旺盛なAI需要は続くか?
「株価上昇の勢いはバブルっぽいけど、ファンダメンタルズの裏付けや期待があるうちは大丈夫」というのがFEMOですが、では、このFEMOの源泉であるAIへの旺盛な需要は今後も継続するのでしょうか?
「エージェントAI」や「エッジAI」、「フィジカルAI」といったキーワードを軸に、AI相場の「ストーリー」が鮮明化してきたことは先ほども述べた通りですが、実はこれがポイントになります。
これまでの生成AIの中心だったのは、人間が指示(プロンプト)を入力し、その指示に対してAIがテキストや画像を生成するという、いわば「受動的・対話型」のAIでしたが、現在の株式市場の視線は、さらに次のステージに向かっていると思われます。
その代表例が「エージェントAI」です。エージェントAIの特徴は、人間の細かい指示を待つことなく、「AI自らが現状の課題を分析し、自律的に計画を立て、適切な外部ツールやアプリケーション、データベースと連携しながら、一連の複雑な作業を完結させる」という高い自律性(Autonomy)にあります。
例えば、これまでは人間が「この条件で出張のフライトとホテルを探して」、「メールの返信案を作って」と個別に指示していたのが、エージェントAIの時代になると、簡単な指示と目的をAIに伝えるだけで、AIが自律的に社内システムやWebブラウザを操作し、全ての作業を人間の手を通さずに完結させることが可能になり、AIの役割は「作業の補助ツール」から、自ら思考して業務を遂行する「デジタルな代替労働力(デジタルワーカー)」へと高度化していきます。
こうしたエージェントAIが進展し、利用が爆発的に普及していくのであれば、これまでとは次元の異なるデータを処理する必要が出てきます。米金融大手のゴールドマン・サックスが示した予測によれば、2026年から2030年にかけて、AIが処理する文字・データの単位である「トークン」の消費量が24倍に跳ね上がるとされています。
さらに、「フィジカルAI」、すなわちAIがロボティクスや自動運転、スマートファクトリーといった「物理世界(現実の肉体や機械)」と融合するトレンドも同時並行で進んでいます。自動運転車の走行データや、人型ロボットが工場内で作業を最適化するためのデータなど、現実世界から吸い上げられ、処理されるデータも拡大していくことが見込まれます。
従って、これらを処理するためのデータセンターの増設、超高速通信網の整備、そしてそれらを駆動するための「電力インフラ」への需要はまだまだ増える見込みとなり、これらを勘案すると、半導体をはじめとするAIサプライチェーンへの旺盛な需要は、今後数年間にわたって続くトレンドになる可能性があります。
注意しておきたいポイント
これまで見てきたことを踏まえると、日米の株式市場は「FEMO」に支えられた強気相場が続きそうですが、注意したい点もあります。
具体的には、以下について警戒しておく必要がありそうです。
【1. エージェントAI特有の「セキュリティと信頼性」のリスク】
あらゆる権限を自律的に実行できるエージェントAIの普及は、裏を返せば「企業の機密情報や個人の資産にアクセス・操作できる権限を、全面的にAIに委ねる」ことを意味します。
これが深刻な脆弱(ぜいじゃく)性となり、サイバー攻撃者がAIのシステムを乗っ取った場合、人間の関知しないところで「不正送金」や「大規模な顧客情報の漏洩」が自動的かつ一瞬にして実行されるリスクが懸念されています。
また、AIが事実とは異なるもっともらしいうそを出力する「ハルシネーション(幻覚)」の問題も完全には解決していません。エージェントAIが誤った情報をベースに自律的に判断し、実際のビジネス取引や法的文書の契約を完了させてしまった場合、その損害賠償や社会的信用の失墜は計り知れません。
いかにミスを極小化できるか、万が一の暴走を止める「安全確保の仕組み」をシステム内に構築できるかが今後の企業の死活問題となります。こうしたトラブルが多発し、社会問題化する状況となった場合、関連銘柄の株価に急ブレーキがかかる可能性があります。
【2. 社会的「ゲームチェンジ」に伴う法規制とコスト】
エージェントAIによる「労働力の代替」が急速に進めば、ホワイトカラーを中心に雇用流動化の波が押し寄せ、社会的な反発や摩擦を生む恐れがあるほか、AIが生成したアウトプットの著作権問題や、AIの不祥事における責任の所在(開発者なのか、利用者なのか)など、社会の枠組みを維持するための法整備が世界各国で進められることになると考えられます。
また、現在はAI相場の新たなストーリーが始まったばかりで、企業間の競争はますます激化することになり、勝ち組と負け組に分けられることになるほか、すでに巨額の投資をしている企業がどこまで資金を投じ続けることができるか、そして、安全性を担保するためのコンプライアンスコストの増大なども企業の利益率を圧迫する要因になり得ます。
【3. 根強いインフレ警戒】
また、金利の動向にも注意が必要です。足元では中東情勢の収束期待で金利が低下していますが、米10年債利回りの水準は4.4%台とあまり下がっておらず、インフレが「再燃」するリスクはいまだにくすぶっています。
米国とイランとの和平および停戦が成立しても、正常化までに思っていたよりも時間が掛かってしまうことも考えられるほか、これまで見てきた旺盛なAI需要についても、「メムフレーション(Memflation:半導体メモリとインフレーションを組み合わせた造語)」という言葉があるように、需要の急拡大でDRAMやNANDといったメモリの価格が急騰し、製品の価格に反映されるなど、物価上昇に寄与している面があります。
さらに、世界気象機関(WMO)が「今年はエルニーニョ現象が高確率で発生する」と発表しており、農作物に影響が出てしまう可能性についても要注意です。
ここまで見てきたことを踏まえると、日米の株式市場はAI投資需要を背景とした「FEMO」に支えられた強気の見方が優勢で、今後も上値を追う場面がありそうですが、懸念点も少なからずあるため、「正しく恐れながら」相場に臨むことが求められることになりそうです。




















































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