「三つの時間軸、上下同時、相殺」がコツ

 2010年ごろ以降、株価指数も金(ゴールド)も、異常なまでの長期的な急騰状態にあることから分かる通り、以前と異なる環境下でこれらの相場が推移していることが分かります。企業業績だけで株価指数の値動きを説明できないと考える株の専門家が述べているとおり、以前と今は違うのです。

 社会や市場を取り巻く環境が変われば、分析手法も変わります(変えなければなりません)。金(ゴールド)について、2010年ごろ以前は、図の左のとおり、一つの材料だけでおおむね、値動きを説明することができました。

図:株と金(ゴールド)の値動きにおける過去と現在

図:株と金(ゴールド)の値動きにおける過去と現在
出所:筆者作成

 1970年代後半に生まれた「有事の金(ゴールド)」、1990年代に生まれた「株と金(ゴールド)は逆相関」だけで、説明することができた時代です。

 しかし現在は、図の右のように、材料を三つの時間軸(短中期・中長期・超長期)に分類し、それぞれの材料がもたらす上下の圧力を時間軸ごとに相殺し、全体的な値動きの背景を探ります。

 そうすることで、短期的な「株価指数・金(ゴールド)急落」も、長期的な「株価指数・金(ゴールド)急騰」も、説明できます。

 図は、この考え方に、具体的な材料を当てはめた資料です。短中期には「伝統的な有事」「代替資産」「代替通貨」、中長期には「宝飾需要」「鉱山会社」「中央銀行」、超長期には「非伝統的な有事」を分類しています。今後、社会は市場環境が変われば、調整が必要になる可能性もあります。

図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2026年2月28日以降)

図:ドル建て金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2026年2月28日以降)
出所:筆者作成

 短中期の三つの中で、金(ゴールド)相場に対し、「伝統的な有事」は上昇圧力、「代替資産」は上昇圧力、「代替通貨」は下落圧力をかけています。この点が、足元の短期的視点の「株価指数・金(ゴールド)急落」の背景です。

 中長期の「中央銀行」と超長期の「非伝統的な有事」は、金(ゴールド)相場に対し、長期視点の上昇圧力をかけています。この点は、長期視点の「株価指数・金(ゴールド)急落」を支える重要な要因です。

長期視点で続く世界的な「民主主義後退」

 七つのテーマにおける、超長期の「非伝統的な有事」に関するデータの一つを確認します。これは、中長期の「中央銀行」が全体として、2010年から継続的に金(ゴールド)の保有量を増加させていることに直接的に関わる要因でもあります。

 V-Dem研究所(スウェーデン)は、選挙制度、法の支配、言論の自由など、民主主義に関わる多くのデータを基に、「自由民主主義指数(Liberal Democracy Index)」を算出・公表しています。

 3月の第三週目に公表された2025年の同指数の世界平均は、図の通り0.273と、2010年ごろから始まった低下傾向を踏襲しました。世界の自由度・民主度は、あの2010年ごろから、損なわれ続けています。

図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)

図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
出所:V-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 長期的な「株価指数・金(ゴールド)急騰」がはじまったタイミング、その背景の一つとしてポピュリズムとハイテクのマイナス面が目立ち始めたタイミング、そして金(ゴールド)相場の分析手法が更新されたタイミングが、2010年でした。

 社会において生じた後戻りできない劇的な変化が、こうした変化をもたらしたと考えられます。そして、社会において生じた後戻りできない劇的な変化が生じたことを示すデータが、この自由民主主義指数であるといえます。

 同指数は、0と1の間で決定します。0に接近すればするほどその国・地域の自由度・民主度が低いことを、1に接近すればするほどその国・地域の自由度・民主度が高いことを意味します。

 図は、0.6以上の自由で民主的な度合いが比較的高い国の数と、0.4以下の比較的低い国の数の推移を示しています。2010年ごろ以降に注目すると、先に、自由で民主的な度合いが比較的高い国の数が減少し始めたことが分かります。

図:自由で民主的な度合が高い国・地域と低い国の数(自由民主主義指数ベース)

図:自由で民主的な度合が高い国・地域と低い国の数(自由民主主義指数ベース)
出所:V-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 このことは、2010年ごろから、自由で民主的な国家において情勢不安が目立ち始め、それを受けて、自由度・民主度が低い国家が増えていったことを示しているといえます。ポピュリズムとハイテクのマイナス面の影響は、自由で民主的な国家ほど受けやすいことを示唆しています。

長期視点の投資家は「木:森=2:8」

 人類から、生活を格段に便利にしたハイテク(SNS、AI、ドローンなど)を取り上げることはできないでしょう。そして、人類から、好奇心や虚栄心などが絡むポピュリズムを取り上げることもできないでしょう。

 このことは、長期的な「株価指数・金(ゴールド)急騰」や「自由民主主義指数の低下」が続く可能性があることを示しています。こうしたことを基に考えられる、金(ゴールド)相場と向き合う時の考え方は、図のとおりです。

図:ドル建て金(ゴールド)相場の変動イメージ(2026年2月28日以降)

図:ドル建て金(ゴールド)相場の変動イメージ(2026年2月28日以降)
出所:筆者作成

 中長期視点の「中央銀行」と超長期視点の「非伝統的な有事」が「土台」となり、金(ゴールド)相場を長期視点で支え、その先端部分で、「伝統的な有事」「代替資産」「代替通貨」がもたらす上下の圧力がきっかけで、短中期的な値動きが繰り広げられる、というイメージです。

 足元の急落はいずれ終わり、長期視点では、5,000ドルを回復し、史上最高値を更新し、その後は6,000ドルやそれ以上を目指すことを、筆者はイメージしています。

 また、金(ゴールド)を短期売買で利用したい投資家の皆さんは、図の左上に、長期資産形成で用いたい投資家の皆さんは右下に、注目するとよいと思います。

図:金(ゴールド)関連の投資商品および戦略・材料

図:金(ゴールド)関連の投資商品および戦略・材料
出所:筆者作成

 本レポートを通じ、冒頭で述べた「なんで金(ゴールド)相場が下がっているの!?」という質問へ筆者なりの答えと、その背景と、それを用いた売買の考え方を述べました。

 目に見える事象(木)は、大変に気になるかもしれません。しかし、長期投資を続けられている投資家の皆さんにおいて、重要なことは「木よりも森」です。気を配る比率は、長期視点の投資家は「木:森=2:8」くらいではないかと、感じております。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

純金積立

純金積立・スポット購入

投資信託

三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)

中期:

関連ETF

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物

国内商品先物
海外商品先物

CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム