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「老後に4,000万円」は本当?インフレ時代を生き抜く投資家のための思考法

2026/4/21 16:00

「老後に2,000万円」という言葉を見たことありませんか? 物価上昇が続く今、その必要額は過去のものでしょう。現代のインフレ環境を考慮すれば、その目安は「老後に4,000万円」へとアップデートする必要があります。資産価値を守るため、投資家としての意識を今すぐアップデートしていきましょう。

目次
  1. 「老後に4,000万円」問題とは
  2. 「老後に2,000万円」の数字、実は物価上昇を織り込んでいない
  3. 投資家が先駆けて「老後に4,000万円」にアップデートしよう
  4. 運用収益は「老後に4,000万円」対策の大きな力となる
  5. まとめ

「老後に4,000万円」問題とは

 ネットで「老後4,000万円」という言葉を見かけたことはないでしょうか。これは物価上昇がこのまま続くと、かつて「老後に2,000万円」と思っていた老後の必要準備額がもっと必要になるのでは、という話題です。

 実はこの話題、トウシルでは以前から取り上げていました。物価上昇局面において、将来の必要額もまた上方修正が必要である、ということを指摘していたものです。

 例えば、2022年の記事「物価上昇局面到来!個人投資家が考えておくべき3つのこと」では、以下のように指摘していました。

「仮に老後に2,000万円が必要だとします。あなたは今45歳で20年後のためにこれを準備しています。これで老後の行楽や娯楽費用をまかなおうと思っていたら、毎年2.5%の物価上昇が続いたとすれば20年後に必要な資金額は3,277万円まで高まります。ざっくり5割増し、と考えるわけです」

 また、2023年の記事「物価上昇が10年続くと『老後に2,000万円から4,000万円に』年始は資産形成の目標を上方修正してみよう」では、

「年4%の物価上昇を20年継続すれば、未来の必要な資金額もそれだけ増える。そのため、現在の『老後に2,000万円』は、20年後には『老後に4,382万円』に上方修正をかけておく必要がある」と話していました。

 実際、2020年の消費者物価指数(CPI)(100にリセットされた)に対して、2025年のCPI(総合指数)は111.9となっているため、5年間でトータル約12%上がったことになります。単純計算でいえば、約2,240万円にふくらんだことになります。

 食品や日用品の値上げを肌感覚で捉えれば、「12%どころじゃないだろう!」というのが本音でしょう。「老後に3,000万円」くらいはもう実現した世界なのかもしれません。

「老後に2,000万円」の数字、実は物価上昇を織り込んでいない

  2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」がまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、いわゆる「老後に2,000万円報告書」です。

金融庁 金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について

 この報告書を見てみると、2,000万円については粗い試算であることが分かります。これは、もともと老後に2,000万円自体がレポートのメインテーマでなかったためです。

 レポートでは「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる」とされています。

 ポイントをまとめると以下のように説明したわけです。

「公的年金だけでは月5万円ほど不足がある(2017年データ)」と
「人生100年時代で老後は30年以上に及ぶ可能性がある(将来の平均寿命の予測)」から
「月5万円×30年=約2,000万円くらい」

 あくまでラフな試算だということが分かります。

 物価上昇が始まった今、「物価上昇が考慮されていない」ということが気になります。

 仮にリタイア直後に5万円が必要だとして、物価上昇が2.0%生じれば、1年後には月5万1,000円が必要となるはずですし、10年後には月6万950円が必要となるはずです。トータルでは22%の値上がりです。

 あるいは、まだリタイアしていない人の目線で考えると、リタイア時点の物価上昇を少なくとも考えて目標額を設定する必要があります。20年後にリタイアする人は、2,000万円の現在価値を20年後に確保したいなら、目標額を2,972万円にアップデートする必要があります。

(少し補足しておくと、2,000万円の概算は、報告書のメインストーリーではないので、粗い数字であることを責めるのは筋違いです)

投資家が先駆けて「老後に4,000万円」にアップデートしよう

 実際問題として「月5万円の不足」という数字そのものから再検討する必要があります。人によって必要な金額は異なり、月5万円で十分な人もいれば、月10万円でも足らない人がいるからです。まずは公的年金との差額を見極めることが本当の「老後にXXXX万円」の第1ステップです。

 とはいえ、分かりやすい目安として考えたときの「老後に2,000万円」というイメージは根強く、このイメージを今の時代に合わせてアップデートしておく必要はあります。

 さすがに皆さんも2026年の物価上昇が続く世界において「物価が上がったのだから、将来に必要な金額も増やさなくてはいけない」ということには同意してくれることでしょう。

 こうした変化は、もしかしたら個人投資家の方が理解をしてもらえるテーマかもしれません。近年の国内株価の大幅な上昇も、物価上昇率を上回ると考えれば説明がつきます。

 まずは資産形成に取り組んでいる皆さんから、「老後に4,000万円」に意識をアップデートしてみてください。

運用収益は「老後に4,000万円」対策の大きな力となる

 老後に向けて資産形成をしている個人投資家は、実はこの「老後に4,000万円」問題に対応済みといえます。

 そもそもリスクを取るということは、物価上昇率を上回る期待リターンを目指して資産管理をしている、ということです。ここ数年、しっかり資産を増やしてきた個人投資家は、「老後に4,000万円」の対策は基本的にできているといえます。

 投資家の多くは、物価上昇以上の収益率を確保していることでしょう。例えば、昨年の運用成果が、2025年平均の物価上昇率3.2%以上のリターンを得ていれば、2025年において資産目減りは起きていないということになります。

 つまり、「物価上昇率<資産価値の上昇率」とすることができれば、資産価値の上昇率は必要額の上昇率を打ち消し、上回ったということです。この流れを今後も継続し、将来に向けた資産形成としていきましょう。

 あるいは、老後に入り資産の一部を資産運用している人も、物価上昇率をカバーする程度の運用益を確保することができれば、実質目減りを回避できることになります。

 こちらはリスク許容度の低下を考えると全財産を投資に回す必要はありません。しかし、個人投資家としての豊富な投資経験を生かしつつリスクコントロールを意識し投資とつきあっていけば、「老後に4,000万円」への変化にセカンドライフ中も対応していけることでしょう。

 ただ、投資家向けの注意点もあります。運用利回りの一部は、物価上昇率と相殺されている意識を持つことです。物価が動かない時代は、「リターン=資産価値の上昇率」でしたが、これからは「(投資のリターン)-(物価上昇率)=(実質的な資産価値の上昇率)」と考える必要があるわけです。

 長かったため慣れてしまったデフレ期の「リターン=資産価値の上昇率」というマインドセットを切り替え、「勝ってかぶとの緒を締めよ」の精神で、実質的な資産価値を見るようにしていきましょう。

まとめ

 実は、トウシルにおいて論じてきたテーマをベースに、日本経済新聞出版社より、「老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方」を出版することとなりました。

 トウシル読者には語りきれなかった部分も含まれています。4月下旬発売予定です。ぜひご覧になってください。

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