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中国は衆院選の「自民圧勝」をどのように捉え、どう動くのか?

2026/2/12 7:30

 衆議院選挙は、自民党の歴史的大勝で幕を閉じました。中国は衆院選の結果をどうみており、次なる一手をどう出してくるのでしょうか。三つの視点から分析していきます。

目次
  1. 衆院選で自民党が歴史的圧勝
  2. 中国は衆院選をどうみていたか。三つの視点
  3. 「第2次高市政権」発足で日中関係はどうなるか

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
中国は衆院選の「自民圧勝」をどのように捉え、どう動くのか?

衆院選で自民党が歴史的圧勝

 2月8日、第51回衆議院議員選挙の投開票が実施されました。自民党が単独で過半数(233議席)に届くかどうかが焦点でしたが、ふたを開けてみれば、単独で3分の2を超える316議席を獲得しました。

 2009年に政権交代が起きた際の民主党の308議席、および1986年の中曽根康弘政権時に自民党が獲得した304議席を上回り、一つの政党の獲得議席数としては戦後最多でした。

 議席を二つ伸ばし、36議席を獲得した日本維新の会と合わせ、衆議院における与党議席数は352となり、前回から120議席増の大幅ジャンプアップです。一方、立憲民主党と公明党が合流して新たに結成した「中道改革連合」は118議席を減らして49議席でした。野田佳彦共同代表が「万死に値する」と語るほどの惨敗です。

「第三勢力」として注目されてきた玉木雄一郎代表率いる国民民主党は議席を1議席伸ばして28議席としました。今後の立ち振る舞いが注目されます。参政党は13議席伸ばして15議席を獲得しました。前回の参院選からの勢いはいまだ健在といえるでしょう。

 特筆すべきは、これまで衆議院で議席数をゼロから11議席に伸ばしたチームみらいです。唯一、消費税減税に反対を主張するなど、旧態依然とした日本の政治に新たな風を吹きこむプレイヤーになるかもしれず、私もその動向を注目しています。

中国は衆院選をどうみていたか。三つの視点

 自民党の歴史的大勝で幕を閉じた今回の衆院選を、中国はどうみているのでしょうか。この期間の中国当局による政策や声明、および私自身が中国の関係者らと意見交換をしてきた限りでは、中国の視点としての特徴は三つに整理できると思います。

(1)密に注視してきた

 本連載でも複数回扱ってきたように、昨年10月の第1次高市政権発足後、高市早苗首相の台湾関連の言動に中国が猛反発し、日中関係の緊張度は上昇してきました。

 中国政府は自国民の日本への渡航を自粛させる勧告を出したり、両国間のフライトを大幅に減便させたり、日本からの水産物輸入を再び禁止するなど、ヒト、モノ、カネの流れを制限する一連の措置を打ち出しました。高市政権への報復措置という側面が強いでしょう。

(2)強く警戒してきた

 日本とのビジネス、企業を含めた民間交流を、自国政府の政策・措置によって制限する行為はある意味「もろ刃のつるぎ」であり、ただでさえ低迷する中国経済、「大国」を目指す国としてのレピュテーション・信用などにも悪影響が及ぶ可能性があります。そこまでして、日本の官民に対して圧力をかけてきている背景には、高市政権に対する強い警戒心があるのは論をまちません。

 今回の衆院選で、自民党がどのような形であれ勝利し、「第2次高市政権」が発足するという予想を中国も立てていたと思いますが、どれだけ議席を獲得するのかによって、選挙後の政権運営に実質的な影響が生じるため、そのあたりを強く警戒していたと思われます。

(3)丹念に準備してきた

 密に注視し、強く警戒しつつ、衆院選後の日本の政局、政権を見据えて、中国として丹念に準備を進めてきたというのが私の見方です。本連載の1月8日付レポートでも取り上げましたが、例えば、発動から1カ月強が経過した軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出規制強化もその一つです。

2026年1月8日:中国が新年早々に電撃発表、レアアース対日禁輸はあるか?

「産業のビタミン」と呼ばれ、日本経済、産業、企業活動の多くに不可欠なレアアース関連品目が「日本に入ってこないのではないか」と政府や企業が懸念しています。

 高市政権が従来以上に権力基盤を固めようとしている中、中国がその現実をどう捉え、どのような対日政策、状況次第では制裁措置を打ち出してくるかはまだ分かりません。しかし、今後のアクションのためのシナリオ設定や事前準備はしていることでしょう。

「第2次高市政権」発足で日中関係はどうなるか

 ここからは、「じゃあこれから中国がどう出てくるのか」を三つの視点から予測していきます。

(1)強硬姿勢が続く

 前述したように、第1次高市政権発足後、中国は石破前政権の時とは比べ物にならないほど、日本に政治、経済、外交、軍事、世論といった複合的な角度からプレッシャーをかけてきました。

 今回、自民党が歴史的大勝を収め、高市政権の権力基盤が盤石になる中、従来の強硬姿勢は最低限維持されるでしょうし、さらに強くなる可能性も十分にあります。中国は引き続き、官民一体となって、高市政権下における日本の政府や企業に対して強い姿勢で臨んでくるという前提でいるべきだと思います。

(2)慎重に打ち出す

 今回の衆院選で政権基盤を強固にした高市政権が、中国に対してどのような姿勢で、どのような政策を打ち出していくかが一つのカギを握るでしょう。基盤が強固になったからといって、従来以上に強硬的に出るとは限りません。政権基盤が整ったからこそ、前向きな対話を提案できるというシナリオも考えられないわけではありません。

 中国の共産党政権は、弱い政権・リーダーを相手にせず、強い政権・リーダーとこそ懸案を解決し、物事を推進するための対話を行おうという傾向があります。従って、中国は、まずは高市首相が組閣後、どのような対中姿勢・政策を打ち出してくるのかを慎重に見極めることからスタートするものと思われます。

(3)本気で抑え込む

 ここであえて「本気」という言葉を使っているのは、中国は自らの国家戦略の観点から、日本の国力、特に「軍事力」の発展を抑え込もうとしているからです。

 米国との戦略的競争、アジア太平洋地域での影響力と勢力圏の拡大、台湾問題の解決など、これらの戦略的課題に向き合うために、中国からすれば、日本との経済、技術、軍事といった分野での競争には必ず勝たなくてはならないと考えるでしょう。軍民両用(デュアルユース)品目で対日輸出規制を強化するのもそのためです。

 高市政権は、防衛費の増額、「安保3文書」の改定、「危機管理投資」の充実などを掲げており、憲法改正に対しても従来よりも前のめりに検討し、行動していくことが予想されます。

 さる状況下、習近平政権は2期目に入る高市政権をこれまで以上に「重要な競争相手」として認め、本気で抑え込みに来る可能性が高いです。日本の政府、企業も、その前提で、中国と本気で向き合っていく必要があると思います。

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