政府が3月24日に石油備蓄の第1弾放出を発表してから約2カ月。3月末に233日分あった日本の石油備蓄は、5月22日現在、202日(国家備蓄112日、民間備蓄89日)まで減少しています。日本に向かうタンカーの原油積載量から試算した原油調達は通常の5割程度。石油備蓄日数は今後さらに減少し、物価上昇圧力は高まると予想されます。
石油備蓄の現状
政府が3月24日に石油備蓄の第1弾放出(約1カ月分、850万キロリットル(kl))を発表してから約2カ月。4月24日の第2弾放出(約20日分、580万kl)を経て、3月末に233日分あった石油備蓄は、現在、202日分(5月22日現在、国家備蓄112日、民間備蓄89日)まで減少しています(図表1)。
<図表1 日本の石油備蓄量>
減少の主因はもちろん国家備蓄です。4月3日まで146日分だった国家備蓄は、これまでに34日分減少し、現在、112日分となっています。第1弾と第2弾を合わせ計70日分の国家備蓄が放出される予定ですので、これまでにその約半分が放出され、今後さらに半分が放出されることになります。
この結果、7月には国家備蓄が約80日分となり、民間備蓄と合わせた備蓄日数は約170日まで減少する見通しです。この7月の水準は、先週のレポート(「原油調達不安の深刻度と物価と利上げ~石油備蓄量の試算から考える」)で紹介した試算と整合的です(図表2)。
2026年5月20日:原油調達不安の深刻度と物価と利上げ~石油備蓄量の試算から考える(愛宕伸康)
<図表2 石油備蓄量の先行き試算結果>
日本向けタンカーから見た原油調達、通常の5割ペース
7月より先については、先週のレポートで、原油調達が通常の7割のケース(1)、5割のケース(2)、3割のケース(3)という三つのパターンを想定して試算したわけですが、現在、日本に向かっているタンカーの原油積載量からすると、ケース(2)の想定が比較的近いことが分かります。
図表3は、5月26日現在、日本に向かっているタンカーの積載量の合計値(図表3の②)と、国内需要を賄うために必要な原油調達量を比較した表になります(この分析は、楽天証券経済研究所のグローバルアナリスト、西勇太郎のサポートを得ました)。
具体的には、原油消費量を大ざっぱに日当たり300万バレルと仮定し、現在日本に向かっているタンカーの積み地からの航海日数の加重平均値(図表3の①)をそれに乗じて、原油消費を賄うために必要な輸入量を割り出します。
それが図表3にある③の9,000万バレルですが、これに対し現在日本に向かっているタンカーの原油積載量が計4,563万バレル(図表3の②)ですので、日本の原油消費量を賄うために必要な原油量の5割程度しか調達できていないことを示しています。
<図表3 日本に向かっているタンカーの原油積載量(5月26日時点)>
日本に向かっているタンカーの隻数は3月に比べ増えているのは事実ですが、それでも通常の原油消費を賄うのに必要な量の5割程度しか満たしておらず、図表2に示した試算でいえば、5割調達を前提としたケース(2)に近いイメージとなります。そうした客観的事実を冷静に踏まえた上で、必要な対応策を前広にとって行く必要があるでしょう。
4月の全国CPI(生鮮食品除く)は前年比1.4%、ガソリン補助金などなければ2.8%~
こうした原油需給のひっ迫は物価押し上げにつながります。これも先週のレポートで指摘したことですが、すでにわが国の川上物価である輸入物価と川中物価である国内企業物価には原油相場高騰の影響が明確に表れています。4月の輸入物価(円ベース)は前年比17.5%まで跳ね上がり、国内企業物価も同4.9%と3月から2%ポイント上振れました。
先週22日には川下物価である全国消費者物価指数の4月の結果も発表となり、生鮮食品除く総合指数は前年比1.4%と、3月の1.8%から伸び率を縮小させました(図表4)。このように、川上、川中物価とはかなり違った様相を呈していますが、これはガソリン補助金などの物価高対策や高校授業料無償化の影響が背景にあります。
<図表4 全国消費者物価指数の前年比>
出所:総務省、楽天証券経済研究所作成
ガソリン補助金などの物価高対策の影響は4月の全体の伸びに対する寄与度で約1.3%ポイントあり、それがなければ「エネルギー」の前年比はマイナス3.9%ではなくプラス12.6%、生鮮食品除く総合指数の前年比は1.4%ではなく2.8%だった計算になります。加えて、高校授業料無償化の影響まで除くと前年比は3.0%になっていたかもしれません。
物価上振れが消費マインド押し下げに~景気ウォッチャー調査が下振れ~
こうした物価上振れはすでに消費マインドに大きな影響を及ぼしています。
5月13日に内閣府が公表した4月の景気ウォッチャー調査を見ると(図表5)、家計動向関連の現状判断DI(季節調整値)が40.5と、3月調査からマイナス1.4ポイントの悪化となりました。イラン情勢が悪化する前の2月調査と比べるとマイナス8.3ポイントの大幅悪化となっています。
<図表5 景気ウォッチャー調査と賃金>
この間、名目賃金は前年比プラス幅を拡大させています。景気ウォッチャー調査は、タクシー運転手や小売店の店員など事業所側の人々を対象とした調査であり、売り上げや収益に左右されやすく、どちらかといえば実質賃金より名目賃金と連動する傾向があります。
しかし、イラン情勢が悪化して以降は、名目賃金が上昇しているにもかかわらずDIが急落しており、原材料高といったコストプッシュが企業収益を圧迫する中で、物価上振れに伴う消費者側のマインド悪化と相まって、DIの大幅悪化につながっている可能性があります。
こうした環境のもとで日本銀行が6月利上げを行うかどうかはかなり難しい判断になりますが、円安防止という観点も含め、物価安定を優先させることがより長い目で見て持続的な経済成長に資するということを、日銀は丁寧に説明していくしかありません。
上がる物価、冷える消費。原油調達半減で備蓄日数は200日割れへ(愛宕伸康)
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