現在のエヌビディアの株価には、市場から過剰な期待が織り込まれている。サプライチェーンの供給制約や巨額のAI投資に対するセンチメントの浮き沈みによって、株価のボラティリティが激しくなる局面があるだろう。ただしエヌビディアがCPUでも覇権を握ることになれば、コンピューティングの新たなプラットフォームが誕生することになる。
株主還元を強化、新たな投資家層を呼び込むきっかけになるのか?
米半導体大手のエヌビディア(NVDA)は20日、2027年度第1四半期(2026年2-4月)の決算を発表した。売上高は816億1,500万ドル(前年同期比85%増)、純利益は583億2,100万ドル(前年同期比3.1倍)といずれも市場予想を上回り、14四半期連続の前期比成長を記録した。
マイクロソフト(MSFT)やメタ・プラットフォームズ(META)といったハイパースケーラーによる人工知能(AI)インフラ投資の勢いは衰える兆しを今のところ見せておらず、データセンター向け売上高は一年前に比べ92%増とほぼ倍増した。
エヌビディア(日足)
エヌビディア(週足)
エヌビディアの売上高と純利益の推移
既存の計画に残っている390億ドルに加え、新たに800億ドルの自社株買いプログラムを発表した他、四半期配当を従来の1株当たり0.01ドルから0.25ドルへ大幅に増配することも明らかにした。
ばく大なフリーキャッシュフローを原資としたこの措置は、これまで還元が物足りないとされてきたエヌビディアの転換点であり、中長期的な株価の下支えやインカム志向の新たな投資家層を呼び込むきっかけにもなりそうだ。
エヌビディアの粗利益率の推移
粗利益率(売上高総利益率)は74.9%と非常に高い価格決定力を維持していることがうかがえる。
投資家との説明会においてエヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は、「AIネイティブな製品やサービスの採用が転換点を迎えている。ChatGPTの登場以来、(AIは問いに対する正解の具体例を一つだけ提示する)ワンショット推論から推論、そして現在では(問題に対してAIが自律的に判断して実行する)エージェント型へと主流の形態を変化させてきた。AIはもはやあれば便利なものではない。今や、あらゆる業界や役割において生産性を高めるために不可欠なものとなっている」と語った。
売上成長率と営業利益率の合計は140%超え、大企業でありながら高成長を続ける訳
ウォール・ストリート・ジャーナルの5月21日の記事「エヌビディア、5兆ドルでもまだ評価不足」はエヌビディアの株価が今年に入って半導体株全体のパフォーマンスを大きく下回っていることを取り上げ、今回の好調な決算もその流れを変えることはできなかったと報じている。
そしてその要因としてエヌビディアの時価総額が他社に大差をつけて世界トップに立っている中、エヌビディアはもはや輝かしい新星ではないと指摘している。
AIインフラへの旺盛な需要がエヌビディアの業績に反映され始めてから、すでに丸3年が経過しており、投資家の関心はむしろ、インテル(INTC)やマイクロン・テクノロジー(MU)など、投資サイクルの恩恵を受ける銘柄、つまりは「二次的、三次的なAIの受益者」と言えるような企業群に向かっているという。
一方でエヌビディアほど大きな規模を持ちながら、これほど急速な成長を続けている企業は他になく、さらにその成長は加速していると指摘している。エヌビディアは5-7月期の売上高が910億ドルに達すると見込んでおり、その通りになれば前年同期比でほぼ倍増する計算だ。
記事はS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータを引用しつつ、四半期の売上高が500億ドル以上に達する上場企業の成長率は平均して前年比14%程度に過ぎないことを取り上げている。
エヌビディアの売上高成長率と営業利益率の合計は140%超え、パランティアに迫る水準
グラフはデータ解析を手がけるパランティア・テクノロジーズ(PLTR)のHPに公開されている資料で、パランティアが「40%ルール(Rule of 40%)」でどの水準にあるかを示したものである。
SaaS型ビジネスに取り組む企業を評価する基準に、成長の健全性を示す指標として「40%ルール(Rule of 40%)」というものがある。売上成長率と営業利益率の和が40%を超えていると健全であるとして、一つの目安として用いられており、以下の数式で求められる。
前年同期比売上成長率(%)+ 営業利益率(%)≧ 40(%)
過去はSaaS型ビジネスに取り組む企業がプロットされておりパランティア・テクノロジーズの成長率と営業利益率の高さが際立っていたが、直近では時価総額トップ100社との比較に変わっている。エヌビディアもプロットされており、パランティアに次ぐ高い水準にある。
高帯域幅メモリ(HBM)ブームの中、マイクロン・テクノロジー(MU)やSKハイニックスがパランティア・テクノロジーズやエヌビディアを上回っていることに触れておきたい。
AIの推論(インファレンス)市場の急拡大に伴い、GPUだけでなく、インテルやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、アーム・ホールディングス(ARM)などが手がける中央演算処理装置(CPU)の需要も爆発的に増加している。エヌビディアはそれに対応するため、独自のCPUチップ「ベラ(Vera)」を投入する計画だ。
会社側によると今年度のCPU売上高が200億ドル近くに達することが視野に入っているということだ。これは、インテルのデータセンター事業全体が同期間に生み出すと予想される220億ドルに迫る水準だ。
ジェンスン・ファンはエヌビディアのCPUチップ「ベラ」についてエヌビディアがこれまで手がけてこなかった2,000億ドル規模の全く新しい市場を切り開くものだと述べている。インテルやアドバンスト・マイクロ・デバイスがほぼ独占してきたCPUの牙城を崩すことは、これまでのエヌビディアのロードマップには含まれていなかった。
一方で、「エージェント型AI」や「自律型ロボティクス」を動かす際には、GPUの横に超高速に条件分岐やシステム制御をこなす専用CPUの存在が不可欠となっている。ベラはエヌビディアにとっての「第二の戦線」と言えるだろう。
現在のエヌビディアの株価には、市場からの完璧な成長を求める過剰な期待が織り込まれている。サプライチェーンの供給制約や巨額のAI投資に対するセンチメントの浮き沈みによって、株価のボラティリティが激しくなる局面があるだろう。ただしエヌビディアがCPUでも覇権を握ることになれば、コンピューティングの新たなプラットフォームが誕生することになる。
半導体および半導体製造装置関連銘柄のS&P500種指数の時価総額に占める割合が、過去最高の約18%に達し、単一の業種グループとしては最大の比重となった。半導体市場は、「恒久的な高水準の停滞期」に入ったとささやかれている。
SOX指数CFD(日足)
そうした中、エヌビディアはこの2週間で11%以上下落し、時価総額から6,300億ドル以上が吹き飛んだ。エヌビディアに何が起こっているのだろうか?
エヌビディア(1時間足)
歴史は市場が「金利の上昇をしばらく無視できる」ことを示している。突然、無視できなくなるまで。
米10年物国債利回りの40年間のチャートは、同じパターンが何度も繰り返されていることを示している。1987年の株式市場暴落、ドットコム崩壊、2008年の金融危機、2018年と2022年の弱気相場に先立って長期金利が急上昇した。今回は違うのだろうか?
米国10年国債金利の推移と相場のクラッシュ
現在の市場は中央銀行が政府の借金に支配される「財政優位性(フィスカル・ドミナンス)」の局面であり、米・日ともに金利を上げられない。これが、「バブルがまだ延命する理由」だ。
ドイツのワイマール時代のハイパーインフレでは、当初、人々は不満を言うのではなく、株でもうけたお金でシャンパンを開けて喜んでいた。飢餓感は後からやってきた。100年ほど前のドイツで生じたハイパーインフレ(1922~1923年)と現在の資産インフレには、「紙幣の増刷」という大きな共通点がある。
歴史的に見れば、インフレ不況が起こりにくいのは、消費者物価が上昇する前に資産価格が上昇するからだ。富裕層は株が高騰し、住宅価格が高騰したため、消費を続けている。こうした経済は終わりの予感を感じにくい。インフレによる不況の到来は見えにくいのである。
エヌビディアはCPUでも覇権を握ることができるのか!?
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