日経平均やS&P500種指数など、株価指数の動向に関心を持つ投資家は多い。指数に連動する投資信託を保有していたり、指数を景気動向の先行指標として認識していたりするためだ。この株価指数を、金(ゴールド)や銅、原油などのコモディティ(国際商品)側から眺めてみると、意外な事実と、今後の投資に役立つヒントが見つかる。
銅が1.2倍、株価指数は何倍?
「ドクター・カッパー(Doctor医者・Copper銅)」という言葉があります。銅相場の動向が景気の先行きを診断している、という考えに基づいた言葉です。少し具体的に言えば、銅相場が上昇している時は、世界中で電線や建物などのインフラ整備が活発に行われている時(景気が良い時)だ、となります。
「経済の血液」という言葉もあります。原油相場の動向が景気の先行きを示すヒントになる、という考え方に基づいた言葉です。少し具体的に言えば、原油相場が上昇している時は、世界中でモノやヒトの移動が活発で、各種素材の需要が旺盛な時(景気が良い時)だ、となります。
株価指数は半年から1年程度先の景気動向に関わる思惑(プラスの思惑は期待、マイナスの思惑は懸念)を織り込んでいる、と述べる筆者の身近にいる株の専門家の話と合わせて考えると、株価指数が上昇している時間帯は、銅と原油の相場も上昇していることになります。
このことは、多くの経済関連の専門書にも書かれており、かつ、新入社員を迎えた金融機関でのレクチャーでも、語られていると考えられます。つまり、多くの人が否定しない、感覚的に受け入れられやすいストーリー(ナラティブ)の上に成り立っている話でもあります。
ここでクイズです(図1)。2010年と2025年を比較すると、銅相場は1.3倍、原油相場は0.8倍になりましたが、米国の主要株価指数の一つで、日本の多くの個人投資家の皆さまにもなじみがある「S&P500種指数」は、何倍になったでしょうか?
図1:[クイズ1] S&P500、原油、銅の価格推移
景気動向を診断するといわれる銅の相場が1.3倍(やや上昇)、景気動向の先行きを示すヒントになるといわれる原油の相場が0.8倍(やや下落)であることを考えれば、さほど景気は強くない、つまりこの時間帯のS&P500は、さほど上昇していない、と予想することができでそうです。
このクイズの正解は、図2のとおりです。
図2:[クイズ1の答え] S&P500、原油、銅の価格推移
このクイズの答えは「5.5倍」でした。2010年に1,140ポイントだったS&P500は、2025年に6,216ポイントまで上昇しました。銅と原油の値動きからは想像もつかない規模の上昇を演じました。
銅や原油といったコモディティ(国際商品)側からS&P500の値動きを見ていると、「なぜこんなに上昇しているのだろう?」と素朴な疑問がわいてきます。「銅と原油が景気動向を示していないからだ」というご指摘もあろうかと思います。
とはいえ、史上最高値水準で推移している銅が1.3倍の中で5.5倍をたたき出したことを考えれば、S&P500側に何か、2010年以前にはなかった新しい要素が存在していることを考慮する必要があるでしょう。
金(ゴールド)と株価指数の相関係数は?
相関係数は、二つの数値の関わり方を示す値です。マイナス1と1の間で決定し、マイナス1に近づけば近づくほど、二つの数値は逆の動きをしている(マイナス1は真逆)、1に近づけば近づくほど、二つの数値は同じ方向に動いていることを意味します。同係数は、世に言う「株と金(ゴールド)は逆相関」の目安として使用されることがあります。
ここでクイズです(図3)。1984年から1999年までの16年間、S&P500とニューヨークの金(ゴールド)先物の相関係数はマイナス0.64と、やや強い逆相関を示しましたが、2010年から2025年までの16年間の相関係数はいくつだったでしょう?
図3:[クイズ2] S&P500、金(ゴールド)の価格推移
二つの関係が逆相関であれば、少なくとも同係数の符合は「-(マイナス)」になるはずです。また、近年、金(ゴールド)投資を促すレポートや動画などで、「株と逆相関の金(ゴールド)を同時に保有すれば安心」という趣旨の情報が散見されていることを考えれば、符合はマイナスでかつマイナス1に接近した値になるかもしれません。
このクイズの正解は、図4のとおりです。
図4:[クイズ2答え] S&P500、金(ゴールド)の価格推移
このクイズの答えは「0.84」でした。逆相関はおろか、強い順相関といっても言い過ぎではありません。金(ゴールド)相場が上昇(下落)する時、S&P500も上昇(下落)する、という傾向が強いことが分かります。
「長期視点では金(ゴールド)価格も上がっているのだから、逆相関でなくても問題ない」というご意見もあろうかと思います。
とはいえ、1985年からの16年間は確かに、逆相関の傾向はあったのです。それが2010年以降、二つの価格推移の関係が真逆といってもよいような状況になっていることについては、留意しなければならないでしょう。近年は、「両方一緒に下がる」ことが、短期視点でしばしば起きているためです。
金(ゴールド)を通して株価指数を見る(吉田哲)
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