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有事でも急落する金(ゴールド)相場、今後どうなる?

2026/3/23 13:07

 2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃して以降、世界情勢は過去に類を見ない状況が続いています。情勢悪化を受けて主要国の株価指数の多くは下落しています。そして、金(ゴールド)相場も下落しています。有事ムードが強まる中で、なぜ下落しているのでしょうか。今後、金(ゴールド)相場はどうなるのでしょうか。

目次
  1. 質問・悲報「なんで下がっているんだ!」
  2. 長期視点の急騰とポピュリズム・ハイテク
  3. 「三つの時間軸、上下同時、相殺」がコツ
  4. 長期視点で続く世界的な「民主主義後退」
  5. 長期視点の投資家は「木:森=2:8」
  6. [参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

質問・悲報「なんで下がっているんだ!」

 2020年3月、筆者の元に「なんで金(ゴールド)相場が下がっているの!?」という趣旨の文面で、メールが届きました。金融業界で長く仕事をしている人物からでした。

 2019年12月ごろから一部で拡大し始めたと報じられた、新型コロナウイルスの感染がパンデミック化したことで、世界中の株価指数の多くが急落していた時でした。株価が下がっているのであれば、金(ゴールド)相場は上がっているものだ、と彼は考えたのだと思います。

 あえて誰か(筆者)にメールを送るという行動をしたことから想像するに、彼は相応の額の株式を保有していたのかもしれません。そしてその株式の額に見合ったヘッジ(保険)のための金(ゴールド)を、保有していたのかもしれません。

 世界中の株価指数の多くが急落し、利益が減ったり、損失が拡大したりしている様子を見て、きっと金(ゴールド)がそれらをカバーしてくれているだろうと、期待したのだと思います。しかし実際は、短期的に株価指数も金(ゴールド)も大きく下落しました。

 同年3月9日に1,700ドル近辺だった金(ゴールド)相場は、同16日に1,500ドルを割り込みました。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、新型コロナウイルスがパンデミック化したことを宣言した日が同11日でした。

 実は足元、当時と同じようなことが起きています。図は、S&P500種指数とNY金(ゴールド)先物の相場推移(日足終値)を示しています。図の左の小窓で示したように、S&P500種指数とNY金(ゴールド)先物の相場は、2026年3月初旬から、急落しています。「株急落・金(ゴールド)急落」は、2020年3月と同じです。

図:S&P500種指数とNY金(ゴールド)先物の相場推移(日足終値)

図:S&P500種指数とNY金(ゴールド)先物の相場推移(日足終値)
出所:BloombergおよびInvesting.comのデータを基に筆者作成

 足元の「株急落・金(ゴールド)急落」は、下の図の経路を通じて発生していると考えられます。

 3月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが見送られたことをきっかけとした懸念増→株安、ドル高→金(ゴールド)安と、2月28日の中東情勢悪化(伝統的な有事勃発)をきっかけとした懸念増→株安、ドル高→金(ゴールド)安という流れが同時進行しています。

 「有事のドル買い」という言葉で報じられている事象については、ここで述べている中東情勢悪化(伝統的な有事勃発)がきっかけで発生しているドル高を説明するものです。

図:株と金(ゴールド)の値動きにおける過去と現在

図:株と金(ゴールド)の値動きにおける過去と現在
出所:筆者作成

 短期的な急騰・急落は、耳目を集め、世の中に大きな懸念や大きな期待を植え付けます。一方で、長期的な急騰・急落は、短期ほど耳目を集めません。しかし、こうしたタイミングこそ、短期的な急騰・急落が、長期的な急騰の先端部分で起きていることを、思い出す必要があります。

長期視点の急騰とポピュリズム・ハイテク

 株価指数と金(ゴールド)相場には、過去と現在があります。この境目は「2010年ごろ」です。株と金(ゴールド)が、異常なまでの長期上昇を演じ始めたタイミングです。

 このことは、このタイミングを機に、これらの市場を取り巻く環境が大きく変化したこと、さらにいえばこれらの市場を動かす社会において、後戻りできない劇的な変化が生じたことを意味します。後戻りできたのであれば、株価指数も金(ゴールド)相場も、長期視点の急落が発生していたでしょう。

 以前のレポート『S&P500、「上がっている理由がわからないこと」が怖い』で述べたとおり、ポピュリズムとハイテクのマイナス面が、後戻りできない劇的な変化をもたらした可能性があります(これらには大きなプラス面もありますが、ここでは長期的な株価指数と金(ゴールド)相場の急騰の背景を説明するため、あえてマイナス面に注目します)。

▼以前のレポート

S&P500、「上がっている理由がわからないこと」が怖い

 図の経路を伝って、交流サイト(SNS)、人工知能(AI)、ドローンといったハイテク技術のマイナス面は、ポピュリズムのマイナス面と共鳴し、世界的な民主主義後退(後にデータを紹介します)、世界分断深化、資源武器利用横行、長期インフレ継続、通貨不確実性増、株高への不安拡大、などの「非伝統的な有事」を膨張させました。

 この「非伝統的な有事」は、後に述べる現在の金(ゴールド)相場を分析するための手法である「七つのテーマ」の一つで、金(ゴールド)相場を長期視点で支える「土台」の一翼を担う、大変に重要な存在です。

図:ポピュリズムとハイテク(2010年ごろ拡大開始)のマイナス面による相乗効果

図:ポピュリズムとハイテク(2010年ごろ拡大開始)のマイナス面による相乗効果
出所:筆者作成

 株価指数の長期視点の急騰については、図に示した「情報の受け手・発信者の関係の変化」が一因となり、発生していると考えられます。図は、この影響を示しています。

図:SNS・AIのマイナス面が株価指数の動向に与える影響

図:SNS・AIのマイナス面が株価指数の動向に与える影響
出所:筆者作成

 金(ゴールド)と同様、株価指数の分析においても、2010年ごろ以降に目立ち始めた社会の劇的な変化の前には、伝統的な手法がなじまない場面が散見されています。実際に、企業業績だけでは、この長期視点の急騰を説明することはできないと述べる専門家もいます。

 ポピュリズムとハイテクのマイナス面という、2010年ごろから目立ち始めた事象を基に考えれば、ほとんどの専門家が重視すると企業業績だけで説明しきれない部分を補うことができると考えられます。

 ポピュリズムとハイテクのマイナス面は、2010年ごろから、情報の受け手と発信者の関係を大きく変えました。ポピュリズムとハイテクのマイナス面は、世の中に流通する情報において、過程や本質を軽視するもの、発信者の人気取りを目的としたものが広がるきっかけになりました。

 このことは、ポピュリズムをあおり、実態よりも思惑(プラスの思惑は期待、マイナスの思惑は懸念)が優先されやすい環境を作りました。こうした流れが、思惑が重視されやすい株価指数の急騰の一因になったと、考えられます。

 2010年ごろ以降に目立ち始めた、ポピュリズムとハイテクのマイナス面が構築した環境が変わらない限り、株価指数も金(ゴールド)相場も、長期視点の急騰が止まらない可能性もあります。

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