年連続の供給不足で、地上在庫は2022年から2026年の間に66%減る予測

図7:プラチナ市場の4年連続の供給不足で、地上在庫は   2022年から2026年の間に66%減る予測
出典:メタルズフォーカス、WPICリサーチ

免責条項:当出版物は一般的なもので、唯一の目的は知識を提供することである。当出版物の発行者、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシルは、世界の主要なプラチナ生産会社によってプラチナ投資需要発展のために設立されたものである。その使命は、それによって行動を起こすことができるような見識と投資家向けの商品開発を通じて現物プラチナに対する投資需要を喚起すること、プラチナ投資家の判断材料となりうる信頼性の高い情報を提供すること、そして金融機関と市場参加者らと協力して投資家が必要とする商品や情報ルートを提供することである。

 当出版物は有価証券の売買を提案または勧誘するものではなく、またそのような提案または勧誘とみなされるべきものでもない。当出版物によって、出版者はそれが明示されているか示唆されているかにかかわらず、有価証券あるいは商品取引の注文を発注、手配、助言、仲介、奨励する意図はない。当出版物は税務、法務、投資に関する助言を提案する意図はなく、当出版物のいかなる部分も投資商品及び有価証券の購入及び売却、投資戦略あるいは取引を推薦するものとみなされるべきでない。発行者はブローカー・ディーラーでも、また2000年金融サービス市場法、Senior Managers and Certification Regime及び金融行動監視機構を含むアメリカ合衆国及びイギリス連邦の法律に登録された投資アドバイザーでもなく、及びそのようなものと称していることもない。

 当出版物は特定の投資家を対象とした、あるいは特定の投資家のための専有的な投資アドバイスではなく、またそのようなものとみなされるべきではない。どのような投資も専門の投資アドバイザーに助言を求めた上でなされるべきである。いかなる投資、投資戦略、あるいは関連した取引もそれが適切であるかどうかの判断は個人の投資目的、経済的環境、及びリスク許容度に基づいて個々人の責任でなされるべきである。具体的なビジネス、法務、税務上の状況に関してはビジネス、法務、税務及び会計アドバイザーに助言を求めるべきである。

 当出版物は信頼できる情報に基づいているが、出版者が情報の正確性及び完全性を保証するものではない。当出版物は業界の継続的な成長予測に関する供述を含む、将来の予測に言及している。出版者は当出版物に含まれる、過去の情報以外の全ての予測は、実際の結果に影響を与えうるリスクと不確定要素を伴うことを認識しているが、出版者は、当出版物の情報に起因して生じるいかなる損失あるいは損害に関して、一切の責任を負わないものとする。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシルのロゴ、商標、及びトレードマークは全てワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシルに帰属する。当出版物に掲載されているその他の商標はそれぞれの商標登録者に帰属する。発行者は明記されていない限り商標登録者とは一切提携、連結、関連しておらず、また明記されていない限り商標登録者から支援や承認を受けていることはなく、また商標登録者によって設立されたものではない発行者によって非当事者商標に対するいかなる権利の請求も行われない。

WPICのリサーチと第2次金融商品市場指令(MiFID II)

 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(以下WPIC)は第2次金融商品市場指令に対応するために出版物と提供するサービスに関して内部及び外部による再調査を行った。その結果として、我々のリサーチサービスの利用者とそのコンプライアンス部及び法務部に対して以下の報告を行う

 WPICのリサーチは明確にMinor Non-Monetary Benefit Categoryに分類され、全ての資産運用マネジャーに、引き続き無料で提供することができる。またWPICリサーチは全ての投資組織で共有することができる。

1.WPICはいかなる金融商品取引をも行わない。WPICはマーケットメイク取引、セールストレード、トレーディング、有価証券に関わるディーリングを一切行わない。(勧誘することもない。)

2.WPIC出版物の内容は様々な手段を通じてあらゆる個人・団体に広く配布される。したがって第2次金融商品市場指令(欧州証券市場監督機構・金融行動監視機構・金融市場庁)において、Minor Non-Monetary Benefit Categoryに分類される。WPICのリサーチはWPICのウェブサイトより無料で取得することができる。WPICのリサーチを掲載する環境へのアクセスにはいかなる承認取得も必要ない。

3.WPICは、我々のリサーチサービスの利用者からいかなる金銭的報酬も受けることはなく、要求することもない。WPICは機関投資家に対して、我々の無償のコンテンツを使うことに対していかなる金銭的報酬をも要求しないことを明確にしている。

 さらに詳細な情報はWPICのウェブサイトを参照。

 当和訳は英語原文を翻訳したもので、和訳はあくまでも便宜的なものとして提供されている。英語原文と和訳に矛盾がある場合、英語原文が優先する。