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いまさら聞けない「SaaSの死」「アンソロピック・ショック」とは?

2026/2/17 19:00

 アンソロピックのAIエージェント「Claude Cowork」の登場以来、セールスフォース、アドビ、SansanといったSaaS企業の株価が低迷しています。この「アンソロピック・ショック」と呼ばれる現象はなぜ起きているのか、ソフトウエア業界の環境変化を分かりやすく解説します。

目次
  1. 予言されていた「SaaSの死」
  2. Claude Coworkとは?
  3. 主導権がAI側に
  4. SaaS企業の今後

予言されていた「SaaSの死」

 アンソロピック・ショック以前から、AIエージェントの台頭によるSaaS(サース、インターネット経由で利用する業務用ソフトウエア)への逆風、いわゆる「SaaSの死」は警戒されていました。

主要SaaS企業の株価

企業名 年初来の騰落率
セールスフォース(CRM) ▲25%
ハブスポット(HUBS) ▲36.2%
アドビ(ADBE) ▲21%
ワークデイ(WDAY) ▲30%
マネーフォワード(3994) ▲29.5%
Sansan(4443)  ▲35%
注:騰落率は2026年2月16日時点。▲はマイナス

 そのきっかけは、マイクロソフト(MSFT)のサティア・ナデラCEOの「AIエージェントの時代には、業務アプリ(SaaS)という概念は全て崩壊する」という2024年12月のポッドキャストでの発言です。

 AIエージェントとは、細かい指示を出さずとも、自律的に目標達成のための手段を見つけ、実行するソフトウエアです。

 現状では、人事、経理、営業といったさまざまな分野で人間がSaaSを操作して業務を進めていますが、将来的にはAIエージェントが人間の代わりに幅広いタスクを進めていくと予想されます。

 Claude Coworkの登場が、「AIエージェントが仕事を進める時代にSaaSは本当に必要なのか?」という疑念に火をつけ、それがアンソロピック・ショックを引き起こしたと言えるでしょう。

Claude Coworkとは?

 アンソロピックの「Claude Code」のようなエンジニア向けのAIエージェントは以前からありました。しかし、Claude Coworkは自然言語での入力に対応し、プログラミング知識がないユーザーでも直感的に利用できるAIエージェントです。

 Claude CoworkはユーザーのPC内にある画像やドキュメントなどのファイルに直接アクセス可能なアプリケーションです。

 ユーザーが目標を提示するだけで、AIエージェントが自律的に達成手段を検討し、必要に応じて追加の質問をユーザーに投げかけながら業務遂行を支援します。

 さらに、財務、営業、法務に関連するプラグイン(機能を拡張するソフトウエア)が用意されており、特に、契約書のレビューや秘密保持契約の確認といった法務関連、仕訳準備や財務諸表の作成といった財務関連のプラグインが高く評価されています。

 また、コミュニケーションツールの「Slack」やCRMの「Salesforce」など外部のさまざまなサービスと連携することで、幅広い作業に対応可能です。

 Claude Coworkのような高度なAIエージェントの登場は、ユーザーにとってはメリットがある一方で、SaaS企業にとってはネガティブな側面もあります。

 AIエージェントの機能としてSaaSが提供するタスクが実行可能になることもありますし、AIツールの進化によって開発コストが低下しているのでシステムの内製化を検討する企業も増えるでしょう。

主導権がAI側に

 AIエージェントによるSaaSへのネガティブな影響は他にもあります。これまで人間がSaaSを操作してきましたが、今後はAIエージェントがSaaSを操作するようになると考えられます。

 SaaSではアカウント数に応じたサブスクリプションモデル(定額課金)が一般的ですが、AIエージェントがSaaSを活用して大量のタスクをこなすようになれば、現在の課金モデルが維持されにくくなる可能性があります。

 企業がAIエージェントへの投資を増やし、多額のIT予算を投じるようになれば、これまでSaaSに割り当てられていたIT予算が削減されるリスクも考えられます。

 SaaS企業には、新規顧客を獲得しても追加コストが少ない「限界費用の低さ」と、継続的な収益が見込めるビジネスモデルという強みがあり、たとえ利益がそれほど出ていなくても成長率が高ければ株価も高くなる傾向がありました。

 しかし、AIエージェントの登場によって、こうした成長シナリオに対する疑問の声が大きくなり、市場はこれまでのような高い企業価値評価を受け入れにくくなっています。

SaaS企業の今後

 逆風の中でも、生き残るのはどのようなSaaS企業なのでしょうか。

 顧客情報や契約情報といったユーザー企業の重要なデータを蓄積しているSaaS、あるいはセキュリティに関わる分野のSaaSは、データ移行のコスト、セキュリティリスク、業務プロセスへの組み込みの深さなどから、安易な乗り換えが困難であり、優位性を保てるでしょう。

 マーケティングのHubSpotやワークスペースアプリのNotionのように自社のサービスにAI機能を組み込んだSaaSも付加価値を提供できると思われます。AIエージェントとのデータ連携や共有がスムーズにできるかといった点も、SaaSの優位性を左右する重要な要素となるでしょう。

 一方、これらの条件を満たせないSaaSはAIエージェントの時代には厳しい状況に直面するかも知れません。

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