原油急騰で日経平均が急落、原油高は来期企業業績にどれだけのマイナス影響があるでしょうか? 1バレル=90ドル台までの楽観シナリオと、1バレル=120ドルまで上昇する悲観シナリオで考えます。
不透明感が強い間、保有株ポートフォリオから景気敏感株の組み入れを減らし、ディフェンシブ株の組み入れを増やすことを考えて良いと思います。
好調だった企業業績に原油急騰の逆風
中東危機・原油急騰を受けて、日経平均株価が急落しました。
<日経平均株価日足:2025年12月1日~2026年3月16日>
先行き景気・企業業績が悪化する可能性が懸念されています。はたして、原油急騰を受けて、来期(2027年3月期)企業業績はどれくらい悪化するでしょうか? 今日は、企業業績予想について、レビューします。
最初に、中東危機が起こる直前の企業業績見通しを解説します。
<東証プライム3月期決算主要841社連結純利益(前期比)>
もうすぐ終了する今期(2026年3月期)は、小幅増益となる見込みです。来期(2027年3月期)は、15%以上の増益となる見込みです。非製造業(不動産、建設、情報通信・サービスなど)の好調が続く中、トランプ関税のマイナス影響が一巡によって製造業の業績持ち直しが期待されています。
図の通り、中東危機以前は日米とも景況は良好でした。
<日銀短観・大企業DI:2020年3月~2025年12月>
日本では、非製造業が空前の好況です。製造業もプラス圏を維持しています。製造業は、トランプ関税のダメージを受けていますが、円安、米景気堅調、半導体好調が景況を支えています。インフレにより、値上げが通るようになってきたことが、製造業の景況に寄与しています。
<米国ISM景況指数:2021年1月~2026年2月>
ところが、中東危機の開始により急きょ経済環境が暗転しました。原油価格の急騰により、世界的にインフレが高騰する可能性が出ました。エネルギー危機が長期化すれば、世界景気悪化につながるリスクもあります。
楽観シナリオと悲観シナリオ
中東情勢はめまぐるしく変転し、それに伴い、原油先物の乱高下が続いています。
<WTI原油先物(期近)推移:2022年1月~2026年3月13日>
中東情勢が今後、どう変転するか、原油価格が最終的にどの水準に収束するか、現時点で予測不能です。企業業績を予測するに当たり、二つのシナリオを想定しました。
【楽観シナリオ】原油価格の上昇は1バレル=90ドル台までにとどまる
湾岸産油国まで巻き込んだ交渉によって、ホルムズ海峡を通じた原油輸出が一定量は可能になるシナリオ。
【悲観シナリオ】ホルムズ海峡封鎖が長期化し、原油価格が1バレル=120ドルまで上昇
世界的にインフレが高騰し、世界景気が悪化する。インフレと景気悪化が同時に起こる、スタグフレーションに近い状態となるシナリオ。
楽観シナリオ(1バレル=90ドル台までの上昇)では、原油高の企業業績への影響は限定的と予想します。1バレル=90ドル台ならば、2年くらい前の水準であり、それだけで世界景気悪化につながるとは考えられません。
企業業績への影響を考える際、原油価格の上昇で実体経済にどれだけ影響が及ぶかが重要です。つまり、原油価格上昇の影響によって、設備投資や消費がどれだけ減少するかがカギです。
私は、1バレル=90ドル台までの上昇ならば、設備投資や消費に与えるマイナス影響はさほど大きくないと考えます。その場合、原油高の企業業績へのマイナス影響は、限定的となります。マイナス効果とプラス効果が打ち消し合うからです。
楽観シナリオならば、来期15%増益の見通し変わらず
原油高は、資源を輸入に依存する日本経済に、かなりのマイナス影響を及ぼします。航空業界や紙パルプ・セメント業界などで、コストアップ要因となります。ただし、短期的な影響に限定してみると、業績にプラスになる業界もあり、マイナス効果をかなり相殺します。
<原油高が企業業績にプラスとなる業種>※楽天証券経済研究所が分析
【1】鉱業・総合商社など(海外に資源権益を保有)
【2】石油精製・石油化学など(在庫評価益が企業業績を短期的に押し上げ)
【3】非鉄・鉄鋼など(銅、ニッケル、鉄鉱石など資源全般が上昇する場合、在庫評価益が発生)
原油の上昇が1バレル=90ドル台までにとどまり、設備投資や消費への影響があまりない楽観シナリオを取るならば、原油高の影響はマイナスとプラスが相殺するので、影響は限定的です。その場合、来期(2027年3月期)に東証プライムの純利益が15%以上増加する見通しを変える必要はないと思います。
一方、エネルギー危機が長期化して原油価格が1バレル=120ドルまで上昇するシナリオでは、設備投資や消費が減少するため、自動車・機械などの業種が大きなダメージを受けます。最悪、企業破綻が増えると、金融機関で不良債権が増える問題も生じます。こうなると、来期の企業業績見通しは大幅に下方修正が必要となり、来期減益となる可能性があります。
1バレル=90ドル台は、実体経済の悪化につながるか否か、ボーダーラインです。今後の中東危機・原油価格の行方を慎重にウオッチする必要があります。
ディフェンシブ株へのシフトも要検討
日本株は割安で、長期的に大きく上昇する余地があると考えています。ただし、短期的なショックはまだ終わっていません。中東危機・原油価格の先行き不透明感が強い間は、日本株の買い増しはゆっくり慎重に行うべきであると考えます。
不透明感が強い間、景気敏感株の組み入れを引き下げ、ディフェンシブ株(景気の影響が相対的に小さい業種)の組み入れを増やすリバランス(ポートフォリオの入れ替え)を行っても良いと思います。保有している日本株が、景気敏感株に偏っている場合は特に、要検討です。
<業種別の景気敏感度:景気敏感株~ディフェンシブ株>
例えば、自動車・電機・機械などの組み入れを少しだけ減らして、医薬品・食料品・電鉄や国内の不動産投資信託(J-REIT)などの組み入れを少し増やすことが考えられます。
景気敏感株の中では、選別的にエネルギー価格上昇の恩恵を受ける鉱業・石油精製への投資を続けることが考えられます。
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