今回は、金(ゴールド)と銀(シルバー)の相場動向に注目します。足元、急落していることに注目が集まっていますが、長期視点では2010年ごろ以降の上昇トレンドは、継続しているように見えます。短期と長期、異なる時間軸で、金と銀の相場で何が起きているのでしょうか?投資をする際は、何に気を付けなければならないのでしょうか?
長期視点で急騰中の金(ゴールド)と銀
図1は、ニューヨーク金(ゴールド)先物およびニューヨーク銀(シルバー)先物の価格推移を示しています。長期視点ではともに急騰中、短期視点ではともに急落中であることがわかります。
図1:NY金(ゴールド)・銀(シルバー)先物の価格推移(日足終値) 単位:ドル/トロイオンス
2010年ごろ以降の長期視点の急騰は、図2で示した「ハイテク(SNS、AI、ドローンなど)のマイナス面とポピュリズム(人気取り)の相乗効果」が一因で起きている可能性があります。
こうした相乗効果は、図2の右側に示した民主主義後退、世界分断深化、資源武器利用横行、長期インフレ継続、通貨の不確実性増、株高への不安拡大などの非伝統的な有事を増幅させ、金(ゴールド)相場を長期視点で「底上げ」したり、急騰させたりしていると、考えられます。
図2:株価指数・金(ゴールド)・銀(シルバー)価格の長期急騰の一因
この点は、同じ貴金属に分類される銀(シルバー)相場の長期視点の底上げ・急騰の一因だと言えます。
また、2010年ごろ以降、ハイテクのマイナス面とポピュリズムの相乗効果によって、情報の受け手・発信者の関係の変化、真実の乱立、情報の受け手の受容力低下、かく乱・浸透・分断などの工作の横行などが目立ち、ポピュリズムに拍車がかかっています。
ポピュリズムに拍車がかかると、減税や補助金を求めるクレクレ民主主義と、それに安易に応じるバラマキ政治が拡大しやすくなります。この流れが各種市場に波及し、「金融緩和の催促」が目立ち、通貨ストックの膨張が継続したままです。
通貨ストックの膨張は、投機マネーの膨張につながり得ます。以前の「有事でも急落する金(ゴールド)相場、今後どうなる?」で述べたとおり、2010年ごろ以降は、米国の主要な株価指数の一つであり、日本の投資家の皆さまに広く認知されているS&P500種指数も、長期急騰を演じています。(足元では、金(ゴールド)、銀(シルバー)と同様に急落する場面も散見されています)
株価指数の上昇は、産業用金属の需要増加観測を強め、同需要の割合が比較的大きい銀(シルバー)相場の底上げに貢献します。銀(シルバー)の長期視点の底上げ・急騰については、金(ゴールド)高・株価指数高の両面から、説明できます。
短期視点で急落中の金(ゴールド)と銀
短期視点の急落について述べます。図3は、中東情勢が急速に悪化する直前の2月27日の終値と、4月6日午前11時ごろ(日本時間)の価格を比較した騰落率を示しています。
図3:主要銘柄の騰落率(2026年2月27日終値と4月6日日本時間午前11時ごろを比較)
複数の主要国の通貨に対する米ドルの強弱を意味するドル指数が上昇しています。「有事のドル買い」「有事の現金化」や、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で議論中の利下げ(金利引き下げ)が行われなかったことが、要因と見られます。
貿易で最も多く使われている米ドルと 歴史的に世界中でお金として使われてきた金(ゴールド)には、世界共通のお金という共通点があります。このため、ドル高が進行すると、相対的に、金(ゴールド)相場に下落圧力がかかりやすくなっています。
また、S&P500種指数などの主要国の株価指数も急落しています。株価指数の急落は、産業用金属の需要減少観測を強め、同需要の割合が比較的大きい銀(シルバー)相場の急落を誘います。銀(シルバー)の短期視点の急落については、金(ゴールド)安・株価指数安の両面から、説明できます。
図4は、こうした短期視点の株価指数、金(ゴールド)、銀(シルバー)の急落の背景を示しています。
図4:株と金(ゴールド)の値動きにおける過去と現在
以前は「株と金(ゴールド)は逆相関」と言われましたが、2010年ごろ以降、長期視点で株とともに金(ゴールド)が急騰したり、短期視点で株とともに金(ゴールド)が急落したりしています。
金(ゴールド)相場を分析する際の手法は、2010年ごろ以降、変貌を遂げました。金融政策が引き締め的になったり、伝統的な有事が強まったりすると、懸念が増えて株安、ドルが買われてドル高になり、そのドル高が(相対的な)金(ゴールド)安の原因になります。
こうした株と金(ゴールド)の同時安は、銀(シルバー)安に拍車をかけます。足元、銀(シルバー)の下落率が金(ゴールド)の下落率を上回っている理由の一端が、ここにあります。
金(ゴールド)はやや通貨、銀はやや産業
ここで、金(ゴールド)と銀(シルバー)の需給を確認します。図5は、金(ゴールド)と銀(シルバー)を含む、主要な四つの金属の鉱山生産量を比較した図です。
図5:主要四金属の鉱山生産量比較(2025年)(プラチナの生産量を1として比較)
2025年の鉱山生産量(推定を含む)について、最も数量が少ないプラチナを1にすると、金(ゴールド)は21、銀(シルバー)は151、銅(カッパー)は13万超です。
金(ゴールド)と銀(シルバー)を比べるとやや、銀の方が多いことがわかります。しばしば、「鉱山生産量の少なさは、希少性の高さ・価値の大きさ」を示すと言われます。
この意味では、金(ゴールド)の価値が銀(シルバー)の価値よりも大きいことになりますが、汎用性が高く鉱山生産量が圧倒的に多い銅(カッパー)に比べれば大変に少ないこともわかります。
この点が、ここで示している銀(シルバー)および銀(シルバー)よりも鉱山生産量が少ない三つの金属が、貴金属と呼ばれる所以です。
需要面に目を移します。金(ゴールド)、銀(シルバー)、白金(プラチナ)、銅(カッパー)おける需要を、投資、宝飾品、中央銀行、産業用(電子・電気)、その他の産業用、その他に分けると、図6のようになります。
図6:主要四金属の需要内訳(2025年、銅は2024年)
先ほど、金(ゴールド)は、世界共通のお金という特徴を持っていると述べました。金(ゴールド)の需要の17%が、中央銀行(全体)による買い越し分です。中央銀行はさまざまな意図をもって、金(ゴールド)を保有しています。
以前の「「中央銀行」というクジラとともに金(ゴールド)長期投資」で述べたとおり、中央銀行は対外的に何かあった時への備えとして外貨準備高を有し、その一部を金(ゴールド)で保有しています。このことは、今もなお、金(ゴールド)が世界で通貨として認められていることを示していると言えます。
また、これまでに何度か、銀(シルバー)について、産業用の需要の割合が大きいと述べました。銀(シルバー)においては、産業用(電子・電気)が41%、その他産業用が18%を占めています。これらを合わせた産業用の合計は59%です。
株価指数の上下が醸し出す景気動向への思惑が、こうした産業用の需要の増減への思惑を、生むきっかけになります。
金(ゴールド)と銀(シルバー)、長期急騰・短期急落の背景
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