本来の積立投資(ドルコスト平均法)の原則とメリット

 まず、積立投資の基本であるドルコスト平均法について、改めて確認しておきましょう。これは、毎月(あるいは毎週、毎日など)決まった日に決まった金額で株式や投資信託などを買い付ける手法です。

 この方法の最大のメリットは、相場が高い時には少ない口数を買い、相場が低い時には多くの口数を買うことができる点にあります。これにより、購入タイミングを分散し、高値つかみのリスクを軽減する効果が期待できます。

 そして何より重要なのは、「相場を予測する必要がない」という点です。プロの投資家でさえ相場の先行きを毎回正確に予測することは困難です。個人の投資家が衝動的な感情に流されて「今が買い時だ」「もうダメだ」と売買を繰り返すことは、往々にしてパフォーマンスを悪化させる原因となります。

 そうした観点でドルコスト平均法は、人間の感情を排し、機械的に投資を継続することで、長期的な資産形成を目指すための合理的な手法といえるでしょう。

「プラスアルファ」戦略の例:ルール化したスポット購入の可能性

 しかし、もし相場観に頼らず、機械的なルールに基づいてスポット購入を行うとしたらどうでしょうか?  例えば、「投資対象指数が直近高値から10%または20%下落したときに、設定した金額をスポット購入する」といった明確なルールを設けるのです。

 これは「感情的な押し目買い」とは明確に区別されるアプローチです。ドルコスト平均法の本質である「感情を排除し、規律に基づいて投資を継続する」という精神は保ちつつも、「市場価格の変動に依存した一定のルール」を組み込むという点で、純粋なドルコスト平均法とは異なる側面を持ちます。本稿では過去データを用いてその効果を検証してみたいと思います。

過去データによる検証結果

 今回は、2000年12月から2025年12月までの25年間のS&P500種指数(配当込み、円換算ベース)の月次データを用いて、以下の五つのケースで検証を行いました。各ケースにおいて、初期投資額を100万円、毎月3万円の積立投資を基本としています。

  投資方針 スポット
購入条件
スポット
購入額
ケース1 積立のみ なし なし
ケース2 積立&スポット購入 S&P500が直近高値から10%以上下落 10万円
ケース3 積立&スポット購入 S&P500が直近高値から10%以上下落 20万円
ケース4 積立&スポット購入 S&P500が直近高値から20%以上下落 10万円
ケース5 積立&スポット購入 S&P500が直近高値から20%以上下落 20万円

 ただし、短期間での過度な追加投資を避けるため、ケース2~5では、直近2カ月以内に増額していた場合は、下落率の基準を満たしていても、その月の追加購入はスキップする設定としました。

各ケースの資産総額推移
  ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 ケース5
(A)最終評価額 85,090,014 139,421,490 193,752,966 128,143,657 171,197,300
(B)投資元本 10,000,000 14,500,000 19,000,000 13,100,000 16,200,000
(C)投資倍率
(=(A)÷(B))
8.51 9.62 10.20 9.78 10.57
(D)年率リターン(IRR) 13.30% 13.81% 14.05% 13.85% 14.14%
(E)最大下落率 -52.26% -49.99% -49.23% -49.29% -47.61%
(F)増額回数 0 45 45 31 31
(G)合計追加購入額 0 4,500,000 9,000,000 3,100,000 6,200,000
(H)月平均投資額 33,333 48,333 63,333 43,667 54,000
※上記は過去のデータや一定の前提条件に基づき当社が行ったシミュレーションであり、将来の投資成果を示唆または保証するものではありません。
※税金や手数料などは一切考慮していません。
※「(D)年率リターン(IRR)」は、投資期間中の資金の入出金(追加投資など)を考慮して算出されたものであり、S&P500種指数の年率リターンとは異なります。
出所:Bloombergのデータを基に作成