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原油急騰、中東情勢悪化で100ドルに達するか?

2026/3/2 13:49

 米国とイスラエルが2月28日、中東のイランを攻撃しました。週明けのニューヨーク原油先物市場は一時、急反発しました。国際法違反、ドロ沼化の再来、中間選挙(11月)に向けた票稼ぎなど、さまざまな思惑が交錯する中、トランプ米大統領はSNSなどで自らの正当性を主張しています。今後、世界情勢はどう変化し、原油相場はどう動くでしょうか。

目次
  1. 原油相場「急反発」で取引が始まる
  2. イラン・アフガンのテロ組織を挟み撃ち
  3. 石油輸送の大動脈「ホルムズ海峡」封鎖か
  4. 「資源の呪い」からイランを解放したい
  5. 原油相場の動向は「差し引き」で考える
  6. [参考]エネルギー関連の投資商品(例)

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
原油急騰、中東情勢悪化で100ドルに達するか?

原油相場「急反発」で取引が始まる

 この土日に広く報じられたとおり、中東情勢が悪化したことにより、原油の供給減少懸念が高まっています。こうした流れを受け、週明けの原油相場は大幅に反発して始まりました。

図:NY原油先物(期近)日次終値(日本時間3月2日午前8時まで) 単位:ドル/バレル
 

出所:Investing.comのデータより筆者作成

 上のグラフの通り、米国・イスラエルのイラン攻撃後、初めての取引となった日本時間3月2日(月)午前8時、ニューヨーク原油先物相場はおよそ75ドルをつけました。これは、攻撃直前のおよそ67ドルに比べて12%程度高い水準です。

 また、イスラム武装組織「ハマス」によるイスラエルへの大規模な奇襲攻撃が勃発した2023年10月の高値は90ドル弱でした。また、米国がイランの核関連施設を攻撃した2025年6月の高値は80ドル弱でした。

 今後、諸情勢の影響を受けながら、原油価格は推移していくとみられます。原油価格の推移に関する考察は、本レポートの後半で述べます。

イラン・アフガンのテロ組織を挟み撃ち

 以下の図は、中東周辺で交戦状態にある国・地域を示しています。米国は「壮絶な怒り作戦」と称してイスラエルとともに、イランを攻撃しました。

 これを受けて、イランが報復攻撃を開始しました。報復攻撃は米国軍の関連施設やイスラエル国内だけでなく、米国と関わりが深いサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などにも及んでいると報じられています。

図:中東周辺で交戦状態にある国・地域(2026年3月時点)
 

出所:Map Chartより筆者作成 イラストはPIXTA

 また、交戦状態は米国・イスラエルとイラン、アラビア海(ペルシャ湾)周辺国だけでなく、2月24日で4年目を迎えたウクライナとロシアの戦争が継続していたり、アフガニスタンの暫定政権であるイスラム武装組織「タリバン」と隣国パキスタンの間で2月27日に戦争状態に入ったりしています。

 パキスタンは今回の軍事行動を「正義の怒り作戦」と銘打っていると、報じられています。以下の図は、こうした国々の直近の活動や、こうした国々で起きた出来事を示しています。

図:中東周辺で交戦状態にある国・地域の活動・出来事(2026年2月28日前後)
 

出所:各種報道より筆者作成 イラストはPIXTA

 米国とイスラエルは、イラン主要部を攻撃し、国連安全保障理事会で正当性を主張しました。また、イランの最高指導者「ハメネイ師」を殺害しました(壮絶な怒り作戦)。ハメネイ師という約37年にわたりイランを導いてきた最高指導者失い、イランの体制が不安定化する懸念が生じています。

 一方でイランは、中東各国の米軍施設やイスラエルに対して報復攻撃をしたり、米国と関わりが深いサウジアラビアやUAEなどを攻撃したりしています。また、石油供給の要衝である、アラビア海(ペルシャ湾)とインド洋の入り口であるオマーン湾を結ぶ「ホルムズ海峡」を事実上、封鎖したと報じられています。

 こうした動きを受け、ウクライナはイランへの攻撃を行った米国を支持しました。イランがウクライナに侵略しているロシアに、ドローンやその技術を提供しているためです。一方ロシアは、米国とイスラエルが国際法に違反していると非難し、ウクライナ戦争の和平交渉から離脱することを示唆しました。

 アフガニスタンの暫定政権であるイスラム武装組織「タリバン」は、米国・イスラエルがイランを攻撃する数日前に、米国からの攻撃時はイランを支援すると表明していました。

 一方、パキスタンは27日、「正義の怒り作戦」と称してタリバンの軍事施設に攻撃を行いました。パキスタンは、「アフガニスタンが世界中のテロリストを集め、テロリストを輸出している」「パキスタンの人権を奪っている」「我々の忍耐は尽き果てた」などと、攻撃の正当性を主張しています。

 米国のトランプ大統領が述べた作戦名にも「怒り」の文字が含まれています。昨年、同大統領は、中東などで活動する複数のテロ組織を支援し、核兵器の開発を再開しようとしているイランに対して「忍耐は切れた」と述べていました。核開発をめぐる交渉に進展が見られなかったためです。

 このように考えると、今回の情勢悪化は、単に米国・イスラエルとイランの間の問題ではなく、「世界全体におけるテロやテロを支援する組織との戦い」という側面が浮き上がってきます。イランとアフガニスタンの国境の山岳地帯にあるとみられるテロ組織の根城を、東からパキスタンが、西から米国とイスラエルがうかがう構図ともいえます。

 もしこの考え方が有効であれば、今回の作戦が終了するタイミングの決定には、米国とイスラエルだけではなく、パキスタンも加わることになります。この数日間、作戦の終了タイミングを聞かれたトランプ大統領がそれを明示しないのは、こうした背景があるからなのかもしれません。

 パキスタンが軍事行動を開始した金曜日、米国・イスラエルが軍事行動を開始した土曜日は、ミラノ・コルティナオリンピックという平和の祭典が終わった週の後半でした。ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日は、北京オリンピック(冬季)が終わった週の木曜日だったことと似ています。

 また、イランが支援するイスラム武装組織ハマスがイスラエルに対して大規模な奇襲攻撃をした2023年10月7日と、米国がベネズエラに軍事介入をした2026年1月3日も土曜日でした。

 市場を含む社会をできるだけかく乱させずに行動する、という暗黙の了解が、できつつあるのかもしれません。

石油輸送の大動脈「ホルムズ海峡」封鎖か

 以下の図は、世界のさまざまな海上交通の要衝を通過する原油・石油製品の量を示しています。米国エネルギー情報局(EIA)によれば、世界の原油・石油製品の海上輸送のおよそ27%、世界の原油・石油製品の供給のおよそ20%が、ホルムズ海峡を通過したとされています(2023年)。イランが今回、事実上封鎖したとされる同海峡は、石油輸送の大動脈です。

図:各海上交通の要衝を通過する原油・石油製品の量(1日あたり)(2023年)
 

出所:EIA、IMFのデータをもとに筆者作成

 アラビア海(ペルシャ湾)から「ホルムズ海峡」を通じて、オマーン湾、引いてはインド洋に出た原油や石油製品は、図のとおり、ほとんどがアジアに向かいます。同海峡が封鎖された場合、まずはアジアの原油・石油製品の消費国に影響が及びます。

 日本などの先進国では備蓄制度を確立しているため、同海峡が封鎖されても直ちに供給途絶に至ることはありません。

 ただし、「ホルムズ海峡封鎖」という、大変にインパクトがあるキーワードが世界中に広がったことにより、短期視点で原油相場に強い上昇圧力がかかった状態が続く可能性があります。この点が、3月2日の取引開始時の価格がおよそ75ドル(攻撃前比12%高)に達した一因です。

図:主要中東産油国の原油輸出先シェア(2024年)
 

出所:Energy Instituteのデータより筆者作成

 留意すべきことは「封鎖」が、イラン側が危険を知らせ、それに応じて各種船舶が航行を控える封鎖(事実上の封鎖)なのか、機雷(洋上に設置され、接触すると爆発する兵器)などの兵器が大量に設置された完全な封鎖なのかを見極めることです。前者の場合、イラン側が危険を意図的に知らせない船舶は、航行できる可能性があるためです。

 また仮に、後者の封鎖が1年を超え、アジアの主要国の原油・石油備蓄の減少が目立った場合、アジアの消費国の経済が鈍化し、世界経済が停滞する可能性があります。この場合、原油需要が大きく減少し、原油相場が下落する可能性もあります。供給減少による上昇圧力を、需要減少による下落圧力が勝るケースです。

「資源の呪い」からイランを解放したい

 なぜ今回、トランプ米大統領らは攻撃に踏み切ったのでしょうか。背景を同米大統領のSNSへの投稿(2月28日)をもとに考えます。

図:トランプ米大統領のSNSへの投稿(2月28日)
 

出所:各種報道より筆者作成

 トランプ米大統領は、イランが1979年のイラン革命後、47年間にわたり、「米国に死を」などと述べ、米国や米国の同盟国に敵対行為を行ってきたと主張しています。

 444日に及んだ在イラン米国大使館人質事件、米兵241人が死亡したレバノンのベイルート兵舎爆破事件、米国の駆逐艦コールへの攻撃関与疑い、イラク戦争時・戦争後の多数の米兵殺害、中東周辺での継続的な米軍への攻撃と海上交通の妨害、代理勢力の攻撃により米国民に犠牲者が出たこと(2023年10月7日のハマスによる奇襲攻撃)、などの具体例を挙げています。

 また、イランは、(ハメネイ師が設立に関わった)イラン革命防衛隊や、ガザ地区(パレスチナ自治区)のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派といったテロ組織に、武器、資金、技術を支援していたと述べています。

 そして、こうしたイランが、ウラン濃縮による核兵器の再開発とそれを弾頭とする長距離ミサイルの開発を継続したり、2025年12月に激化した反政府デモに武力を持って対応し、多数の犠牲者を出したりしたことにも言及しています。

 トランプ米大統領は、こうした歴史的な背景があった上で、差し迫った脅威の排除、米国民の防衛、イランの核兵器保有の阻止などを目的に行動したといえます。「テロへの怒り」を共有できるイスラエルとパキスタンも、こうした考えに同調していると思われます。

 イラン国内では、ハメネイ師の死を悼む市民がいる一方で、イランの首都テヘランで歓声や祝福の声も上がっているとの報道もあります。数千人が犠牲になったとされる1月の反政府デモを弾圧したイラン当局に反発心を抱いていたある人(テヘラン在住)は、「ハメネイ師には国民を死に追いやった責任がある」と述べたともいわれています。

 グラフの通り、イランはかつて原油を軸に貿易を展開し、大きな利益を手にしていました。しかし、リーマンショック(2008年)で石油需要が減少する懸念が生じたり、逆オイルショック(2015年ごろ)で原油輸出によって得られる外貨が急減したりしました。

図:ベネズエラとイランの輸出額 単位:10億ドル
 

出所:IMFのデータをもとに筆者作成

 また、2010年ごろからは、ESG(環境、社会、企業統治)拡大によって石油否定(石油の需要減少懸念)が拡大しました。核開発の手を緩めないイランに対し、米国や国連などが断続的な制裁を科したことも、イランへの逆風となりました。

 こうした環境の中、イラン国内では徐々に、経済情勢が悪化したり、物価高が目立ったり、それらがきっかけで生じた体制批判が大きくなりました。2025年12月から2026年1月にかけて急拡大した反政府デモはこうした流れの結果であるといえます。

 イランもまた、ベネズエラと同様、「資源の呪い」にかかっていたといえそうです。資源の呪いとは、天然資源を持つ国が、経済発展や民主化の面で、資源を持たない国よりも不利な状況に陥る現象のことです。

 こうした事象が発生する原因に、自国の資源がばく大な利益をもたらした成功体験が挙げられます。成功体験によって、資源からの収入に依存して、他の産業が縮小したり、汚職が発生しやすくなったりします。(テロ組織の温床拡大)

 また、当該資源を求める国から政治的な介入を受けやすくなったり、生産国との連携を強いられたりすることもあります。(非民主国家からの介入増加)

 一度、資源の呪いにかかると、自力でそこから脱却することは困難であり、他国に助けを求めても資源目当ての支援が横行する場合もあります。資源を持っていることが大変な「呪い」のきっかけになってしまうのです。

 トランプ米大統領が2月28日のSNSの最後に、イラン国民に向けて、一連の攻撃が終わったら、イラン政府を掌握するよう呼びかけました。資源の呪いから解放されるきっかけは米国がつくるので、その後はイラン国民で国を運営するよう、述べているように思えます。

原油相場の動向は「差し引き」で考える

 ニューヨーク原油先物相場は、3月2日の取引開始時、75ドルに達する急騰劇を演じました。しかしその後、同日の昼にかけて反落しました。同日午後12時時点の価格は70ドル前後でした。

 この反落の要因に、米国の株価指数先物が急落したことが、挙げられます。今後、機雷などの兵器を用いたホルムズ海峡の封鎖や、海峡封鎖がアジア経済、引いては世界経済を停滞させること、世界全体のテロとの戦いがドロ沼化すること、などへの懸念が、米国の株価指数先物を急落させたと考えられます。そして、米国の株価指数が急落したことで、将来の需要減少懸念が大きくなり、原油相場もつられて下落したと考えられます。

 少し長い時間軸で原油相場を見渡します。以下はニューヨーク原油先物価格(期近・日次平均・2026年2月27日まで)の推移です。2023年の初旬から、同価格はおおむね75ドルという長期視点の高値水準を中心とし、高値95ドル程度、安値55ドル程度のレンジ内で推移してきました。

図:ニューヨーク原油先物(期近)日次平均と変動要因の例 単位:ドル/バレル
 

出所:Investing.comのデータより筆者作成

 しばしば、「原油相場は下がった」という声を耳にします。確かにウクライナ戦争が勃発したタイミングに比べれば、下がっています。しかし、75ドルという水準は2002年の約3倍、2016年の約1.7倍、2020年の約2倍です(いずれも年平均ベース)。

 毎月のように多くの品目の価格が上昇し続けていることの主因は、原油相場がこうした長期視点の高値水準で推移し続けていることだといえるでしょう。

 高止まりは、一方的な上昇でもなく、一方的な下落でもありません。強い上昇圧力と強い下落圧力に挟まれている場合に起きます。グラフで示した例のとおり、近年の原油相場には複数の上昇圧力と複数の下落圧力がかかっています。

 こうした環境では、一方的な上昇も一方的な下落も、起きにくいといえます。つまりそれは、足元の中東情勢が急激に悪化して、ホルムズ海峡が機雷などの兵器を用いた封鎖に追い込まれ、そうした状況が長期化した場合でも、一定の下落圧力が上値を抑制する可能性があることを示しています。

 今後、長期視点の原油相場の方向性を考える際、中東情勢の悪化を受け、兵器を用いたホルムズ海峡封鎖が起きるかどうか、世界的なテロとの戦いがどのくらいの時間で収束するか、これらが世界経済(アジアに限定せず)にどれだけのダメージを与えるか、などに注目する必要があります。

 中東情勢の悪化と並んで重要な材料は、OPECプラスの「協調減産(自主減産ではない)」の動向です。2027年も継続するのか、するのであれば規模はどの程度か、あるいは2026年12月で終了するのか、などに注目をする必要があります。

図:OPECプラスの原油生産量と協調減産の動向(2020年4月~) 単位:千バレル/日量
 

出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料をもとに筆者作成

 OPECプラスが2017年から続けてきた協調減産の体制(DoC)が終われば、OPECプラスは原油相場を支えることを諦めたと市場が見なし、2015年ごろに発生した逆オイルショックの時のように、原油相場は急落する可能性があります。

 こうした事態になれば、兵器を用いたホルムズ海峡封鎖が行われていたとしても、55ドルを大きく割れる可能性もあるでしょう。

 原油相場を動かす材料は一つではありません。たとえ今後、中東情勢が悪化の一途をたどったとしても、上昇と下落、両方の材料をまんべんなく見渡す必要があります。原油相場の動向は「差し引き」で考えることが、大変に重要です。

[参考]エネルギー関連の投資商品(例)

国内ETF・ETN(NISA成長投資枠活用可)

NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア

外国株式(NISA成長投資枠活用可)

エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム

海外ETF(NISA成長投資枠活用可)

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド

投資信託(NISA成長投資枠活用可)

シェール関連株オープン

海外先物

WTI原油(ミニあり)

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WTI原油・ブレント原油・天然ガス

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