ポテチの包装材が白黒、追熟バナナが不足
なぜ、一部のポテトチップスの包装材の色が白黒になったり、追熟したバナナが不足する懸念が生じたりしているでしょうか。図1のとおり、これらは世の中の川下(≒部分)で起きている事象です。その直接的な原因である川中に、「ナフサ」の不足や価格高騰があります。
図1:「白黒パッケージポテチ」「追熟バナナ不足懸念」の位置
ポテトチップスの包装材に使われているインク、バナナを追熟する(緑→黄色に変化)ために使われているエチレンガスはいずれもナフサ由来です。
そして、一部のポテトチップスの包装材の色が白黒になったり、追熟したバナナが不足する懸念が生じたりしていることの間接的な原因であり、かつナフサの不足や価格高騰の直接的な原因である川上(≒全体)に、原油の不足や価格高騰があります。
図2は、その川上に位置する原油の価格高騰を示しています。ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油価格は2026年2月から4月にかけておよそ1.5倍になりました。同年2月28日に勃発したイラン戦争の影響を強く受けた値動きです。
図2:WTI原油(月間平均)と日本の原油輸入単価(2026年3月まで)
日本の原油輸入単価は、国際的な原油価格の指標の一つとされるWTI原油価格に追随するように、推移しています。日本の原油輸入単価は足元、3月分まで公表されています(5月17日時点)。4月、5月と大きく上昇したWTI原油につられ、今後公表される貿易統計を基に計算される原油輸入単価も大きく上昇する可能性があります。
将来的にWTI原油価格の高止まりが続いた場合、川中に位置する石油製品の一つ「ナフサ」の価格高止まり、引いては川下に位置する一部のポテトチップスの包装材の色が今まで以上に幅広い品で白黒になったり、追熟したバナナが不足する懸念が今まで以上に大きくなったりする可能性があります。
改めて「原油は経済の血液」であると認識
ナフサは、ガソリンに似た透明な液体です。ガソリン、ジェット燃料、灯油、軽油、重油などと同様、石油製品の一つです。図3は、石油化学コンビナート内のイメージと、石油化学基礎製品および石油化学誘導品(中間品)を示しています。
図3:石油化学コンビナート内のイメージと石油化学「基礎製品」と「誘導品(中間品)」
輸入された原油は、石油化学コンビナート内の石油化学工場の炉で加熱・蒸留されます。比較的低い温度でLPガスやガソリン、ナフサなど、比較的高い温度で重油、アスファルトなど、さまざまな石油製品が精製されます。
これらは、一度の精製で複数の石油製品が精製される「連産品」故、特定の石油製品のみを精製することはできません。このため、輸入している石油製品もあります。ナフサもその一つです。
原油を精製したり、輸入したりして獲得したナフサは、石油化学コンビナート内の分解工場にて、石油化学基礎製品と呼ばれる、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどになります。
そしてこれらは、石油化学誘導品(中間品)と呼ばれる、各種メーカーが仕入れる、さまざまな製品を作る一つ手前の段階の品になります。図4は、ナフサが石油化学誘導品(中間品)を経て、どのような品に姿を変えるかの一例を示しています。
図4:ナフサの用途(一例)
ナフサ由来の石油化学誘導品(中間品)は、最終的に人々の衣食住の深部に届いていることが分かります。
原油は経済の血液と呼ばれることがあります。輸送に関わる燃料や、熱や音、光を発生させるためのエネルギー源という側面もありますが、ナフサ由来の石油化学誘導品が人々の衣食住の深部に届いていることもまた、原油が経済の血液と呼ばれるゆえんです。