新NISAスタートで投資に目覚めた人も多い令和の世の中。それだけに、遺産相続などで金融資産をどう分けるかなど、予想外のトラブルも急増中。そこで「終活専門」の司法書士、福村雄一さんによる、終活事件簿と解決方法をひもとく新連載を開始。今回は皆さんの身近で起こりうる「エンディングノート」の落とし穴を取り上げます。
エンディングノートに法的効力はない?おじいちゃんの遺産、どう分ける?

このたび、義祖父が82歳で亡くなりました。数年、入院したのちの死去だったため、生前に、事細かく葬式や遺産に関するメモを書いたエンディングノートを遺してくれており、その中には「長年介護した嫁の私に、遺産の4分の1を遺す」、と記載されていました。
「今までありがとう」、という震える文字に涙し、実子の義姉さん、義妹さんも心から感謝の言葉をいただけたのですが、司法書士が入り、遺産相続の手続きに入った途端、事態は急変。なんと、エンディングノートには法的効力がないというのです。
弁護士が言うには「正式な遺言書でなければ、遺産相続は、実子の法定相続人で分けるため、血のつながりのない私は部外者で1円も相続する権利がない」とのこと。
その話を聞いた途端、義姉妹の顔つきも変わってしまい、今、親族はお互いの取り分について私そっちのけで協議中です。
親族内がギスギスしている雰囲気もいたたまれません。私自身、おじいちゃんの遺志は気持ちだけで十分…とも思えず、釈然としない日々が続いています…。

エンディングノートと遺言書の違いとは!
自分の私物の譲り先、介護、医療、葬儀、お墓などについて、法律では定められていない気持ちや希望を書くのがエンディングノート。
記述方式も決まっておらず、必要だと思うことは何でも書き込める自由度の高い文書です。一方で、記載内容は家族の判断にゆだねられるので、必ずかなえてもらえるという保証はありません。
一方で、遺言書は正式な遺産を振り分けるための法的文書です。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などの種類があり、それぞれに民法で定められた形式に従う必要があります。
公正証書遺言には2人以上の証人が必要です。ただ、形式に不備があると無効になる可能性があるため、遺言書を作成する際は、弁護士や司法書士のアドバイスを受けることが望ましいです。
トラブル回避のために、親子別・今からできること!
[親目線]:金融資産がある高齢者がやるべきこと
金融資産を保有している高齢者は、その内容や保有先を子どもに知ってもらう目的でエンディングノートを書きましょう。
私のところに相談に来る方々の中でも、親を支える子どもの多くが、「親の資産内容がよく分からない」という悩みを持っている方が多数いらっしゃいます。これをブラックボックスにしておくのは非常に危険です。
医療費や介護費用が必要になったときに、どうするか。配当金で見通しが立つのか、売却が必要になるのか、親の人生を支える上で、金融資産の内訳を子どもが知ることは大きな意味があります。
子どもを代理人に指定して将来の売却に備えたり、家族信託の仕組みを使って子どもが財産管理したり、親の日常生活のお金の不安を取り除くことにつながります。
まずはエンディングノートで自分の資産内容を整理したら、遺言書にステップアップするのがおススメです。相続のときにあまった財産を、誰に、どれだけ渡すか。全く考えたことがない人はいないはずです。
金融資産の相続について考えがあるのであれば、生前に遺言書の形にしなければなりません。口約束やお手紙では思いは実現しません。
自分の最後の思いを使える言葉にするために、人生の総仕上げとして遺言書を書いてあげてください。
[子ども目線]:金融資産がある高齢の親を持つ子どもにできること
子ども側としては、二つの視点から親の金融資産の内容を知る必要があります。
一つ目は、親の生前に使うための視点です。親の現金は、キャッシュフローとして流れていきがちなため、親の医療費や介護費用など、いざという時の元手は金融資産から取り崩す必要が発生することも多いのです。
年金だけで生活できているのか、万が一の場合、その他の金融資産を元手に使うのか。先の見通しを立てるためにも親の金融資産の内容を把握しておくことが大切です。
いざ売却が必要なときに親が認知症で売却できないといった事態もあり得ます。対応策を講じるためにも、まずはエンディングノートを利用して親の金融資産の概要を把握しましょう。
二つ目は、親の相続が起きたときに備える視点です。預貯金は比較的、分けやすいのですが、株式や投資信託は、相場や遺された側のリテラシー面などもあって、意外と分けにくいものです。
銘柄や口数もその時々で価値が変わりますし、投資への意欲の違いも子どもによってさまざまです。どう分けるかについて親の意向を確認し、遺言書を作成するようにしましょう。
遺言書があれば、相続手続もスムーズに進めることができます。
まとめ:エンディングノートと遺言書、二つ用意するのがベスト
エンディングノートはナビゲーションシステムのようなものです。進む方向性や道筋が見える効果があります。ただ、それだけでは足りません。
間違いなく目的地に到達するためには、遺言書で、誰に、何を、どれだけ渡すか、ということを確定させておく必要があります。
上記のケースのように、相続権のない方には法的な発言権がありません。できれば相続権のある実子が間に立ち、遺族間の感情なども含めて、皆さんができるだけ納得できるランディングを目指して交通整理をしてあげてください。
財産の分け方を書いたメモが残っていたり、パソコンで書いた手紙が残っているケースに多く出会いますが、残念ながらそれらは紙切れでしかありません。
使える言葉にするためにも、手順やルールを守って、法的効力のある正式な遺言書を残しましょう。
「終活専門」司法書士・福村雄一さんプロフィール
もしもの不安を解消「人生後半戦」攻略ガイド』などがある。
[新規連載!]終活事件簿「介護嫁は遺産をもらえない?」エンディングノートと遺言書の違い
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