生成AIの技術革新に低コスト化が加わった。特注型AI半導体の導入増加に続き、アルファベットが生成AI向けメモリ節約技術を開発。生成AI開発を効率化する「クロード」も浸透。AI半導体とクラウドサービスには価格競争の可能性もある。生成AI関連株は下げ相場入りした可能性がある。一方でCPUが重要に。インテル、レーザーテックに注目したい。
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:インテル(INTC、NASDAQ)、レーザーテック(6920、東証プライム)、アルファベット(GOOGL、GOOG、NASDAQ)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR、NASDAQ)
1.アルファベットが生成AI向けメモリ節約技術を開発。生成AIの技術革新の流れに低コスト化が加わった。
1)アルファベット、生成AI向けメモリ節約技術を開発
アルファベットの子会社であるグーグルは、2026年3月24日、生成AIを実行するために必要なメモリ量を6分の1に削減できる可能性のある新たな圧縮手法「TurboQuant」を発表しました。実際に長文でテストしたところ、タスクの精度を維持したままメモリサイズを6分の1以下に縮小することができたということです。また、エヌビディアの「H100」上での計算速度が最大8倍に向上するというパフォーマンス改善が確認されました。
この新技術が、実際にアルファベットのクラウドサービスやグーグル検索のシステムに導入されるのがいつになるのか不明です。この点は、2026年1-3月期のアルファベットの決算発表で大きな焦点になると思われます。
アルファベットはすでに2015年から自社製AI半導体「TPU」の第1世代「TPUv1」を自社のデータセンターに導入しています。今は第7世代「Ironwood(アイアンウッド)」ですが、今のTPUの価格はエヌビディア製の半値と言われています。TPUの設計と生産はこれまでブロードコムが独占してきましたが(生産はブロードコムからTSMCに生産委託されている模様)、今の第7世代TPUの次のバージョンである「TPU7e」の推論特化チップの設計と生産を、スマートフォン向けチップセットの大手である台湾のメディアテックが受注しています(これも生産はTSMCが受託している模様)。メディアテックは2026年1-3月期に試験生産に入るとされており、これがうまくいけば、2026年後半に量産が始まると思われます。特注型AI半導体も競争状態になってきたと思われます。
また、アンソロピックの生成AI「クロード」の影響力を考える必要もあります。「クロード」はコーディングで最高の評価を受けており幅広くソフト開発に使われていますが、生成AIの開発にも使われています。これによって効率的なシステム開発ができるようになりますが、「効率的」というのは高性能システムを比較的少ない労力で開発できるという意味だけでなく、生成AIシステムを動かす時のAI半導体の使用を節約できるということでもあります。従って、生成AIの効率的な開発が増えると、生成AIに使われるAI半導体の個数が減少する可能性もあると思われます。
2)生成AIの技術革新では、性能向上とともに低コスト化が流れに
これらの動きが示すものは、生成AIシステムの「低コスト化」です。
2022年11月30日の「ChatGPT」の公開以降、生成AIの開発にも生成AIを動かすインフラ投資にも巨額資金が投入されました。オープンAIやアンソロピックなどの生成AI開発会社は調達した巨額資金を使ってひたすら生成AIの性能向上を目指し、AI半導体各社は高性能で高額のAI半導体を開発し、クラウドサービス各社はそれら高額AI半導体を大量に購入して高額な巨大インフラを作り上げて顧客(主に生成AI開発会社)に高い価格で貸し出してきました。
AI半導体が高性能化するにつれて価格も上昇してきましたが、この流れの中で巨大化したのが、エヌビディアであり、クラウドサービス大手、特にアマゾン・ドット・コム、マイクロソフトの2社だったと思われます。
この流れに「低コスト化」が加わったと思われます。新しい流れは、これまでよりも低コストの生成AIシステムを効率的に開発し、それを動かすために安い特注型AI半導体を使い、これらのインフラをクラウドサービスがこれまでよりも安い価格で貸し出す流れです。この流れの中にあるのが、AI半導体ではブロードコム、メディアテックであり、クラウドサービスではアルファベットであると思われます。
生成AI向け設備投資が巨大化し、クラウドサービス各社の営業キャッシュフローに占める設備投資の比率が高くなっているため、設備投資の伸びを抑えることはクラウドサービス各社にとって重要な課題になると思われます。というよりも、生成AI関連企業の株主、投資家がそれを望んでいると言えます。これは、そうすることによって自社株買い等の株主還元の余地が出てくるからです(これについては、2026年3月23日付け楽天証券投資WEEKLY「セクターレポート:エヌビディアの株価は何故上がらないのか(GTC2026とAI半導体市場の現状、「Rubin」と半導体製造装置)」に書きました)。
2026年3月23日:セクターレポート:エヌビディアの株価は何故上がらないのか(GTC2026とAI半導体市場の現状、「Rubin」と半導体製造装置)
この低コスト化の動きが定着すると、AI半導体の低価格化、価格競争とともに、クラウドサービスの低価格化、価格競争が始まる可能性があります。
表1 米国大手ITの設備投資額(暦年)
出所:各社資料より楽天証券作成
注:マイクロソフトは各年1-3月期~10-12月期の合計、2026年1-12月期は楽天証券予想。その他は会社予想のレンジ平均値。
3)2026年1-3月期決算では、生成AI関連の低コスト化が各企業にどのような影響を与えるか注目したい。
2026年4月中旬から2026年1-3月期決算発表が始まります。まず、マイクロソフト、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、アルファベットが、今後の設備投資をどう考えているのか、注目されます。特に、マイクロソフトとメタはアルファベット、アマゾンのような高度な半導体技術を持っていないため、特注型AI半導体の導入が遅れていることが今後問題になる可能性があります。
また、アマゾンは高度な半導体技術を持ってはいますが、設備投資の規模そのものが大きく、クラウドサービスの全社業績に対する比率が高いため、今後の設備投資の伸びがどうなるか注目されます。
アルファベットは、AI半導体の低価格化、メモリ節約技術が、クラウドサービスだけでなく、検索広告の採算にどの程度ポジティブな影響を与えるのかが今後の注目点です。
2025年10-12月期のクラウドサービスの営業利益が全社営業利益に占める比率は、マイクロソフト36.2%、アマゾン49.9%、アルファベット14.8%です。生成AI関連システムの低コスト化がクラウドサービスの低価格化に結びつく場合は、アマゾン、マイクロソフトの業績にとってマイナス要因になりますが、アルファベットにとっては生成AI関連システムの低コスト化が検索広告の利益率向上に結び付くと思われるためプラス要因になると思われます。
また、メタ・プラットフォームズは生成AIを含む広告関連AIへの大型投資によって営業利益の伸びが鈍化しています。このため、生成AI関連システムの低コスト化は歓迎のはずです。ただし、自前の半導体技術が十分ではない模様なので、アルファベットのTPUを導入すると報道されています。また、巨額投資の割にAI開発で結果が出ていないとも言われています。
このように見ると、AI半導体と生成AI関連システムの低コスト化については、会社によって影響力のあり方が異なると思われます。IT大手の間で、開発力、経営の総合力に差がついてきた可能性もあります。
2.DRAMの設備投資ブーム始まる。DRAM価格はどうなる?
DRAM向け設備投資ブームが始まりました。DRAM大手、SKハイニックスは3月24日、ASMLホールディングのEUV露光装置約80億ドルを購入することを公表しました。2027年末までに納入される見込みですが、サムスン電子、マイクロン・テクノロジーも2026年、2027年と設備投資を増やすと予想されます。
足元ではDRAM不足が重要な問題になっています。大口需要家向け価格も昨年前半から大幅に上昇しています。一方で日本での店頭販売価格はピークを打ってじりじりと下がり始めています。今後DRAMの増産が進めば、大口需要家向け価格が頭打ちになる可能性もあります。
また、例えば来年になってDRAMの設備投資が大きく増えたところで、アルファベットのメモリ節約技術がアルファベットのデータセンターに導入され、DRAM節約に効果が出た場合、DRAM設備投資ブームが鈍化する可能性もあります。DRAMの需要と設備投資の先行きが読みづらくなりました。
グラフ1 DRAMの市況
グラフ2 パソコン用メモリの店頭価格
セクターレポート:低コスト化が生成AIの新しい技術革新の流れに。生成AI関連株は下げ相場入りか。インテル、レーザーテックに注目したい。
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