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ケビン・ウォーシュ新FRB議長とドラッコノミクス(Druckonomics)

2026/2/5 15:22

 ケビン・ウォーシュは「QTを維持しながら規律ある利下げを行う」と主張している。ウォーシュはマネー印刷とウォール街の救済を止めるつもりなのか? FRBの間違えを正すというウォーシュの登場で相場は読みにくくなった。

目次
  1. 新FRB議長の発表をきっかけに買われすぎのゴールドやシルバーが急落
  2. 「QTを維持しながら規律ある利下げを行う」というケビン・ウォーシュ
  3. 2月4日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

新FRB議長の発表をきっかけに買われすぎのゴールドやシルバーが急落

 1月30日、ドナルド・トランプ米大統領は次の米連邦準備制度理事会(FRB)議長に元FRB理事のケビン・ウォーシュを指名すると発表した。ウォーシュについては「金融市場を熟知したタカ派寄りの政策論者」として知られる人物である。「FRB議長の最終候補者の中で最もタカ派的だ」との指摘もある。

 この発表を受けて外国為替市場で主要通貨に対してドルが買われ、ドルの代替投資先として資金が振り向けられてきたゴールドやシルバーが大幅に下落した。

ゴールドCFD(1時間足)

ゴールドCFD(1時間足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ゴールドCFD(日足)

ゴールドCFD(日足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

シルバーCFD(1時間足)

シルバーCFD(1時間足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

シルバーCFD(日足)

シルバーCFD(日足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 ゴールドは伝統的に二つの役割を持っている。一つはインフレヘッジ、そしてもう一つは、政治や経済が不安定な時の安全な資産の避難先となる。金価格はこの1年で7割以上値上がりしており、今年に入ってからだけでも13%以上上昇している。

 1月31日の日本経済新聞の記事「FRB議長人事で金が急落 ハイテクの女王もバブル警鐘」は、「ハイテクの女王」の異名を持つ投資家のキャシー・ウッドが、米国の通貨供給量(M2)に対する金の時価総額の割合が過去最高になっていると分析し、ゴールドは下落する可能性が高いと30日のXに投稿していたことを取り上げた。

 M2に対するゴールドの時価総額の割合は、インフレ率と金利が大幅に上昇していた1980年を上回るが、現在の米国は過去の経済混乱期とはまったく異なると指摘する一方で、このような急騰は上昇サイクルの終盤に起こる傾向があると主張した。

 ウッドは「バブルは今、人工知能(AI)ではなく、ゴールドにおきている」と警鐘を鳴らし、ドル高はバブル崩壊のきっかけになるとの予想を示したという。

米国のマネーサプライ(M2)とゴールド価格の比較

米国のマネーサプライ(M2)とゴールド価格の比較
出所:ビリオンスター

ゴールドの時価総額のM2に対する割合

ゴールドの時価総額のM2に対する割合
出所:Lorenzo Valente

 ケビン・ウォーシュは、「FRBのバランスシートを拡大し続けることはタダで選べる選択肢ではない」と主張している健全なドル(通貨)を目指すタカ派である。ウォーシュが掲げる「FRB改革」は簡単なものではないが、それによってインフレが抑制されれば、ヘッジ手段としてのゴールドやシルバーの需要は現在よりも緩和される可能性はあるだろう。

「QTを維持しながら規律ある利下げを行う」というケビン・ウォーシュ

 ケビン・ウォーシュは1970年生まれ。ハーバード大学、スタンフォード大学ロースクールを卒業後、モルガン・スタンレーで投資銀行業務に携わった。その後、ジョージ・W・ブッシュ政権下でホワイトハウス国家経済会議(NEC)のスタッフとして金融・資本市場政策を担当し、2006年にFRB理事に就任。

 2008年の世界金融危機では、ベン・バーナンキ議長を支える中枢メンバーとして、緊急流動性供給や金融システム安定化策に深く関与した。

 一方で、危機対応後の金融政策については一貫して慎重な立場を取ってきた。特に量的緩和(QE)や超低金利政策が長期化することに対しては、「資産価格のゆがみ」や「金融規律の低下」を招くと警鐘を鳴らしてきたことで知られる。市場では、ウォーシュはインフレ抑制と中央銀行の信認を最優先する、いわゆる「タカ派」に分類される。

 フォーブスの1月31日の記事「トランプがFRB次期議長に指名、ケビン・ウォーシュとは何者か? 共和党献金者の富豪と密接な関係」によると、ウォーシュの義理の父親ロナルド・ローダー氏は米化粧品大手エスティ・ローダーの創業家で、1960年代にトランプの同級生だった人物だ。2016年の米大統領選でトランプに大口の献金を行ったほか、最近も多額の政治献金を行っている。

 2011年にFRBを退任して以来、ウォーシュは著名投資家スタンリー・ドラッケンミラーが自身の個人資産を管理するために立ち上げた投資会社デュケーヌ・ファミリーオフィスのパートナーを務めているという。

 財務長官のスコット・ベッセントはドラッケンミラーとともにソロスファンドで活躍した。米国の経済と金融政策を担う二大トップの共通点はドラッケンミラーにあったということになる。

 1月31日の日本経済新聞の記事『「ウォーシュFRB」異例ずくめの選考 舞台回したベッセント氏』は、「大統領に次ぐ権力」を持つとされるFRBトップの選考は異例ずくめの展開をたどったが、市場が警戒した「言いなり議長」を回避した背景には、ベッセント米財務長官の周到な舞台回しがあったと報じている。

 米国の経済政策のトップ(財務長官)と中央銀行のトップ(FRB議長指名候補)の両者が同じ巨匠の門下生であることは、「ドラッコノミクス(Druckonomics)」とも呼ばれ、市場の注目を集めている。

 量的引き締め(QT)を維持しながら規律ある利下げを行うというウォーシュの方針を、市場はどう受け止めるのであろうか?

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