イラン和平協議の難航と原油高を背景にドル円は膠着(こうちゃく)が続いています。6月は日米欧の中銀会合が重なる「中銀ウイーク」を控え、各国の金融政策が相場の転換点となる可能性があります。和平協議の行方を見つつ、利上げが決定し160円を突破する原動力になるのかに注目です。
和平協議膠着で円安。159円台の狭い展開に
157円近辺で始まった5月のドル円相場は、4月末から5月の連休にかけての介入効果や介入観測で一時155円近辺まで円高に行きましたが、中東情勢緊迫化による原油高と金利高を背景にすぐに157円台の円安に戻りました。
しかし、介入警戒心もあって、5月前半は158円台が重たく推移していました。ところが、5月14~15日の米中首脳会談で期待されていたイラン紛争が終結に向かうような動きは見られなかったため、イラン紛争長期化・原油高長期化懸念が高まり、ドル円は158円を突破し、159円台の円安となりました。
和平協議合意を楽観視し、日米株とも高値を更新していますが、ドル円は、原油価格が下がったとはいえ、高止まりしていることや中東情勢の先行きの不透明感から、5月後半は159円を挟んだ値幅の狭い展開が続きました。
介入警戒感で上値は重く、下値は、原油価格の高止まりによるインフレ警戒から米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派姿勢に転じつつある動きによって底堅くなってきていますが、一日の値幅は狭く、5月15日以降の値幅は約60銭以下の動きとなっています。
6月に入っても、水面下での交渉が続いているようですが、和平協議合意の先行きは依然不透明な状況です。そのような状況下、イスラエルがレバノンを攻撃したため、イラン側は協議を中断すると表明しました。
すぐにトランプ米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談で、激怒して攻撃の抑制を働きかけましたが、イランとの交渉を継続できるかどうかは不透明な状況です。
イラン側はレバノンでの戦闘が続く限り米と協議しないと主張している一方で、イスラエルはヒズボラによる攻撃が止まらなければベイルート攻撃の方針は変わらないと表明しています。トランプ大統領は、米メディアに対し、今後1週間で合意する可能性があると主張しましたが、具体的な根拠は示しませんでした。
報道によると、戦闘終結に向けて暫定合意した覚書について、両国が60日間停戦を延長した上で、濃縮ウランの処理方法について協議する内容が盛り込まれているとのことですが、トランプ大統領はホルムズ海峡の開放を含めて修正を求めているとのことです。イラン側の回答を待っている状況のようです。
トランプ大統領は合意を目指すために譲歩したとも伝わっていますが、濃縮ウランの取り扱いについてオバマ元大統領が成立させた核合意以上のものを取り決めたいトランプ大統領にとってはハードルが高くなってくるかもしれません。
また、ホルムズ海峡の海上封鎖が解除され、自由航行になっても、船舶が新たに航行するのには船主も船長も船員も慎重になることが予想されます。船員は相当の手当てを出さないと集まらないかもしれません。
中銀ウイーク迫る。6月相場は利上げとイラン情勢の綱引きに?
6月に入っても、このようにイランとの交渉が継続できるかどうか不透明な状況が続いているのであれば、6月も160円の攻防を主戦場として、値幅の乏しい展開が続くかもしれません。
交渉が難航すれば、場合によってはこの60日の間も相場は動意の乏しい展開になるかもしれません。結局、60日の間に6月中旬の中銀ウイーク(※)があるため、6月相場はこのウイークである程度方向感が出ることを期待したいのですが、イラン情勢との綱引きになりそうです。
※欧州中央銀行(ECB)理事会6月10~11日、日本銀行金融政策決定会合6月15~16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)6月16~17日開催
6月中旬の中銀ウイークが近づくにつれて、相場は各国の金融政策に影響を受けることが予想されます。
FRBは、イラン紛争に伴う原油高によるインフレを警戒し、タカ派姿勢に傾きつつあります。年内利下げ見通しが後退し、年内利上げの可能性も浮上してきていますが、6月のFOMCでは利上げなしとの見方が大勢です。しかし、経済・物価見通しでタカ派色を強めるかどうかに注目です。
ECBは、5月28日に公表された4月のECB理事会(据え置き決定)の議事要旨では、複数の参加者の利上げに前向きな発言や、さらにインフレ圧力の高まりを警戒する声も複数挙がっていたことが明らかになったため、6月理事会での利上げはほぼ確実との見方が強まっています。
日米よりも約1週間早く開催されるECB理事会で利上げが決定されれば、利上げによってユーロ円が上昇し、ドル円160円突破の原動力になるのかどうかに注目です。
日銀の6月会合での利上げ予想は8割近くとなっています。植田和男総裁は慎重姿勢との見方もありますが、4月の会合で政策委員9名のうち、3名の審議委員(高田創氏、田村直樹氏、中川順子氏)が利上げを求めて反対し、その後5月の講演で2名の審議委員(増一行氏、小枝淳子氏)が利上げ姿勢に転じました。政策委員9名のうち、5名が利上げ賛成だと利上げは決定されることになります。
しかし、6月に利上げを決定しても、他の中銀がタカ派姿勢に傾いている状況では、6月利上げ後の追加利上げ姿勢を鮮明にしなければ円高進行は鈍くなることが予想されます。
さらに日銀以外の中銀のタカ派色が予想以上に強まれば、ドル円の160円突破も視野に入ってくる可能性があります。介入警戒感があるとはいえ、4月、5月の介入も規模が大きいにもかかわらず(※)、短期間で8割方戻していることから、160円台に乗せても介入のタイミングに当局は慎重になることが予想されます。
※4月28日から5月27日の為替介入総額11兆7,349億円。円安局面での介入金額は過去最大。実施日や日次の介入金額は四半期ごとに公表。4~6月の実績は8月上旬に開示予定
162円が突破され、160円超の相場レンジに入れば、1985年9月のプラザ合意以降の動きでは200円まで大きな節目がないため、再びプラザ合意直後の水準に戻る絵を期待する投機家も増えてくるかもしれません。
当局もこのことを理解しているものと思われ、背水の陣で臨む可能性があります。しかし、円安けん制の語気を一段と強めても、実弾も限られていることから市場に見透かされないような対応はかなり難しくなってくることが予想されます。
一方で、日経平均株価が連日高値を更新しており、今年に入って欧米の株価よりも抜きん出ていることから、海外投資家の日本株投資も活発になってきています。
ドル建てで日本株を見ると、160円近辺の円安は、絶好の日本株投資のタイミングと捉える海外投資家が増えてくるかもしれません。政府の為替介入の援軍になる可能性もあり、160円を超えても円安スピードが鈍くなるシナリオも想定できます。日銀の利上げによって、株が下押しした時にそのような日本株買いが出てくるのかどうか注目です。
ドル円の膠着続く。6月相場のドル円は160円台が主戦場?
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