米国=イラン戦争の先行きに不透明感がある。ハイテク株ではAI半導体メーカーの間で価格競争が始まる懸念がある。このような状況の中では生成AI関連以外に目を向けたい。エンタメ3銘柄、ソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーをディフェンシブ株として注目したい。
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:ソニーグループ(6758、東証プライム)、ネットフリックス(NFLX、NASDAQ)、スポティファイ・テクノロジー(SPOT、NYSE)
1.ディフェンシブ株として、エンタテインメントセクター(ゲーム、映画、音楽)に注目したい。
1)ディフェンシブ株とは?
今回はディフェンシブ株として、ソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーのエンタテインメント3銘柄について見ていきます。「ディフェンシブ株」とは相場用語の一つで、景気動向に関わらず業績が安定している企業の株式です。通常は、生活必需品(食品・日用品)、医薬品、公共インフラ(電力・ガス・鉄道・通信)など、不況下でも需要が減りにくい業種で、相場下落時でも下落しにくい「守り」に強い株式を指します。ゲーム、音楽、映画などのエンタテインメント銘柄にも似た傾向があります。
2)中東マネーの動きが変調すれば何が起きるか。
現在の米国、日本の株式市場における半導体、ITを中心とするハイテクセクターの問題点は2つです。
まず、米国=イラン戦争の終結が不透明なこと。米国が優勢なように見えますが、空爆だけでなく、地上軍を派遣するとなると、山岳地帯が多く天然の要塞と言われるイランとの戦争は困難が大きいものがあると思われます。
また、イランがすでに始めている湾岸諸国への攻撃がエスカレートして湾岸諸国の海水淡水化プラントを破壊することになると、中東全域の経済基盤が破壊されることになります。この場合、中東マネーが世界中に投資している株式の売却が起こる可能性があります。あるいは株式市場がそれを連想して株価が下がることになると思われます。おそらく今起きている現象です。
巨額のポートフォリオは時価総額の大きな投資対象に投資していると思われるため、中東マネーが大きな金額の株式を売却する場合は、売却の対象は生成AI関連が含まれると思われます。
3)2027年の生成AI向け設備投資に懸念がある。
次に、生成AI向け設備投資に不透明感がでています。これは最近の楽天証券投資WEEKLYでも取り上げたことですが、2027年の生成AI向け設備投資の伸びが鈍化するのではないか、あるいは今の水準を維持することも難しいのではないかという懸念が株式市場にあります。足元のAI半導体の需要と出荷の水準が極めて高いため、エヌビディアやブロードコムの株価は大きく売り込まれてはいませんが、上昇もしていません。
2026年3月9日:セクターレポート:半導体製造装置(足元の生成AI向け設備投資は好調だが、注意すべきニュースも出てきた)
4)AI半導体メーカーの間で価格競争が始まる可能性がある。
また、AI半導体メーカー同士の競争も今後激しくなりそうです。エヌビディアに対して約半分の価格のブロードコムの特注型AI半導体がエヌビディアのシェアを侵食し始めています。2027年、2028年のAI半導体市場では、エヌビディアの伸びよりもブロードコムの伸びが大きくなる可能性があります。
ところがブロードコムにも競争相手が現れています。ブロードコムの特注型AI半導体の最大口顧客はアルファベットと思われますが、スマートフォン向けチップセットの大手であるメディアテックがアルファベットのTPUの次世代版を開発している模様です。ブロードコム製よりも価格が安い模様です。一部の報道によれば次世代TPUは2026年7-9月期に量産開始とのことですが、実際にメディアテックのTPU生産が実現すれば、これまでTPUの生産を独占してきたと思われるブロードコムにとっては、今後の業績と株価にとって打撃となる可能性があります。
アルファベットが特注型AI半導体の生産においてブロードコム製だけでなく、メディアテック製も採用した場合、ブロードコムの他の顧客(ブロードコムの顧客は、アルファベット、アンソロピック、メタ・プラットフォームズ、オープンAI、推定でバイトダンス、マイクロソフトの6社)も追随する可能性があります。特注型AI半導体の新規参入はメディアテックだけでなく、マーベル・テクノロジーも行っています(マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムが顧客と言われています)。
要するに、生成AI向け設備投資の方向性がこれまでのような性能向上だけでなく、AI半導体の価格引き下げと生成AI向け設備投資の合理化・効率化が柱の一つになってきた可能性があるのです。
これらのことを考えると、生成AI関連銘柄に対して今以上の株価を期待して投資する場合は慎重な姿勢が求められていると思われます。ちなみに、過去1年間のエヌビディアとブロードコムのチャートを比較すると、よく似たチャートになっています(グラフ1、2)。エヌビディアは汎用AI半導体、ブロードコムは特注型AI半導体と異なる会社ですが、株式市場は両社に対して、生成AI向け設備投資に対する懸念と価格競争の懸念という同じ懸念を持っている可能性があります。
このような現状を考えた上で、株式市場の中にあって、これまでの主力テーマである「生成AI」から外れたディフェンシブ性のある銘柄群に注目したいと思います。
グラフ1 エヌビディアのチャート
グラフ2 ブロードコムのチャート
2.安定成長が続く、ゲーム、音楽、映画セクター。
3つのグラフは、家庭用ゲーム(ゲームの中のコンソール市場)、音楽、映画の世界市場の動きを見たものです。
グラフ3は、ソニーグループ・ゲーム&ネットワークサービス事業と任天堂全社の売上高を合計したものです。2社合わせると順調に成長していることがわかります。実際には会社によって成長程度が異なっています。ソニーグループはメモリ価格上昇の影響で次世代機の発売が遅れそうです。そのため、売上高は当面停滞すると思われますが、優良ソフトの発売が相次いでいるため、今期・来期とも増益が予想されます。
任天堂は、2025年6月発売の「Nintendo Switch 2」が大人気なので今期は大幅増収増益が予想されます。来期もメモリ不足が課題となりそうですが、業績好調が予想されます。家庭用ゲーム市場は、ハードウェアの売れ行きに左右される部分はありますが、優良ソフトの充実によって安定成長が実現する市場です。
グラフ4は、音楽市場の推移を表したものです。ストリーミング主導で安定成長しています。また、音楽CD(フィジカル)が底を打ち一定の市場を維持しているほか、パフォーマンスライツ(ライブ、店舗BGM、テレビ、ラジオでの楽曲使用に伴う著作権料)が堅調に推移しています。
グラフ5は、フィルム&ビデオ(映画・ドラマなど)の世界市場です。過去の数字はありませんが、2020年に新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ後、一時回復に向かいました。しかし、2023年5月から11月まで、AIの利用やストリーミングにおける二次使用料を巡って、全米脚本家組合と全米映画俳優組合がストライキに入りました。この影響はストライキが終わっても残り、この影響が概ねなくなったのは2026年に入ってからです。従って、2026年からはこれまで遅れていた映画、ドラマが続々と公開されると思われます。
次に今回取り上げるソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーの業績動向を見ます。
グラフ3 ソニーグループ・ゲーム事業売上高と任天堂の全社売上高
グラフ4 世界レコード産業収入
グラフ5 世界のフィルム&ビデオ市場
ディフェンシブ株としてのエンタテインメント3銘柄(ソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーの安定成長を評価したい)
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