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日銀「主な意見」が織り込めていない中東情勢を巡る深刻なリスク(愛宕伸康)

2026/4/1 8:00

 日銀が3月30日に公表した3月会合の「主な意見」、タカ派トーンで4月利上げの地ならしとの見方も。ホルムズ海峡の事実上の閉鎖で原油調達への不安が高まり、多くの石油化学メーカーが生産調整を始めています。そんなサプライチェーンが寸断するリスクが高い中で、果たして日銀は利上げを行うのか。生産予測指数を解説しながら考えます。

目次
  1. 日銀の3月「主な意見」、中東情勢緊迫化の影響を強く意識
  2. 政策委員が恐れるビハインドザカーブに陥るリスク
  3. 生産の予測指数は3、4月とも前月比3%台の強さだが、うのみにしてはいけない
  4. 石油製品や化学の予測指数は大幅下振れの公算
  5. なぜ石油化学メーカーは稼働を引き下げるのか~サプライチェーン・マネジメント~
  6. 物価押し上げリスクより深刻なサプライチェーンが直面するリスク

日銀の3月「主な意見」、中東情勢緊迫化の影響を強く意識

 日本銀行は3月30日、3月金融政策決定会合(MPM)の「主な意見」(「金融政策決定会合における主な意見(2026年3月22、23日開催分)」)を公表しました。「主な意見」とは、MPMで実際にどんな意見が出たかを開示する資料で、日銀ウオッチャーが金融政策の先行きを考える上で最も重視する資料の一つです。

 3月のMPMが開催された3月22~23日は、米国とイスラエルがイランを攻撃し(2月28日)、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖によって原油相場が大きく動いた後であり、それによる経済・物価への影響について活発に議論されたことが、今回の「主な意見」から伝わってきます。

 まず、経済への影響に関しては、政策委員の中心的な見通しは変わらないものの、「リスクシナリオとして意識すべき」「経済的悪影響が表れ始めており、予断を許さない」といった意見が出るなど、かなり慎重にみていることが分かります(図表1)。

<図表1 3月MPMの「主な意見」に掲載された経済情勢に関する意見>

図表1 3月MPMの「主な意見」に掲載された経済情勢に関する意見
出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 物価への影響については、「今後の中東情勢次第では、(基調的な物価上昇率が)2%を超える可能性もある」「継続的かつ大きくインフレを押し上げる懸念がある」といった意見が出るなど、上振れリスクを意識した意見が目立ちました。

政策委員が恐れるビハインドザカーブに陥るリスク

 このように、政策委員の多くは、中東情勢の緊迫化と原油相場高騰について、経済には押し下げ、物価には押し上げの影響が出ることを意識しているわけですが、金融政策運営に関する意見を見ると(図表2)、後者を意識し、利上げに積極的な意見が多く掲載されています。そして、それらに共通して見られるのは、ビハインドザカーブ(利上げが後手に回ること)に陥ることへの懸念です。

 具体的には、「基調的な物価上昇率が2%を超えて上昇し続けることは避けなければならない」「ビハインドザカーブに陥ると、急激かつ大幅な金融引き締めを余儀なくされ、わが国経済に大きなショックを与えてしまう」「当面は二次的波及やインフレ期待の上昇に伴う物価上振れを重視した対応が必要」といった意見にそれが表れています。

<図表2 3月MPMの「主な意見」に掲載された金融政策運営に関する意見>

図表2 3月MPMの「主な意見」に掲載された金融政策運営に関する意見
出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 今回の「主な意見」を受け、筆者の周辺でも「4月利上げに向けた地ならし」「利上げの織り込みを進めようとしている」といった声が多く聞かれていますが、市場では4月利上げの予想がかなり増えた印象です。金利スワップ市場でも4月利上げを7割方織り込んでいます。

 ただ、筆者が懸念するのは、政策委員も意識している中東情勢の緊迫化の影響、とりわけ日本製造業のサプライチェーンに及ぼすリスクです。経済産業省が31日に発表した2月の鉱工業生産指数および3月、4月の製造工業予測指数(以下、予測指数)を見ながら、説明することにしましょう。

生産の予測指数は3、4月とも前月比3%台の強さだが、うのみにしてはいけない

 昨日(3月31日)、2月の鉱工業生産指数が発表され、前月比マイナス2.1%の減少となりました(図表3)。特に、「石油・石炭製品」(前月比マイナス4.1%)、「電子部品・デバイス」(前月比マイナス3.1%)、「輸送機械」(前月比マイナス2.4%)の減少が目立ちました。

<図表3 鉱工業生産指数>

図表3 鉱工業生産指数
出所:経済産業省、楽天証券経済研究所作成

 しかし、同時に公表された予測指数を見ると、図表3の先行きに示したとおり、3月が前月比3.8%、4月が3.3%と、かなりしっかりした伸びとなっています。これを見ると、「なんだ、中東情勢悪化でも生産は強いではないか」と思ってしまいますが、注意してください。この予測指数、実は2月10日時点の数字です。

 経済産業省が公表している鉱工業生産指数の冊子に、製造工業生産予測指数の注釈があります。そこには、「本調査は、毎月10日現在で製造工業の主要186品目につき、それぞれの主要企業から、生産数量の前月実績、当月及び翌月の生産計画について報告された結果を2020年=100.0として指数化し…」とあります。

 つまり、31日に公表された3月調査の予測指数は、2月10日時点の企業の生産計画を3月上旬に集計した結果であり、ホルムズ海峡閉鎖の影響は全く織り込まれていません。

 実際には、原油などの原料調達が途絶するリスクに備えたサプライチェーン・マネージメントの一環で、三井化学(4183)旭化成(3407)出光興産(5019)三菱ケミカルグループ(4188)など石油化学メーカーでは、3月中旬からエチレンの減産を実施しているほか、信越化学工業(4063)などでもエチレンを主原料とする塩化ビニル樹脂の減産を行っています。

 こうした石油製品の減産は、他産業へも広く波及すると見込まれ、4月30日に発表される次回の予測指数では、数字が大きく下振れる公算です。

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