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スペースX上場で宇宙開発加速へ。日本の宇宙産業にも成長期待(窪田真之)

2026/7/10 18:17

 イーロン・マスク氏率いるスペースXの躍進で、宇宙開発は加速しています。開発主体は国家から民間にシフトしつつあります。宇宙インフラはほぼ米国に支配されていますが、日本企業も独自の技術力で宇宙開発において存在感を示しています。これから成長が期待される日本の宇宙開発企業について解説します。

目次
  1. 宇宙開発の最先端を走るスペースX
  2. スペースXが実現した「再利用ロケット」
  3. 宇宙開発戦国時代へ、現時点では米国が圧倒的に強い
  4. 日本の宇宙開発企業
  5. 「超」成長株の見つけ方

宇宙開発の最先端を走るスペースX

 宇宙産業は、私たちの生活に不可欠のものとなりました。通信、放送、測位(GPS)、気象観測など、私たちが日常的に使うサービスに深く関わっています。

 防衛面(軍事目的)でも重要となっています。米国・イスラエルなどがすでに軍事目的(精密攻撃・攻撃用ドローン誘導など)で活用していることも知られています。

 その全てで重要な役割を果たしているのが、テスラ創業者イーロン・マスク氏が創業したスペースXです。スペースXは、以下二つを成し遂げたことで、現時点で宇宙インフラを支配して宇宙開発の最先端を走っている企業と言っても過言ではありません。

【1】「再利用ロケット」のパイオニアとして圧倒的な低コストで高頻度のロケット打ち上げを実現

 通信、放送、測位(GPS)、観測など宇宙産業が提供するサービスは、ほぼ全て人工衛星を介して提供されます。その人工衛星を、衛星軌道まで送り届けるのはロケットの役割です。スペースXが安価に大量のロケットを打ち上げられるようにしたことで、世界中で宇宙ビジネスが加速しました。

【2】低軌道(地上400~2,000キロメートル)に1万基以上の人工衛星を打ち上げて、衛星コンステレーションを構築、「スターリンク」を展開

 低軌道の衛星コンステレーションを使って、世界中で利用可能な宇宙通信サービス「スターリンク」を提供しています。スターリンクは、地上の通信インフラが未整備な地域でも、専用アンテナさえあれば衛星経由でインターネット接続を可能にします。

 日本でも利用可能ですが、中国、ロシア、イラン、北朝鮮など、国家安全保障上の理由から利用を禁止・制限している国もあります。

 従来から高軌道(高度3万6,000キロ)の静止軌道を使った通信サービスはありますが、高軌道ゆえに通信遅延の問題があります。また、静止軌道は赤道上にあるため、緯度の高い国では仰角(衛星電波が地上に向かってくる角度)が低くなり、ビルや山影では電波が届かないことがあります。

 スターリンクを契約して専用のアンテナを持てば、高いビルや山に囲まれていても、上空があいていれば、どこでも低遅延の通信サービスが可能です。

 平和利用を前提としていますが、その利便性ゆえに戦争地域での通信サービスや攻撃用ドローン誘導に使われる可能性もあります。

 スペースXは、AIデータセンターの開発にも着手しています。イーロン・マスク氏は、将来、宇宙にデータセンターを造る構想も持っています。宇宙線に耐える半導体開発など、超えなければならないハードルは高いものの、実現に向けて開発を続ける方針と考えられます。 

スペースXが実現した「再利用ロケット」

「再利用ロケット」は、スペースXが実現した宇宙開発の歴史を塗り替える画期的な技術です。従来、ロケットは一度打ち上げれば使い捨てられるのが常識であり、数千億円規模の機体が毎回海に捨てられていました。

 しかし、スペースXの主力ロケット「ファルコン9」は、打ち上げ後に第1段機体(高度100キロくらいまで上昇させて切り離す一段目ロケット)が自律的に地上や海上の無人ドローン船へ垂直着陸し、回収・再利用することを可能にしました。

 この技術の最大の功績は、宇宙への輸送コストを劇的に下げたことです。機体を再利用することで、ロケットの製造コストを大幅に抑え、打ち上げ頻度を向上させました。これにより、かつては国家プロジェクトでしか不可能だった宇宙輸送が、民間企業でも安価かつ高頻度に行えるようになりました。

 衛星軌道まで投入可能な再利用ロケットを高頻度で打ち上げることにおいて、スペースXに勝る企業は、現時点でありません。米国の他の宇宙企業や中国企業も再利用ロケットの開発を加速させていますが、スペースXの技術に追いつくのは容易ではありません。

 現在、この再利用技術はスペースXの基盤となっており、スターリンク衛星の大量打ち上げや、有人宇宙船による国際宇宙ステーションへの輸送などを支えています。使い捨てから「航空機のような運用」へとパラダイムシフトを起こしたこの技術は、人類がより日常的に宇宙へアクセスするための不可欠な鍵となっています。

宇宙開発戦国時代へ、現時点では米国が圧倒的に強い

 スペースXをはじめとして、宇宙産業で収益を伸ばす企業も出てきています。ただし、「宇宙産業」の大部分は今、国家予算を使って運営されています。今はまだ、人工衛星を使ったサービスの大部分が、無料(もしくは安価な)公共サービスとして提供されているからです。

 その一例が、GPSサービスです。私たちもスマホやカーナビを活用し、自分がどこにいるかなどを知るために日常的に使っていますが、これは米国政府が運用するGPS衛星によるサービスです。現時点で、米国政府はGPSサービスを無料で世界中の国々に提供しています。

 ただし、いつまでも米国のみに頼っているわけにいきません。日本では自前の測位衛星「みちびき」シリーズを打ち上げ、米国のGPS衛星を補完する役割を果たすようにしています。将来的には、米国のGPS衛星がなくても、日本国内で自前のGPSサービスをできるようにすることを目指しています。

 宇宙開発では、米国が圧倒的に強く、次いで欧州、ロシア、中国が先行しています。宇宙開発は、防衛(軍需)産業との関連性が高いため、防衛・宇宙関係予算が大きい米国がもっとも優位です。

<海外政府の宇宙関係予算>

<海外政府の宇宙関係予算>
出所:内閣府宇宙開発戦略推進事務局「各国の宇宙開発動向」2025年5月より楽天証券経済研究所作成、原データ:Bryce Tech「The 2022 Global Space Economy at a Glance」Government Budgets(注:集計方法や為替レートにもよるため一概に比較できないことに留意が必要)

 地球上では、領土、領海、海洋権益をめぐる世界各国の争いが絶えません。ウクライナ戦争、イラン戦争、台湾海峡問題などで、米国、ロシア、中国などの大国が勢力争いを続けています。

 ところが、今のところ、宇宙をめぐる権益争いは起こっていません。ただし、宇宙産業の果たす役割がどんどん拡大するにつれ、将来、国家間で宇宙権益闘争が起こるのは避けられないと思われます。

 現時点で、米国が圧倒的に強いですが、そこを中国が猛追しています。

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