中東情勢の改善期待とAI相場の加速で、市場は上目線の展開が続いています。足元の株高は、「乗り遅れへの恐怖(FOMO)」ではなく、旺盛な需要と業績成長に裏付けられた「素晴らしき収益モメンタム(FEMO)」相場としての側面もありそうです。とりわけエージェントAIやフィジカルAIが、半導体やインフラへの長期的な需要を支える見通しです。
「上方向」への目線が続く日米株式市場
5月の最終週を迎えた今週の株式市場ですが、これまでのところ、相場の地合いは「上方向への目線」を強めている印象です。
<図1>国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年5月28日時点)
※欧米市場は5月27日時点
図1は、昨年(2025年末)を100とした国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較の推移を示していますが、上値を伸ばせていないものの、日経平均株価は6万5,000円台まで株価水準を切り上げてきたほか、東証株価指数(TOPIX)も25日(月)の取引で終値ベースの最高値を更新しています。
また、米国株市場でも27日(水)の取引で主要株価3指数(ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数)がそろって最高値を更新しています。
中国株(上海総合指数や香港ハンセン指数)とインド株(SENSEX指数)がさえない動きとなっているのがちょっと気になりますが、日米の株式市場については、「高値圏にありながらも、さらなる上値を追えそう」な相場地合いを維持しているといえそうです。
こうした日米株高の背景には、「中東情勢の改善期待」と、「AI相場の加速」という二つの存在が透けて見えます。
まず、前者については、米国とイランの停戦および和平交渉に向けた期待が高まり、高止まりしていた原油価格をはじめとするコモディティ価格が下落へ転じ、これに呼応する形で、米国を中心とする主要国の長期金利(債券利回り)が低下基調にシフトしました。
前回のレポートでは、金利の上昇が株式市場にとってネガティブに働きやすいことを解説しましたが、足元では金利上昇が一服したことが、株式市場の追い風となりました。
▼前回のレポート
2026年5月22日:いまさら聞けないPER低下と金利上昇との関係(土信田雅之)
また、後者については、先日で一巡した日米の決算シーズンを経て、あらためてAI投資への旺盛な需要が確認されたことや、「エージェントAI」や「エッジAI」、「フィジカルAI」といったキーワードを軸にした、AI相場の「ストーリー」が鮮明になってきました。これによって、まだまだAI投資への需要が継続していくという見方が強まっています。
<図2>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年5月27日時点)
実際に、図2を見ても分かるように、半導体関連銘柄で構成される米SOX指数がさらに上昇していることや、金利や景気の影響を受けやすいとされる中小型銘柄で構成されるラッセル2000のパフォーマンスも復調していることが確認できます。
相場は「FOMO」から「FEMO」へ?
一般的に、長期にわたる株価上昇の終盤戦においては、「FOMO(Fear Of Missing Out:株高に乗り遅れる恐怖)」と呼ばれる投資行動が目立ち始めます。
<図3>相場のムードから見た上昇トレンドの波とポイント
FOMOとは、合理的な企業価値の評価(ファンダメンタルズ)以上に株価が上昇し、相場の過熱感や割高感がありながらも、「乗り遅れると取り残されるから」という心理的な焦りから、高値圏でも追随して買いが入る状況です。そして、市場の楽観がピークに達した時に相場は天井をつけて急速な調整へと向かうのが通常のパターンです。
確かに、図2の米SOX指数の動きを見ても分かるように、株式市場が急ピッチな株価上昇を演じているため、足元の相場が「FOMO」の状況になっているようにも思えますが、実際には、相場をけん引している銘柄は、売り上げや収益見通しの大幅増加が見込まれているものが多く、株価収益率(PER)もあまり上昇していません。
そのため、市場の一部では「FOMO」ならぬ、「FEMO(Fabulous Earnings Momentum:素晴らしき収益モメンタム)」相場という新たな造語も登場しています。
確かに、株価は急ピッチで上昇しており、空売り勢への踏み上げや、レバレッジ、楽観的な見通しなどの影響を警戒する必要はありますが、同時にAI相場のストーリーが強化されることによって、「需要拡大と業績成長を伴った株価上昇は継続できる」というのがFEMOの考え方です。
株式市場は「FOMO」から「FEMO」へ、AIの旺盛な需要は継続するか?(土信田雅之)
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