トランプ大領領の「ホルムズ海峡開放に対する警告」、これに対するイランの対話否定により原油はさらに上昇、先週の「売りの連鎖」から止まっています。停戦かさらに激化するのか、協議の行方に注視したいところですが、どちらに進んでも市場にとって動きづらい5日間になりそうです。
イランと米国の停戦協議報道で「売りの連鎖」から様子見に
3月23日、トランプ大統領は、「イランがホルムズ海峡を48時間以内に完全に開放しなければイランの発電所を攻撃する」との警告について、イラン側と対話が行われているとして「5日間の攻撃延期を指示した」と明らかにしました。この発言を受けて、イラン紛争終結期待から原油は急落し、株は上昇し、ドルは売られました。
100ドルを超えていたウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は一時84ドル台に急落し、ダウ工業株30種平均は一時1,100ドルを超える上昇となりました。ドル円は、159円台半ばから158円台前半の円高となりました。
しかし、イラン側が米国との対話を否定したことから、原油は上昇し、株は上げ幅を縮めました。ドル円も158円台半ばまで円安に戻りましたが、159円台には戻らず、158円台で推移しました。
原油もドル円もトランプ大統領の発言以前の水準には戻っていないことから、イラン紛争終結への期待は残っているようですが、以下のような情報が錯綜(さくそう)しています。
- イラン外務省は、米国との間に「対話はない」と表明してトランプ大統領の発言を否定しているが、一方でイスラエルメディアは、イランの最高指導者モジタバ師が米国と和平交渉を始めることを承認していると報じた。
- パキスタンが仲介国となり、対面協議が行われる方向で調整されている。
- イスラエルメディアは、トランプ政権がイランとの交戦の終結日を4月9日に設定したと報じた。
- イスラエルテレビ局が「米国はイランとの1カ月間の停戦に向けて協議」と報道。
このほかにもイランやイスラエルが交渉に否定的な姿勢を示す情報が流れたりしています。停戦に向けた交渉の不透明感が意識される中、攻撃期限が延長された5日間は動きづらいマーケットとなりそうです。
ただ、確認できたことは、もし、協議が開始され、終息に向けて進展するのであれば、23日の市場のように原油は下がり、株は上昇し、ドルは売られるということです。この動きには留意しておく必要があります。さらに、イラン情勢の先行き不透明によってタカ派姿勢に転じた日米欧の中央銀行の姿勢も変わる可能性があるという点にも留意する必要があります。
先週の中銀ウイークの動きを振り返ってみますと、日米欧中央銀行は、中東情勢の不透明感からその影響を見極めるのに時間がかかるとしながらも、原油高によるインフレリスクを警戒して総じてタカ派的となりました。
18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、パウエル議長が記者会見で中東情勢の先行き不透明を背景に利下げに慎重姿勢を示したため米金利が上昇し、ドル円は159.90円近辺まで円安となりました。
19日の日本銀行会合後の記者会見では、植田和男総裁は中東情勢緊迫化の中でも、金融正常化(利上げ)の意思は変わっていないことを示したため、会見後は159円台から円高になり、海外市場で157円台半ばまで円高となりました。
しかし、その後開催された英中央銀行(BOE)や欧州中央銀行(ECB)の声明文、記者会見がタカ派的であったことから英国債利回りが上昇し、つれて米金利も上昇してドル高となりました。
さらにFOMC後、米連邦準備制度理事会(FRB)高官から利上げを示唆する発言が相次いだことや、イラン情勢の緊迫化から米金利は上昇し、株は下落し、ドル円は再び159円台に上昇しました。安全資産の米国債や金も売られたことから、保有資産の売却の動きもみられました。
このままだと、今週も資産の「売りの連鎖」が続くことが予想されていました。しかし、23日のイランと協議との報道で、取りあえず「売りの連鎖」は止まっている状況となっています。今後、協議が進展し、戦争が終結し、ホルムズ海峡が開放されると、原油市場は落ち着き、金利や株、為替市場も落ち着くことが予想されます。
そして次回4月の日米欧中央銀行の理事会では、3月とは一転、タカ派姿勢が後退することが予想されます。金利、株式や為替は原油価格低下に反応するだけでなく、中央銀行の金融政策に反応することが予想されます。日銀は4月27~28日、FOMCは4月28~29日、ECBは4月29~30日に開催予定です。
特に利上げ姿勢を維持していた日銀に対しては、4月半ばごろまでにイラン紛争が終結すれば、賃上げ動向を踏まえて4月利上げ期待が高まるかもしれません。3月の日銀会合後の記者会見後に円高が進んだような動きが、4月会合が始まる前にもみられるかもしれません。
停戦か激化か。どちらのシナリオでも動きづらい相場に
以上のように「イラン紛争停戦協議開始→停戦→ホルムズ海峡開放」という楽観シナリオになれば、中央銀行の金融政策で為替が動く相場となりそうですが、協議も行われず、あるいは協議が難航した場合には、これまでと同じように原油価格に左右される動きとなりそうです。
イラン紛争が激化するリスクもまだあります。トランプ大統領が攻撃を5日間期限延長したのは、米国軍を中東に派遣するための時間稼ぎという見方もあります。ウォールストリートジャーナル紙は米軍の精鋭部隊3,000人を中東に派遣する見通しと報じています。
2月26日、27日のイランとの核協議を終え、次回協議も再開予定だったにもかかわらず、28日に米国・イスラエルはイランを攻撃しました。この時のように今回も陽動作戦かもしれません。米国軍はイランの石油インフラが集中しているイラン経済の生命線であるカーグ島制圧や、ホルムズ海峡の要衝であるゲシュム島制圧を狙っている可能性もあります。
もし、そのような事態になれば、再び中東情勢は混乱することが予想され、金融・株式市場の資産の売り第2幕が始まるかもしれません。
やはり、期限延長の5日間は動きづらい相場となりそうです。
「売りの連鎖」から一転、イラン紛争停戦協議の報道で市場は様子見に?
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