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新社会人のみなさんが獲得すべき、インフレ・カオスの世界を生きるコツ

2026/3/31 7:30

 日本において、4月1日は新しい年度の始まりの日です。2026年度のスタートと同時に、社会に出られた方もおられます。こうしたタイミングにあって、本レポートでは近年の世界情勢をさまざまなデータで確認をしながら、新社会人をはじめとした多くの皆さまに、今後の投資戦略に役に立つであろう、コモディティ投資の意味について、述べます。

目次
  1. 世界インフレの背景に強力なカンフル剤
  2. 自由も民主主義も損なわれ続けている
  3. 思惑と実態の差が拡大する投資の世界
  4. SNS・AIのデメリットがカオスの一因
  5. コモディティ投資で世界にマウントする
  6. [参考]コモディティ関連の投資商品例

世界インフレの背景に強力なカンフル剤

 世界は今、大変な物価高にあえいでいます。日本でも、食料品、電気、ガス、ガソリンなどの価格がこの数年間で大きく上昇したことを、実感できます。毎月のように「食料品、来月から〇〇品目、値上げ」というニュースを目にしています。

 日本では、こうしたインフレ(物価高)は、2022年ごろから目立ち始めました。2022年は、ウクライナ戦争が勃発した年であるため、多くの報道や専門機関の情報では、2022年が目立った物価高の起点だった、とされています。

図1:米国、ドイツ、日本の消費者物価指数(CPI) 2010年=100

図1:米国、ドイツ、日本のCPI(消費者物価指数) 2010年=100
出所:国際通貨基金(IMF)のデータより筆者作成

 図1のとおり、日本と同様、世界経済をけん引する米国とドイツにおいては、目立ったインフレは2022年ではなく、2020年から始まりました。日本は1990年ごろから長らく、デフレ期を過ごしてきたこともあり(青の点線)、海外の主要国よりも遅く、インフレが目立ち始めたと言えます。

 足元、中東情勢が悪化したことがきっかけでインフレが起きている、という印象を抱く方は少なくありません。確かに、短期的なガソリン小売価格の上昇などは同情勢悪化がきっかけで発生しましたが、世界的なインフレは、2020年ごろ、さらにさかのぼれば2010年ごろから、徐々に進行してきました。中東情勢の悪化は、その流れを加速させている存在だと言えます。

 図2は、世界の貿易で最も多く使われている基軸通貨「米ドル」のストック(流通量)の推移を示しています。2010年ごろに増加が一段と加速し、2020年ごろにさらに増加が加速したことが分かります。

図2:米ドルのマネーストック(M2) 単位:10億ドル

図2:米ドルのマネーストック(M2) 単位:10億ドル
出所:セントルイス連銀のデータをもとに筆者作成

 2度の増加のきっかけは「景気刺激のための通貨供給」でした。2008年に発生したリーマンショックと、2020年に発生した新型コロナショックによって生じた世界規模の景気悪化を食い止め、景気を刺激し回復させるために、膨大な額の資金が必要でした。

 その資金を供給するため、主要国の中央銀行のうち、特に米国の中央銀行の役割を持つ米連邦準備制度理事会(FRB)が、大規模な金融緩和(通貨供給)を行いました。これにより、米ドルのマネーストックは急増しました。

 2023年ごろに、米ドルのマネーストックが一時的に減少する場面がありましたが、ほどなくして、再び増加に転じました。このことについて、FRBが「景気回復のためには通貨供給が必要」という市場の求めに応じた、との指摘があります。

 もともと、通貨供給は経済発展のために行われていました。しかし、2010年ごろ以降、景気刺激という役割を持つようになり、それが行われることがある意味、当たり前のことになってしまいました。

 危機的な状態に対する一時的な策という意味の「カンフル剤」とも言える、こうした金融緩和は、通貨の価値を薄めるきっかけとなり、相対的なインフレが進む原動力になっていると言えます。

 この点からも、世界を苦しめているインフレの原因が、中東情勢の悪化だけではないことが分かります。

自由も民主主義も損なわれ続けている

 2010年ごろ以降、世界で目立っている大きな課題はインフレだけではありません。図3のとおり、世界のネガティブ経験指数(左下)が上昇したり、自由民主主義指数(右下)が低下したりしています。

図3:2010年ごろからはじまった世界情勢の急変を示すデータ

図3:2010年ごろからはじまった世界情勢の急変を示すデータ

 ネガティブ経験指数は、英国の世界的な調査会社であるGallup(ギャラップ)が、世界の100カ国以上で、昨日の長い時間において、不安、怒り、ストレスなどを感じたり、身体的な痛みを感じたりしたかどうかを調査し、まとめたものです。

 2010年ごろ以降、同指数は上昇し始めました。この動きは、2010年ごろ以降、世界の多くの国で、不安、怒り、ストレスなどを感じたり、身体的な痛みを感じたりしている人が増えてきていることを示唆しています。

 自由民主主義指数は、V-Dem研究所(スウェーデン)が、法整備、選挙制度、言論の自由などの民主主義に関わる多数の要素を集約して算出した、指数です。0と1の間で決定し、0に近づけば近づくほど、その国の自由度・民主度が低いことを、1に近づけば近づくほど、その国の自由度・民主度が高いことを意味します。

 同指数は、2010年ごろから下げ始めました。2025年の約0.27は、冷戦期(1970年代前後)の水準でもあります。それくらい、現在の自由度や民主度が低いことを意味します。

 図4は、自由民主主義指数の比較的高い国(0.6以上)と比較的低い国(0.4以下)の数を示しています。2010年ごろから、同指数の比較的高い国の数が減少し始めました。同指数の比較的低い国の数は2020年ごろから増加し始めています。

図4:自由で民主的な度合が高い国・地域と低い国の数(自由民主主義指数ベース)

図4:自由で民主的な度合が高い国・地域と低い国の数(自由民主主義指数ベース)
出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 自由度・民主度が高い国の数が減り、逆に自由度・民主度が低い国の数が増えていることは、自由度・民主度における世界の分断が深まっていることを意味します。

 2010年ごろ以降の、ネガティブ経験指数の上昇、自由民主主義指数の低下、自由度・民主度における世界の分断の深まりは、図3の上部に示した世界のスマートフォンの販売台数の急増(左上)と、世界のソーシャルメディアユーザーシェア(右上)の上昇と、無縁ではないと考えられます。

 2011年ごろ、北アフリカ・中東地域において、民主化運動の波が起きました。「アラブの春」です。SNSで発生した民意の濁流がきっかけで、複数の国で、武力衝突を伴った政権転覆が起きました。また、2016年と2024年の米国の大統領選でトランプ氏が勝利した背景にも、SNSが存在するといわれています。

 また、足元、複数の主要国において「SNS規制」に関する議論が始まっています。市民が直接的に関わる事件や出来事が多発したり、若者の教育や人格形成の面でマイナスの影響が大きくなったりしているためです。

 武力衝突が連鎖したり、横暴なリーダーが誕生したり、市民や特に若者へのマイナス面が大きくなったりしていることは、決して、民主的な状態を目指す社会において、好ましいことではありません。

 こうした好ましいとは言い難い状態が目立ち始めたタイミングと、SNSが普及しはじめたタイミングがほとんど同じだったことは、偶然ではないと筆者は考えています。世界のカオス(混沌・こんとん)の一翼を、SNSが担っていると言っても、言い過ぎではないかもしれません。

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