金相場は上昇し、一時6週間ぶりの高値を付けた。

米雇用統計を受けたドル安の進行や、年内の利上げペースが加速するとの見方が弱まったことが材料視された。5月の米雇用統計では、失業率が4.3%に低下したものの、非農業部門就業者数が前月比13万8,000人増と、市場予想の18万5,000人増を下回ったことが嫌気され、米長期金利が低下し、ドルが急落したことが金相場の押し上げにつながった。米国株高でも金にも買いが入っており、投資家の金への関心は低下していない。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、5月26日の847.45トンから6月2日には851トンに増加した。最近はわずかな減少傾向が続いていたが、2日の雇用統計を受けて金への投資が回復したことが確認された。

COMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは、5月30日時点で16万7,090枚の買い越しとなり、前週から7,323枚増加した。買いポジションが8,790枚の増加となった一方、売りポジションが1,467枚の増加となった。

金相場の底打ちから上昇への転換の動きを背景に、投機筋は小幅ではあるが買いポジションを積み上げている。金相場は引き続き堅調な動きを想定している。

ロシア政府による米大統領選介入疑惑について、コミー前連邦捜査局(FBI)長官に対する公聴会が8日に行われる。その内容次第では、トランプ大統領に対する弾劾の動きが強まる可能性があり、これが金相場を支えるだろう。

5月9日の解任後、コミー氏が公の席で発言するのは初めてとなるだけに、捜査妨害との指摘が出ているトランプ大統領の発言について、どのような証言が出てくるかに注目が集まる。これまでの報道によると、トランプ大統領は2月にコミー氏と会談し、フリン前大統領補佐官への捜査を打ち切るよう要求したが、コミー氏はその時の模様をメモに書き残し、FBI幹部に渡したとされている。証言次第では司法妨害との批判が強まり、民主党内で大統領弾劾論が勢いを増す可能性もある。

一方、5月の米雇用統計をきっかけに、米長期金利が低下したことがドルの下落を誘っており、これも金相場を押し上げる要因になる。FRBは6月13・14日のFOMCで0.25%の利上げを行う見通しだが、それ以降の年内の利上げが実施されるかは不透明な状況にある。また、FRBは利上げよりも保有する資産圧縮を優先させる方針とみられており、その場合には利上げはいったん棚上げされる可能性が高いことから、これもドルの上値を抑えるものと思われる。

米長期金利の低下を背景としたドル安基調を背景に、米国株が過去最高値を更新する一方で、金相場の上昇が同時に起きる状況にあることから、投資家は株式を購入する一方で、安全資産である米国債や金も同時に購入していることが確認できる。

非農業部門雇用者数は、イエレンFRB議長が十分な数値と認識する10万人±2万5,000人の範囲内にあることから、決して弱い材料ではないものの、市場はそのように捉えていない。これらの状況から、金相場は引き続き堅調に推移する可能性が高く、まずは節目の1,300ドルを目指す展開が想定される。一方、パラジウムが高値を更新している。プラチナとの価格差が縮小している点にも注目しておきたい。

非鉄相場は小動き。

中国需要の先行き懸念や原油安は上値を抑えた。ただし、崩れているわけではなく、底値を固める動きに入りつつあると考えられる。ニッケルはインドネシア産・フィリピン産の供給拡大や中国のステンレス需要の先行きが懸念されて、昨年6月上旬以来の安値を付ける場面があったが、安値からは切り返して引けている。亜鉛は下げており、最も弱い動きにある。ただし、アルミや銅は下げ渋り、鉛は上昇している。それほど悲観するような状況ではないだろう。

8日には中国の貿易統計や、9日には消費者物価指数や卸売物価が発表される。さらに8日は英総選挙も予定されており、与党・保守党の過半数確保という大方の想定に反する結果になれば、9日の非鉄相場にも影響する可能性はある。ただし、現状の水準から見れば、下値は限定的であろう。

原油は下落。

トランプ大統領が地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明したことから、米国のシェールオイル生産量の伸びが加速し、供給が増える可能性が不安視されたもよう。米国内の石油掘削リグ稼働数は前週比11基増の733基となり、15年4月以来の高水準となった。前年同週は325基であり、すでに2倍超となっている。増加は20週連続と過去最長となっている。5月の増加幅は原油価格の軟化を受けて、昨年10月以来の低水準となっている。

今後原油価格が50ドルを下回る水準が続けば、採算の合わないリグは稼働を休止し、リグ稼働数はいずれピークアウトするだろう。一方、原油価格が現在のような安値で推移していれば、OPEC加盟国と非加盟国は減産幅の拡大を真剣に議論し始める可能性があるだろう。いまは主要産油国の減産とシェールオイルの増産では、市場はシェールが優勢とみている。しかし、米ガソリン需要期入りが完全に無視されている。

市場構造に変化があるとはいえ、このような市場の反応に違和感があると言わざるを得ない。ガソリン需要の拡大と在庫の減少、さらに原油在庫の減少はいずれ原油相場の押し上げにつながると考えられる。