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【警鐘】イラン情勢最大のリスク「カーグ島攻撃」を徹底解説

2026/3/11 18:20

 米国とイスラエルがカーグ島を攻撃するかどうかが、今後を左右する――。

    イラン情勢悪化による「オイルショック再来」への懸念は、トランプ大統領の当座の方針転換によって落ち着きを見せました。

 しかし、イランなどでの海外駐在経験が豊富なエネルギーアナリストの岩瀬昇氏は、「まだ巨大なリスクが残っている」と警鐘を鳴らします。

目次
  1. イランの体制転換が困難な理由
  2. 米国とイスラエルの「温度差」が招くリスク
  3. ホルムズ海峡封鎖の打開策は?
  4. 最大の懸念は「カーグ島への攻撃」
  5. 日本への影響は「3カ月後に本格化」
  6. 今後を左右する「二つのポイント」

イランの体制転換が困難な理由

 まず、今回の情勢を理解するために、イランがどのような国か説明します。

 私はイラン革命直後の1979年、三井物産社員としてイラン国営石油会社(NIOC)との間で締結した大型原油長期契約の更改交渉のため現地に延べ2カ月ほど滞在しました。

 そのさなかの11月4日、愛国的学生たちが米国大使館を占拠する事件が起こるわけですが、その直前に、革命で追われロンドンに亡命したNIOCの元高官から、イラン情勢やイラン革命について話を聞く機会がありました。

 その元高官の話で印象的だったのが、「イラン人というのは、頭の上に『重し』が乗っていないとまとまれない民族だが、これからどうなってしまうのだろうか」という言葉です。

 イランは国土が広くクルド人やバルーチ人など多くの民族を抱え、近隣諸国ともさまざまな問題を抱えています。自己主張の強い国民性もあり、強い指導者がいないと国がバラバラになるリスクがあるというのです。

 革命前はシャー(国王)という「重し」が存在していましたが、革命でシャーが亡命してしまい、「重し」がなくなってしまいました。「重し」がない状態で、イランがまとまっていけるのか、彼は非常に心配していました。

 振り返ると、イランは革命以降、ホメイニ師が打ち出した統治理論、イスラム法学者による統治(ヴェラーヤテ・ファギーフ)によって、「最高指導者」が「重し」の役割を果たしてきているといえるでしょう。

「体制転覆」というのは、ベネズエラのように指導者を交代させるだけではなく、この統治システムそのものをひっくり返さない限り、本当の意味での転換とはいえません。トランプ大統領は簡単に考えているようですが、イランでの「体制転覆」は容易なものではないでしょう。

 イランは王制国家のサウジアラビアなどと違い、1906年の立憲革命以降、制限付きとはいえ国民に参政権がある仕組みになっています。最高指導者に全ての最終決定権がある仕組みですが、国会議員や大統領は国民の選挙で選ばれるのです。

 われわれの知る民主主義と違うのは、最高指導者の意向によって立候補者が制限されるという点です。もし、望ましい候補者がいない場合には、国民は「投票に行かない」ことで不満を示すなど、現行システムの中でも一定の意思表示をする仕組みになっています。

 投票率が低いことは、国民が政府の統治に不満を持っていることの表れなのです。このように最高指導者と、国民の意思を完全には無視できないのです。

 2025年末以降のイラン政府への抗議デモでは、当局の弾圧で多くの人々が亡くなりました。米国などによる経済制裁によって生活が困窮し、イラン国民の不満は高まっていますが、イラン・イスラム革命から47年が経過したいま、政府を打倒できるような強い反対勢力の軸は現時点では存在していないのです。

 イランの指導者層は非常に現実的です。ホメイニ師の死去によってアリ・ハメネイ師が最高指導者に選出されるにあたり、憲法を改正するなど柔軟に対応してきた歴史があります。今回も国民の不満をある程度吸収しながら現実的に対応することで、イスラム革命によりつくり上げた「法学者の統治」体制を守り抜こうとするでしょう。

米国とイスラエルの「温度差」が招くリスク

 今回の情勢が、2025年6月の米国とイスラエルによるイラン核施設の攻撃といった過去のイラン攻撃との決定的な違いは、イスラエルのネタニヤフ首相がイランの体制転覆を目的として、トランプ大統領を巻き込んで攻撃を実行しているという点です。

 一方で、トランプ大統領は3月2日、イラン攻撃の目的として次の4項目を挙げています。

  • 核兵器を保有させない
  • ミサイル能力の破壊
  • 海軍力のせん滅
  • テロ支援の停止

 ここには体制転覆は含まれていません。つまり、米国とイスラエルの間に「戦争目的のズレ」があるのです。

 この「ズレ」が引き金となり、状況が悪化するリスクがあります。トランプ大統領としては4項目を達成すれば勝利宣言をして攻撃を止めても良いのですが、ネタニヤフ首相はあくまでイランの体制転覆に固執する可能性があります。それなくしてイスラエルはイランの脅威から完全に逃れることはできない、という論理からです。

 イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が2月28日に暗殺された後、ハメネイ師の次男、モジタバ・ハメネイ師が後継に選ばれました。これは、イランが「これまでの非対称戦争(正規軍同士の衝突を避け、ゲリラ戦や代理勢力を用いる戦術)の路線を継続する」という強い意思表示です。

 イランは、正面から米国やイスラエルと戦っても勝てないことを百も承知しています。だからこそ、製造コストが安いドローンやミサイルを使い、「正面衝突は避けるが、決して負けない」という戦い方を徹底しており、モジタバ氏の選出はこの戦略を継続することを示しています。

 長期戦を覚悟しているイランに対して体制転換を目指すとしたら、陸上侵攻が不可欠です。空からの攻撃だけでは、9,300万人の人口を抱えるイランの統治体制をひっくり返すことはできません。

 しかし、トランプ大統領のこれまでの行動・発言を見る限り、彼は米国人の人命を失うことを非常に嫌がっています。

 トランプ支持者の中でも、いわゆる「MAGA(Make America Great Again、米国を再び偉大に)派」は、海外のことよりも国内の問題にリソースを割くべきというアメリカファーストの考え方です。

 陸上侵攻で米国人に多数の死者を出せば11月の中間選挙には大きなマイナス要因になるので、トランプ氏としては避けたいでしょう。

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