なぜ、シリコン・サイクルが起こるか?

 半導体産業は成長産業なのになぜ、ブームと不況を繰り返すのでしょうか? 原因をひとことで言えば、「過剰投資」です。最先端の半導体を誰よりも早く量産しようと多くのメーカーが競って投資し、一斉に量産に成功する時、一時的に供給過剰が起こって半導体価格が急落して半導体不況が起こります。

 それでも、長期的に需要は増え続けるので、いずれまた半導体ブームになります。ところが、その次世代の半導体の量産競争をめぐって過剰投資があると、いずれ次の半導体不況が起こります。その繰り返しが、シリコン・サイクルです。それを、かつて半導体産業の中核を占めていた「半導体メモリ」を例にとって説明します。

 1980年代の半導体の用途は、PC向けがほとんどでした。PCの頭脳となるCPU(MPU)と、データを記憶保持するDRAMやフラッシュメモリという半導体メモリが重要な役割を果たしていました。

 CPUでは米国のインテル(INTC)が圧倒的に強く、独壇場でしたが、半導体メモリでは、東芝、日立製作所(6501)、NEC(日本電気:6701)など日本メーカーが激しい競争を繰り広げていました。その激しい競争が、シリコン・サイクルをつくりました。

 CPUもDRAMも、3~4年ごとに世代交代してきました。新世代になるたびに、PCの性能が拡大し、新たな需要を掘り起こしてきました。

 DRAMは世代交代するたびに、能力が4倍に拡大していきました。世代交代するたびに、トップメーカーが入れ替わることもありました。誰もがトップメーカーになろうとして競争するために、供給不足と供給過剰を繰り返すことになりました。

 新世代DRAMは、開発当初、旧世代品の4倍以上の値段がつきます。どのメーカーも、価格の高いDRAMを誰よりも早く量産したいと思いますが、技術的に難しく、歩留まり(良品比率)がなかなか上がりません。

 そのうちに、1社が量産に成功すると、その会社は値段の高いDRAMを大量に生産して、ばく大な利益を上げます。そのうち他社も歩留まりが上がり始めます。そうなると、新世代DRAMの価格は急速に下がり始めます。量産に遅れた会社は、価格が大幅に下がってからの販売になるので、開発にかかったコストをほとんど回収できなくなります。

 このように世代交代を繰り返すたびに、誰がトップになるかを巡って熾烈(しれつ)な競争が行われます。誰もが新世代でトップになろうとして過剰な投資を行います。各社の歩留まりが低いうちは、半導体の価格が高いのでブームが続きますが、各社の歩留まりが一斉に上昇した時に半導体は供給過剰となり、価格が急落します。そこで、半導体産業は、不況に転落します。

 以上が、1980年代以降のシリコン・サイクルの仕組みです。今は、半導体の種類も用途も格段に広がり、半導体メモリは、半導体産業の中心ではなくなりました。好不況の波がない、安定成長する半導体分野も増え、かつてほど激しい山谷はなくなりました。

 そうした環境変化を受けて、「半導体スーパーサイクル説」(半導体産業はもはや不況に陥ることなく永続的に成長していく産業になった、という説)が時々出てきます。

 それでもシリコン・サイクルはなくなりません。今でも、最先端の半導体で、供給不足と供給過剰の波は、どうしても起こります。

半導体株をここからまだ買って良いか?

 急騰した半導体関連株を追いかけて買うべきではないですが、出遅れの半導体材料株などには投資妙味があると思います。

【1】急騰する半導体関連株を追いかけて買うべきではない

 過去の経験則では、半導体ブームの時に、急騰する半導体関連株を追いかけて買うと、次の半導体不況が始まる前の急落で痛い目に遭います。ブームの時は、いつまでもブームが続くと思えますが、いつか半導体が供給過剰になって値が下がる時は来ます。シリコン・サイクルはなくなりません。

【2】出遅れの半導体材料や関連する電子部品株などに投資妙味

 今回の半導体ブームは、人類がかつて経験したことのない程の大ブームです。AIデータセンターへの巨額の投資が継続するうちは、ブームが続くと考えられます。半導体材料や関連する電子部品など、幅広い分野にブームの恩恵が出ています。

 出遅れの電子材料・電子部品には、ここから上昇が加速するものもあると思われます。出遅れの半導体関連株への投資はまだ続けて良いと思います。

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