世界人口の変化とインフレの長期化

 世界の人口動態の「二極化」が、コモディティ価格を長期的に高止まりさせる要因になり得ることを述べました。実際には、このことは足元で発生している長期視点の物価高(インフレ)を強め、定着させる要因にもなり得ると言えます。

 図5は、現在発生している長期視点のインフレの構図を示したイメージです。

図5:現在発生している長期視点の物価高(インフレ)のイメージ

図5:現在発生している長期視点の物価高(インフレ)のイメージ
出所:筆者作成

 現在発生しているインフレは、新製品の開発や生活習慣の変化、政策をきっかけとした需要喚起、景気回復ムード、インバウンド需要の増加などを背景としたディマンドプルインフレ(需要増加をきっかけとしたインフレ)だけで説明することはできません。

 現在発生しているインフレの背景には、新興国における需要増加に加え、世界的な秩序の揺らぎをきっかけとして発生する資源の武器利用(出し渋り)の横行、そして主要中央銀行による大規模な資金供給(バラマキ)の継続があります。

 こうした要因によってエネルギーや食料、金属などの原材料価格が押し上げられ、その結果として発生する長期視点のコストプッシュインフレ(原材料価格の上昇をきっかけとしたインフレ)が、現在のインフレの主体になっていると考えられます。

 図6のとおり、主要なコモディティ価格は2010年ごろ以降、さまざまな世界情勢の変化を受けて全体的に「底上げ」されてきました。今後、人口動態の二極化が進めば、この底上げ傾向が強化される可能性があります。

図6:主要なコモディティ価格の推移(月足)

図6:主要なコモディティ価格の推移(月足)
出所:世界銀行のデータをもとに筆者作成

 人口増加が続く新興国では、エネルギー、食料、金属などの需要が増加し続けることが予想されます。一方、人口の頭打ちや減少が進む先進国では、世界経済や国際社会における影響力が相対的に低下し、世界の秩序が乱れる可能性があります。

 こうした変化は、資源国による資源の武器利用(出し渋り)を助長する要因になり得ます。また、主要中央銀行による資金供給(バラマキ)が長期化する一因となる可能性もあります。

 現在、多くの消費国は粘着性のあるインフレを鎮静化させたいと考えています。しかし、人口動態の二極化が進み、新興国の需要増加と資源の武器利用(出し渋り)が同時進行すれば、コモディティ価格の高止まりが続き、コストプッシュインフレの鎮静化は容易ではなくなるでしょう。

 世界の人口動態の二極化は、単なる人口問題ではありません。コモディティ市場を通じて物価動向に影響を与え、長期的なインフレ圧力を強める要因になり得るのです。

人口見通しが示す金(ゴールド)高の土台

 国連は世界人口予測(World Population Prospects、WPP)を2~3年に一度公表しています。図7は、2019年版、2022年版、2024年版の世界人口予測を比較したものです。

図7:世界の人口推計・見通し(国連のデータ) 単位:10億人

図7:世界の人口推計・見通し(国連のデータ) 単位:10億人
出所:国連のデータをもとに筆者作成

 2019年版の予測では、世界人口は予測期間の最終年である2100年まで増加し続けるとされていました。

 一方、推計方法を見直し、5歳単位から1歳単位へと変更した2022年版および2024年版では、世界人口は2080年代半ばにピークを迎え、その後は緩やかに減少するとされています。

 人口がピークを迎える時期と人口の水準を見ると、2022年版では2086年に約104億人、2024年版では2084年に約102億人となっています。世界人口は従来考えられていたほど増加しない可能性があるとの見方が、近年の予測に織り込まれ始めたと言えるでしょう。なお、次回の世界人口予測は2027年7月11日(世界人口デー)に公表される予定です。

 人口は経済活動の源泉であり、消費者でもあります。そのため、世界人口の増加ペースが鈍化し、人口減少の時期が前倒しになれば、世界経済の成長余地が縮小する可能性があります。

 世界経済の成長期待が低下すれば、国際社会の分断や対立が深まり、政治・経済の不安定化につながる可能性があります。

 こうした流れが強まった場合、図8で示した「世界民主主義の後退」「分断の深化」「資源の武器利用の横行」「長期視点のインフレ」「実態なき株高への不安」などの『非伝統的な有事』が、それまで以上に拡大する懸念があります。

図8:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ

図8:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ
出所:筆者作成

 非伝統的な有事は、金(ゴールド)相場を超長期視点で支える重要な土台になり得るテーマです。

 世界人口のピーク到来が従来想定よりも早まる可能性が示されたことは、今後およそ半世紀にわたり、世界経済や国際社会を取り巻く環境が大きく変化する可能性があることを示唆しています。

 そして、その変化は非伝統的な有事を拡大させる方向に作用し、結果として金(ゴールド)相場を長期的に支える要因になると考えられます。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

純金積立

純金積立・スポット購入

投資信託

三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)

中期:関連ETF

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:商品先物

国内商品先物
海外商品先物

短期:CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム