中東・米国以外からの原油タンカーが4隻に増加

 中東および米国以外の地域については、日本向けの存在は1カ月前には確認できませんでしたが、現在は4隻確認できる状態です。いずれもマレーシアの沖合で別のタンカーから積み替えた(STS:Ship-to-Ship転送)原油を搭載しているタンカーです。

 軽質原油主体の米国からの原油タンカー比率が高まる中、日本が必要とする中重質原油を少しでも多く確保するため、ホルムズ海峡を通過してきた他国のタンカー、もしくはペルシャ湾外で中東原油を積んだ他国のタンカーが積載する原油を受け取ったものと思われます。

<他地域から航行中の原油タンカー(0隻から4隻に増加)>

船名 積み地 仕向け地 載貨重量
(千DWT)
オーナー
  日本向け        
  Kisogawa マレーシアSTS 苫小牧 312 川崎汽船
  Tedorigawa マレーシアSTS 川崎 312 川崎汽船
  Setagawa マレーシアSTS 名古屋 300 出光タンカー
  Leyte Spirit マレーシアSTS 菊間 110 Teekay
※オーナーは実質オーナーを含む
出所:MarineTraffic、Oceanookなどより楽天証券経済研究所が可能な限り集計して作成(推定含む)

現在の原油調達体制を前提とすると備蓄在庫は来年の3月くらいまでもつ計算

 今回確認できた、日本に向けて航行中の原油タンカーは合計21隻となり、約1カ月前の5隻から大幅に増加しました。21隻が積載している原油は合計約3,300万バレル(日本の消費量の11日分)に及びます。

 3,300万バレルの積み地内訳は、中東(ペルシャ湾外)が680万バレル、米国(喜望峰経由)が1,670万バレル、米国(パナマ運河経由)が260万バレル、マレーシアSTSが690万バレルとなっています。

 また、各積み地から日本までの航海日数はおおよそ、中東(ペルシャ湾外)が23日、米国(喜望峰経由)が45日、米国(パナマ運河経由)が25日、マレーシアSTSが10日です。

 各積み地からの航海日数を積載原油量の積み地の内訳で加重平均すると、約32日となります。日本の一日当たりの原油消費量を300万バレルとすると、32日分の原油消費量は9,600万バレルとなります。

 つまり、現時点の、米国を中心とした原油調達先構成比が継続すると仮定した場合、合計で9,600万バレルの原油を積載したタンカーが常に日本に向かって航海している状態になって初めて供給量が需要量と見合った形となり、日本国内の在庫が変動しない状態となります。

 実際は上記の通り9,600万バレルの約3分の1の3,300万バレルが日本に向かって航海中という状況であるため、残りの3分の2は国内の石油備蓄を取り崩すことによって補うほかありません。

 先月時点で254日と報じられていた石油備蓄が約1カ月たった現在220日程度になっているとすると、その220日分を、1日に3分の2日分ずつ取り崩していくことになりますので、330日、すなわち、来年の3月くらいまではもつ計算となります。

米国からの調達量維持・拡大、中重質原油不足など複数の懸念点が存在

 ただし、この1カ月で大幅に増えた米国からの原油は緊急対応によって獲得したもので長期契約に基づくものではない可能性が高く、来月になったら確保量が大きく減少する可能性もあります。その場合、来年の3月より早い段階で石油備蓄がなくなってしまうおそれがあります。

 また、日本のみならず各国が米国の原油を欲しがる中で、価格指標であるNYMEX WTIに上乗せされる現物プレミアムが大幅に上昇し、実際の買値がウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)を大きく上回るレベルとなっている可能性もあります。

 さらに、原油の絶対量が来年の3月くらいまで維持できたとしても、現在の原油輸入は軽質原油を中心とした構成となっていて軽油、重油が不足するバランスとなっているため、これらの石油製品の不足がもっと早い段階で生じる可能性があります。

 そのような事態が生じるのを防ぐため、中東以外からの中重質原油の調達、すなわちアンゴラのジラソル原油、カナダのオイルサンド、ロシアのウラル原油などの調達が検討されるべきと考えます。